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書評「トーラーの名において」(7/9)

 やっていることはナチス・ドイツと同じである。それを反シオニズムのラビたちは言っている。

 ユダヤという民族がいるならば、どうして彼らに国がないんだと言う問いかけがシオニズムだ。ユダヤ教を信仰する人々の国というのでは、建国の理由にならない。国家の歴史は、仏教を信仰する、またはキリスト教を信仰する者のために建国されてはいない。ある宗教を信仰する人口の比率は多いという国はあっても信者のためのではなく、あくまでもその土地の言語、文化を持って一つの民族とみなし、その地域一帯を一つの国家と考える。
 「ユダヤ」を宗教の面から見るのではなく、民族として捉えアプローチする「民族主義」。しかしユダヤ教を信じる人々がいても、ユダヤのいう人種はいない。純粋なドイツ人種とか、全く存在しえないものへの存在証明が始まった愚かな探究。これをラビたちは「偶像崇拝」と言った。

 ラビたちは、神の教えから語り始めている。しかし、その神の教えに背いた者たちは、国家の建設に血眼になり、一人ひとりの命をなおざりにするどころか百万人以上のユダヤ人の命を代償としてイスラエル国家を建設し、現在も維持しようと、今度は多くのパレスチナ人の命を奪っている。シオニズムはユダヤ教から理路整然と批判され、断罪されなければならないと言っているのだ。

 シオニズムとナチズム。表面的な歴史の知識からくるイメージは対立関係にあるものと考えられている。
 2013年にウクライナの「ユーロマイダンの革命」が起こった時、その解説を求めてIWJのジャーナリスト岩上安身が板垣雄三(1931〜)にインタビューをした。板垣雄三氏は「ユダヤ人がパレスチナに移送されるのを手伝ったのはナチスです」と言った時、岩上安身氏は「えっ、本当なんですか?」と信じられないという反応で聞き返した。板垣先生はその歴史の説明を始めたが、私もそれを納得できるほど理解できていなかった。ただ、これは深い問題だとは思った。361ページあるこの読みにくい「トーラーの名において」の281ページまで来た時、再びナチズムがシオニストたちにパレスチナへのユダヤ人移住に協力をしたと史実が語られた時、やはりこれがパレスチナ問題の根源だと直感した。そう言う意味では、ハレーディはパレスチナ問題をよくわかっており、それを私に再び納得がいくまで語ってくれた。

 ユーロマイダン革命のときから、ウクライナを通してユダヤ人とネオナチの関係はメディアのプロパガンダを潜り抜けて報道されている。選挙で大統領となった親ロシア派のヤヌーコヴィッチ大統領の政権は倒され、ヤヌーコヴィッチは国外へ逃亡した。ユダヤ人で、ペレストロイカの波に乗って、エネルギー関連企業を成功させ政界入りしたユーリア・ティモシェンコは、この革命で釈放された。デモや抗議運動、暴動の中で、ネオナチ・民主主義政党の「スヴォボーダー」が治安維持にあたった。現在のアゾフ連隊の前身もウクライナ政府側として内乱の活動していた。イスラエルの退役兵までいたという報道もあった。

 今回のウクライナ戦争でも、ロシアを追撃するアゾフ連隊は、ゼレンスキーの政治支援をし、ウクライナ・オルガルヒ(富裕層)のユダヤ人、イーホル・コロモイスキーがアゾフ連隊の資金提供をしていると言われている。アゾフ連隊にはネオナチ、白人至上主義者が参加していた。ゼレンスキーはユダヤ人。

 イスラエル人がビジネスの話を始めると「ウクライナに行って」というフレーズが出てくるのはなぜなんだろうと思っていた。ウクライナはユダヤの富豪たちが潜んでいるところだったのだ。
 大国が、ナチズムやユダヤ人問題を「片付ける」と、片付けられた者たちは小国へと逃げる。「片付け」た国家の強権の届かないところに肩身を狭く暮らしていくうちに、お互いに生き延びるため近しくなってゆく。その構図がウクライナにある。そして、前述したように彼らは以前にも協調体制をとった歴史を持っていた。

 「昨日の敵は今日の味方。今日の味方は明日の敵」これら生きる術だと言わんばかりに。


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