紗倉まな

えろ屋です(note始めました)

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マガジン

  • エッセイ

    日常で起きたこと、自分に纏わること、その頭の中、をぐるぐると。基本的に長いです。

最近の記事

担当マネージャーが母になった。

 まだ事務所が出来立ての頃、胸を高まらせながらAVの面接に来た私の目に、真っ赤なワンピース姿の女性が飛び込んできた。そのとき、私はなぜかドンタコスを思い出した。「はじめまして〜」と発せられたその女性の声と抑揚の加減が、ちょっと酒焼けした倖田來未さんのようだった。私より10歳年上のお姉さんだった。  恵比寿に構えられたAVプロダクションに少しだけ気圧されていたので、私はおずおずと彼女に履歴書を渡した。   姿勢を正して、その人を観察する。 「すごい、綺麗な字だね!」とその

    • おとといフライデーの完結

       誰かと何かをやり切ったことなんてなかった。目標をたてて達成に向かっていくのも、1人でやる方がずっと気楽だし性に合っている。ずっとそう思ってた。でも私はこじちゃんと10年ものあいだ一緒に、とある目標に向かって二人三脚でやってきた。私にとって奇跡に近いことだったと思う。やり切った、と思う。  最初に結成したのは2013年だからちょうど10年前になる。私がデビューしてしばらくした頃に、小島みなみちゃんとユニットを組まないかと事務所から提案された。その時はこじちゃん(小島みなみち

      • 母と遺伝子

         母親ってどうしてこんなにもおしゃべりなのだろうか。  おしゃべりじゃない母親もいると思うけど、うちの母親は口から生まれた化け物だといってもいい。今、まさにそんな母親と電話越しで揉めている最中である。  私の母は数分の間に猛烈な量の単語を吐き出して話す。話は面白いわけでもなく、大筋から外れてぴょんぴょん小話が飛び回る。そこから最果てのない旅路に出かけてしまうので、いつのまにか置いてけぼりを食らっている。私の知らない固有名詞や人物が、母なりの略語に変えられたりもする。だから

        • キャンプと掃除

           料理は嫌いではないけど、継続できるものではないと思っている。対して掃除は好きではないけど私には向いている、というかしないと落ち着かない。それで毎日、クイックルワイパーとルンバと掃除機をフル活用している。  目に認めないダニも木っ端微塵にしてやろうと意気込んでいて、ダニ取りシートは定期便に頼るほど欠かせない。浴室で髪を洗っている時にカビを見つければ、黒板に爪を立てたように神経がピリつく。シンクが汚れるのも大変恐ろしい。排水溝も、その奥の目には見えないホースの内部まで想像する。

        担当マネージャーが母になった。

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        • エッセイ
          7本

        記事

          大人の友達

           私には友達が3人いる。  そのうちの1人がMちゃんだ。  Mちゃんとは15年来の付き合いになる。人の仄暗さを吹き飛ばすような光量が彼女にはあって、だからそうでない私と話が噛み合わないこともある。でも、Mちゃんと話していると笑いが止まらない。何に笑っているのかもよくわからない。よく見ると、Mちゃんは赤ちゃんに似てる。見るとうっかり微笑んでしまう、そんな感じの人なのだ。  たとえば、Mちゃんと出かけたとする。  待ち合わせ場所、横断歩道を渡った先にMちゃんの姿が見える。ベタだ

          大人の友達

          大人の本音

           ストレートにものを言う人は、せっかちなのだと思う。  というのも、ここ最近の自分の言動を振り返って改めて思うことである。何より「本音=ストレートにものを言うこと」だと、私は思い違いをしていた。その件について。  仕事先の打ち合わせ等で、よく「本音で語ってくださいね!」とスタッフさんやプロデューサーさんから言われることがある。非常にありがたいお話だ。表面的な意見ではなく、芯を食ったコメントの方が人々の記憶には残りやすいし、代弁者として口を使うのだから、本音で語るというのは議

          大人の本音

          犬のいる家

          「犬、飼いはじめたんですね〜」と言われると、なんとなく「そうなんです、家に迎えたんです〜」と言い直す癖が私にはある。  意味合いとしては飼っているに違いないのだが、飼われている気持ちになることも多い。比較的、私は犬に面倒をみてもらっているほうだ。たまに私が泣いてると、耳を下げて「どうしたのどうしたの?」とぺろぺろ舐めながら心配してくれるし、原稿を書く気にならずにサボっていると「どうせ時間を持て余しているなら有意義に過ごしちゃおうぜ!」とおもちゃを持ってきて、楽しい時間の提供

          犬のいる家

          花のない家

           実家に花が飾ってあるのを見たことがなかった。  というか、そもそも私には実家がない。  正確に言うと、実家たるものがない。  最初の家は私が六歳の頃まで住んでいて、一軒家で、いわゆる「実家感の強い」家だった。  これまで住んだ家の中で、その家が一番広かったらしい。私の体は小さかったから、大人になって母から聞くまで、まるで実感したことがなかった。私はのちに親の都合で6回に亘りいろいろな家に引っ越したのだが、どの家も広く感じたし、どの家にも不便さを感じなかった。  たしかに、

          花のない家