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ハイパー能「長髄彦(ながすねひこ)」〜悲しき建国記念日〜 公演が間近に迫ってきた!

「長髄彦(ながすねひこ)」の台本を書き上げたのが11月26日(土)。

12月17日(土)の「菩薩のラメント・キュロスの哀愍」が無事終わって、台本の節付けの打ち合わせをしたのを、吉松章くんとしたのが12月18日(日)のモーニング・ミーティング。能の台本は、シテ(主役)とワキ(脇役)のセリフと、その物語の状況、背景、シテとワキの内面的な心情を語るところの地謡(コーラス)とで成り立っています。シテ、ワキ、地謡、このそれぞれで旋律をなしにして語るのか、または旋律をつけるのか?旋律を付けたら拍子の取り方、テンポはどのようにするか?などを物語の進行に沿って決めてゆきます。

大体のところを決めると舞台の様子がおぼろげに見えてきます。翌日の12月19日(月)に、ドラムのHIKOさんと打ち合わせ。囃子(ドラム,モデュラー、ピアノ)の入り方をどのようにするか決めました。

能は、シテ(主役)が亡霊で、夜中にこの世に現れます。そして色々と語ってある決着を得て、夜明けが来る気配と共にあの世に戻ってゆきます。しかし、長髄彦が夜明けと共に消えてゆくストーリーにHIKOさんは、「消えちゃダメだ」とダメ出しをし、長髄彦は夜明けと共に、生き返るというストーリーになりました。

ここで「長髄彦」のあらすじをご紹介します。

19歳の忍性(1217〜1303)が、往馬(いこま)の竹林寺を求め歩いている。忍性は、病に苦しむ人々の救済の活動する僧になろうと、南都の時代(奈良時代)に貧民を救済し、彼らとともに治水・架橋、そして東大寺の建設を行なった行基の墓参をして、菩薩行をしようと決心した。しかし道に迷い、往馬の社で里の女を見つけ、竹林寺への道を尋ねる。

里の女は、「なぜ知る人もない竹林寺を訪ねるのですか。ここは忘れ去られた里です。だからこそ行基さまは私たちに慈悲をかけてくださり、この里に眠って下さったのです。」と語り始めるが、その物語はさらに時を遡ってゆく(昔のことを語り出す)。

「私たちは、天皇に滅ぼされた悲しい民の末裔です。妹である私は、敵の饒速日命(にぎはやひのみこと)と政略結婚させられました。しかしその饒速日命が、裏切って私の兄、長髄彦(ながすねひこ)を殺したのです。私たちには、里の歌が残されています」と旋律に合わせて舞う。

「ここには、行基も、そしてさらに昔に亡くなった兄、長髄彦も私も眠っているのです」と。

前シテ(第一部)

ピアニストがアイ狂言(解説者)となり、国を滅ぼされたナバホ、ハワイ、パレスチナの人々の歌を紹介してゆく。 

アイ狂言(幕間)

忍性はすでに亡き人となって登場。「私の遺言通り、私は行基の竹林寺に眠ることができた。この竹林寺を訪れる人は誰もいない。行基が貧しい人々を救済したことも、私が病に苦しむ人々とともに暮らしたことも、知る者は誰もいない。」

後シテ(第二部)

そこに長髄彦が現れる。

「ここは、大和と最後に戦いった邑(むら)として、権力者から虐げられてきた。私の子孫は天皇の子孫ではない。その彼らに慈悲をかけてくれた行基、忍性、律師の慈悲に御礼します。貧しく、苦しい日々を送るのは、私が大和に負けたからだ。」

人は、権力を掴んだ者、戦いに勝った者の歴史書しか作らない。彼らは、苦しむ人を救済する者、戦いに負けた者の物語を語ろうとはしない。
なぜなんだろう。忍性と長髄彦は語り合う。

「ゆえに、人は貧しい人々にも、負けて弱者となった人々にも目を向けようとはしない。」

忍性は、人々を救う者として、長髄彦は虐げる人々とともに戦うために、一度、目覚めようとする。しかし長髄彦は、自分の言葉も歌も忘れてしまった。そこに、国を失った人々パレスチナ、ナバホ、ハワイの歌声が聞こえてくる。彼らの言葉と歌に力を得て、長髄彦と忍性は、夜明けの光に再び生命を与えられた。長髄彦は往馬にまたがり、夜明けの光に向かって駆け抜けていった。
 
そして1月1日、2日の午前中とセリフの節付けの譜面起こし、旋律を五線譜に書き起こしで缶詰。大脳が崩壊しそうになりつつ、2日の午後4時から王子駅のキーコーヒーで、ピアニストの小森さん、モデュラーの濁朗さんと音楽の打ち合わせをする。

だいたいこれで方向性が決まりました!

正月早々、長髄彦の打ち合わせに実家から 来てくれた、左から小森俊明(ピアノ)くん、濁朗(モデュラー)くんと筆者。

ハイパー能「長髄彦(ながすねひこ)」〜悲しき建国記念日〜

■2023年2月11日(土)17:30 open 18:00 start
■七針: 東京都中央区新川2丁目7−1 地下 オリエンタルビル 
 https://www.ftftftf.com/#map
■charge: ¥3,000(前売り) ¥3,500(当日) 
■原作・脚本:桜井真樹子 
■出演
・シテ(里の女・長髄彦):桜井真樹子 
・ワキ(忍性):吉松章 
・囃子方:濁朗(モデュラー)、 HIKO(ドラム)、小森俊明(ピアノ)
■ご予約・お問い合わせ:f@ftftftf.com (七針)

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