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【石狩データセンター10周年-挑戦の軌跡-】人にやさしく働きやすいデータセンターへ!3号棟建設にまつわるエピソード

さくらインターネット、広報担当の中西です。
連載第7回目は、石狩データセンターの3号棟建設についてのエピソードをご紹介します。

今回は、カスタマーリライアビリティ部の金澤 将(カナザワ マサル)さんとインキュベーション推進部の花清 真(カセイ マコト)さんのお二人に石狩3号棟建設についてのエピソードをお伺いし、執筆しております。

一番の大きな変更は、建物の向き!

左:石狩データセンター開所当初の将来計画鳥瞰パース 右:実際の石狩データセンター鳥瞰パース(奥:3号棟、手前:1・2号棟)

石狩データセンター開所当時の発表では1・2号棟以降に設計される棟はすべて1・2号棟と平行に建設される計画でした。しかし、上図を見ていただきましたらわかりますように、実際に3号棟の建設が決定した際には、1・2号棟に垂直に建設されることが発表されました。また、将来計画は下図のように発表がされました。なぜ、このような計画変更が行われたのかと言うと、北海道の石狩市に東京ドーム約1.1個分の広大な大地に建設された石狩データセンターの端から端までは非常に距離があるということが起因しています。

将来計画・鳥瞰パース(計5棟、最大6,800ラック規模)

石狩データセンター建設当初は、1・2号棟の間にある管理棟に執務スペースや会議室などの主にメンバーが過ごす事務所が配置されていました。このまま、当初の将来計画で建設を行った場合、事務所から将来的に一番奥に建築される予定の棟に作業しに行く距離を考えると障害対応のスピードにもかかわってくることが想定されます。連載第6回の「【石狩データセンター10周年-挑戦の軌跡-】データセンター見学会がもたらす価値とは」でも語られている通り、1・2号棟のみであった2011年から2013年の見学会を担当していたメンバーからは、「データセンター内を歩くだけでも距離がかなりあり、見学対応で数kg痩せた。」という声も上がっていることから当時の将来計画での建設は難しかったことがわかります。

これは人だけではなく物の面でも同様で、建設当初の様に棟が並んでしまうと、1・2号棟から最新の棟にサーバーを運ぶことを想定すると別の棟を経由して運ばなければなりません。非常に重たく精密機器であるサーバーを運ぶ距離は短い方が良いことは明らかです。

また余談ですが、「さくらのVPS」開発チームの有志がエイプリルフール企画で作成したアドベンチャーゲーム「VPSちゃんのお仕事大作戦!どきどきわくわく内緒のデータセンター」では、データセンター内でサーバーを運搬する疑似体験ができますので、ぜひ遊んでみてください。

このような移動についての課題を解決するために、1・2号棟と以降に建設される予定の棟とをつなぐハブ的な役割も担える3号棟として、1・2号棟に対して垂直に建設されました。3号棟は、1・2号棟に近い箇所が執務スペースや会議室などの主にメンバーが過ごす事務所や多目的スペースが設けられ、反対側にはサーバールームのためのスペースが設けられています。

メンバーが中心となり考えた「働き方に合わせた働く場」

また、1・2号棟と3号棟の大きな違いとして、3号棟には3階があるということが挙げられます。これは、2011年の東日本大震災などの津波による災害に備え、避難場所として利用できる高い場所を作りたいという従業員の希望があり実現しました。3号棟3階は多目的室として下図のような空間が広がり、様々な社内の勉強会や社外の見学会やLTイベントなど、数多くの行事が行われました。学生の方を招いて開催したハッカソンのイベントでは、学生の皆さまにメンバーが普段から仮眠で利用する仮眠スペースを利用してもらうということもありました。また、2018年に起きた北海道胆振東部地震でも大活躍しました。

右:石狩データセンター3階の多目的室 左:石狩データセンター3階の仮眠スペース

このような、3号棟の3階に設けられた多目的室や2階に設けられた執務スペースや会議室などの事務所といった、メンバーが日々を過ごす業務エリアは、ワーキング・グループが設立され、実際に石狩データセンターで勤務するメンバーが中心となり検討を重ねてレイアウトを決定しました。

ワーキング・グループでは、1・2号棟にあった当時の事務所は「よくある事務所」とメンバーから評されていたため、それを脱却すべくチャレンジ的な要素を盛り込みたいと、当時ではまだ珍しかったフリーアドレス制の導入を前提としつつ、机の数や配置を考えていきました。また、机一つにしても、座って仕事のできる高さの机はもちろん、昨今のブームとなっているスタンディングワークができるような高さの机の2種類を用意し、多様な働き方ができるようにしました。

また、会議室も1・2号棟の時は仕切りがあり個室となっていましたが、新しい3号棟のオフィスでは執務スペースに打ち合わせをしてもよい机を設け、そこが空いていたら誰でも使ってよいという仕様になっている会議エリアを基本的に利用し、機密事項を話すときは仕切られた個別ブースを設けました。また個別ブースは、会議だけではなく集中して作業を行うための利用も可能でメリハリのある働き方の実施ができるようになりました。石狩3号棟を機に確立されたこのスタイルはその後、大阪本社や東京支社のオフィス再構築時に採用され当社の多くのオフィスにて導入されています。

