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♪ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 F.メンデルスゾーン


この記事では、メンデルスゾーンの《♪ピアノ三重奏曲第1番ニ短調》について解説しています。


この曲は1843年、メンデルスゾーンが34歳の時に作曲されました。

同年に初演され、ピアノはメンデルスゾーン、ヴァイオリンは《♪ヴァイオリン協奏曲ホ短調》の初演も行ったダヴィッドが担当しました。

この曲は、同年代の作曲家のシューマンから「ベートーヴェン以来のこのジャンルの傑作である」と評されました。


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《フェリックス・メンデルスゾーンの肖像画》



メンデルスゾーンはどんな作曲家?

メンデルスゾーンは早熟の天才でした。

♪序曲『真夏の夜の夢』》や《♪弦楽八重奏曲》などの、習作を超えた、完成された作品をわずか17歳で作曲しています。

演奏家としても優れており、ピアノやオルガンなど鍵盤奏者として、また指揮者としても活躍しました。

またバロック音楽の研究に熱心で、当時忘れ去られていたJ.S.バッハの《♪マタイ受難曲》を復活上演させたりもしました。


その他、趣味で詩作をしたり水彩画を描いたりと、多才な人物でした。

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《メンデルスゾーンが描いた風景画》


メンデルスゾーンには「ピアノや指揮の才能にも恵まれ、家庭も裕福で、楽々と人生を歩んでいた軽めの作曲家」というイメージがありますが、

先人の作品への尊敬の念は強く、また自分の完成した作品を破棄したり、修正することも多かったそうです。



メンデルスゾーンの音楽の特徴

音楽家としての成功に「革命的な新しさ」を必要としなかったメンデルスゾーンの作風は、
保守的で古典的と評されます。

ロマン主義の趣は明らかですが、それは客観的なものであり、一種テンプレート的と言ってもよいほどです。


(《♪無言歌集》の楽譜を見たとき、あまりの淡白さに「どう弾いたら良いのだろう?」と長年疑問だったのですが、
「客観的」という言葉で疑問が解消され、
「楽譜は古典派っぽいけど、ロマン派風に弾けば良いんだ!」と納得し、腑におちました。)




「メントリ」は少し違っている?

しかしこのピアノトリオはひと味違っています。

曲調が、全曲を通して熱っぽく、情熱的なのです。
よりロマン派色の強いシューマン的様式を用いて作曲しており、これが全曲を通して高い演奏効果を発揮しています。

また、全楽章の主題がアウフタクトによって共通の性格づけがなされていて、
メンデルスゾーンの綿密な構成力をみることができます。



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《ロベルト・シューマンの肖像画》



各楽章の簡単な解説

第1楽章
ピアノの山型の伴奏のもと、チェロが主和音で構成された第一主題を奏でます。
ヴァイオリンが加わってくると、一気にフォルテへと向かい、完全終止します。
充実した移行部を経て、山型の第2主題を再びチェロが奏でます。

第2楽章
無言歌風のピアノソロによる主題提示が美しいです。

第3楽章
「真夏の夜の夢」を彷彿とさせる、爽やかな無窮動のスケルツォ楽章です。

第4楽章
濃厚なロンド的ソナタ形式で書かれています。



以下の文章は、レミ・ジャコブ著、 作田清訳『メンデルスゾーン』(作品社)より、
《♪ピアノ三重奏曲第1番ニ短調》について書かれている部分の引用です。


"シューマンやブラームスでさえほとんど凌駕していない、この作品の代表作品として、おおらかで情熱的でロマンチックなこの曲は、メンデルスゾーンの天才の側面すべてを改めて明らかにしている。
第一楽章のさわやかで精力的な主題は、明るく練達したピアノの荒波の上を舞っているかのようであり、
アンダンテ・マ・コン・モートは無言歌のパステル調を飛びている。
軽妙で精彩あふれる傑作のスケルツォは活気がみなぎり、ピアノ固有の持ち味を出してきらめいてちる。
古典派以上に、フィナーレはメンデルスゾーンには珍しいアパッショナートが付記されているが、彼の内心で燃えている情熱がどんなものであるかを明白に示している。" (P154)




おすすめ動画

YouTubeにて、キーシンがピアノを担当している2009年のライブ動画が閲覧できます。

この曲の第3・4楽章は技巧的にかなり難しいのですが、それを楽々と弾きこなすキーシンの姿はかっこいいです😍


《 演奏は1:08ごろから 》


他には、ボザール・トリオ、ボロディン・トリオの演奏動画などもあるので、比較してみると面白いと思います。
(ボザールトリオは各人の音が粒立っており、ボロディントリオは響きのバランスがすごく良いといった印象です。)

アンサンブルは統一感や調和性が求められる傾向がありますが、
名ソリストたちが集まり、時に合わさり、時にバトルするような演奏も、スリリングで面白く、
「この盤はどういったコンセプトで演奏されているのだろう」と考えることも楽しみの一つだと思います☺️



(2021年5月25日、加筆・修正しました。)


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!


さくら舞🌸

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