東京支社の会議等を行うためのオープンエリア

今でこそ、当社に定着したフリーアドレスやオープンな会議エリアですが、石狩データセンター3号棟での導入が検討されていたころはメンバー全員が初の試みだったため不安の声が多くあったそうです。当時、ワーキング・グループに参加していた金澤さんは「フリーアドレスに関してはメンバーに受け入れてもらうまでとても時間がかかり苦労をした。」と振り返ります。石狩データセンターで働くメンバーからの理解を得るため金澤さんは、業務用のPCを保管するロッカーやサーバールームへ入るための上履きを収納するための靴箱等の希望をメンバーからヒアリングし、できる限り希望に沿ったオフィス環境を整えるように努めました。このように創意工夫をしながら当時のワーキング・グループの皆さんがフリーアドレスやオープンな会議エリアの導入の検討および推進を実施してくださった結果、当社の新しい風土や文化が醸成されたのだとわかります。

作業がしやすいサーバールームを目指して

また3号棟は、業務エリアだけでなく、ファシリティの面でも大きく変わりました。まずは、空調です。1・2号棟は直接外気冷房方式を採用していましたが、3号棟は間接外気冷房方式へと空調のコンセプトを変更しました。間接外気冷房方式は、外機と空調機の間を循環する冷媒を外気で冷やしてサーバールームを冷却する方式です。冷媒を介した外気利用であるため外気湿度の影響を受けづらく、除湿機・加湿器・加湿のための給水などを大幅に削減することが可能となり、総合的なランニングコストに優れていると判断され導入が決定しました。

間接外気冷房の図

そしてサーバールーム内の空調には、新たに上部壁吹き出し方式が採用となりました。1・2号棟で採用されていた大型ファンによる壁吹き出し方式は、ラック上部まで冷風を運ぶ天井吹き出し方式と比べて送風ロスが少ないという利点がありましたが、直接、冷風が作業者に吹き付けてしまっていました。当時から、作業時はベンチコートを着用するなどの防寒対策を行い作業に当たっていましたが、「とても寒く、作業効率が落ちる。」という声が上がっており課題となっていました。この課題を解決するため、上部壁吹き出し方式を採用しました。上部壁吹き出し方式は下図のシミュレーション画像からもわかる通り、ファンの設置位置を天井付近にまで引き上げ、大型ファンによる緩やかな冷風をサーバールーム全体にいきわたらせサーバーを冷却する方式です。これにより、サーバールーム内で作業するメンバーに冷風が直接吹き付けることがなくなり、快適に作業ができるようになりました。

上部壁吹き出し方式の気流シミュレーション

また、電源の供給方式も1・2号棟と3号棟で変化がありました。3号棟では1・2号棟と電源の供給量はかわらないものの、サーバールームごとに配電を変えるというチャレンジを行いました。1・2号棟と比較し、3号棟で一番初めに構築したサーバールームは、電源を配電するための部材をケーブルからバスダクトへと変更しました。次に構築したサーバールームでは1回路辺りの電源容量を変更し、電力の密度を上げられるようにしました。これらの取り組みにより、1ラックごとに使える電力量が増えたので、ラック内の稼働台数が増加しコストパフォーマンスにも影響を与えましたが、「消費電力量が多い機器をこれまでよりも多く利用できるようになったので、新しいことにチャレンジできるようになった。」と花清さんは語ります。

電源のほかにも、3号棟の中で変化を続けている設備体制があります。一番は、ラックのサイズです。3号棟建設当初は横幅が600mmのラックを採用していました。このラックは、サーバールームあたりのラック収容率を向上させるため、2号棟から採用していました。当時、現場で作業をすることがあった金澤さんは「すごく作業がしづらかった。」と振り返ります。収容率は向上したのですが、横幅が狭くなった分、手が入りづらく、サーバーの配線などの作業がし辛かったのです。中には、横についているコンセントバーにと機材が干渉して、ラックから機材を取り出せなくなるというケースもありました。3号棟が建設され暫く立った折に、スペースも大幅に余裕ができたため、ワイド700mmのラックへと変更することにしました。そのため、3号棟の初めにできたサーバールームは、サイズの違うラックが今も混在している状況ですが、非常にゆったりとした空間で作業ができるようになりました。

人にやさしく働きやすいデータセンターへ

これらの様に1・2号棟と3号棟を比較すると、建物の構造そのものから始まり、業務エリアやサーバールーム等、働くメンバーが過ごしやすいように改良されたことがわかります。このように改良を行うことができたのも、1・2号棟で始めてのデータセンター運営を試行錯誤しながらも行い、多くの経験を積み上げた結果です。また、3号棟も新たなサーバールームを構築するたびに新たなチャンレンジを重ねています。上図の通り石狩3号棟には、構築が可能なスペースがまだまだあります。今後も3号棟の進化にご期待いただけますと幸いです。当社は「『やりたいこと』を『できる』に変える」という企業理念のもと、今後もサステナブルなデータセンター運営を通じて、社会のDXを支えることができるよう邁進してまいります。


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