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【スタートアップ!占い師】休憩〜占い執筆の著作権侵害と生成AIを用いた文章の使用について

 先日占い界隈をさわがせた、人気占い師の著作権侵害と生成AIを用いた文章の使用の問題。Xを覗くと、「やってはいけないことをした」と怒る人も言えれば「ちゃんとお詫びをよく言った」と言う人もいて、反応はさまざまです。
 私も過去に占いのライティングのお仕事を請け負っていた経験があり、週間占いの記事を書く大変さをわかっているのもあって、この問題はついては「ああ、やっぱり公にでてきたんだなぁ」と思いました。


占いを書くことの大変さ

毎週・毎日の運勢記事を書くことの大変さ

 占い記事を書いたことがある方ならご存知かもしれませんが、運勢記事の執筆は、他の占い記事と比べて時間がかかり、書くのにも気を使います。

 12星座や数秘別のあるあるネタや性格ランキングの記事は性質や性格をおさえておけば書けますが、運勢記事はにチャートや命式を出し、結果を読み、自分の中に落とし込む作業が入るため、執筆にとりかかるまで時間がかかります。

 雑誌やネットの記事は、原稿が完成・掲載されるまでさらに時間がかかります。
 流れとしては、書いた原稿(原稿1本あたりの字数、各性質ごとの字数も調整したもの)を一度編集さんに入稿、校正で修正箇所が見つかれば直して再度納品、確認のOKがとれるまで繰り返し、OKもらえたなら雑誌やネットなどの世に出る……といった感じです。
 個人のブログやSNSにアップするだけなら、執筆後自分で校正作業を行い、投稿をします。編集さんの仕事も自分で行います。

 毎月の運勢なら月1本の執筆・納品なので、まだ時間に余裕を持って書けます。しかし、週の運勢は週1本分、月に4〜5本の執筆。週ごとの納品となると締め切りが近く超ハードです。直しが入れば、その分次の執筆にとる時間もなくなりますから、次の週の執筆分のスケジュールも考えながら作業を行わないといけません。
 毎日の運気だと、さすがに毎日納品ではなくまとめての納品になると思いますが、書くほうは月30本のほどの執筆で、それはそれは修行そのものでしょう(やったことはないけれど想像はできる)。

 やってみると実感しますが、毎週や毎日の運勢記事の執筆は、根気と継続力がないとできません。個人の占い師の毎月・毎週・毎日の運勢記事の投稿ですら、続かない方が多いのです。

プラス、占いを書くことの大変さ

 それに、占い記事の執筆は、ただ運勢や性格的なものを書けばいいわけではありません。読み手への配慮が必要で、占い以外の他の記事を書くときよりも気を使います。

 各性質ごとに文章を書くときに、運勢の結果が似ているからといって同じような文章になってはいけませんし(「◯◯座と△△座、書いてること一緒じゃん」と思われちゃいます。掲載時に指摘されたことがあります)、ネガティブな結果は読み手がネガティブになりすぎないように、表現に気を使わないといけません。
 (簡単な一言運勢占いであっても、言葉選びは慎重にならないといけないと思います。短文は言葉数が少なく具体性がない分、書き手が「こう読んで欲しい」と思っても、そう読まれない可能性があります。一言運勢占いは執筆経験はないですが、求められることがハイレベルだなぁと思っています)

 「占いの言葉は人の人生を左右する」という点にも気を使わなければいけません。
 例えば、占いの言葉を信じている人が、朝のテレビ番組の占いで
 「今日はイライラしないように気をつけて! あなたの今日のラッキーフードは焼き肉!」
 と言われたとしましょう。
 これを聞いて、イライラしないように、会社ではなるべく苦手な人と接しないよう、避けるかもしれません。お昼にコンビニで焼肉弁当を買うかもしれませんし、家族と焼き肉を食べに外食に行くかもしれません。
 すると。
 ・会社で苦手な人を避けていた→量が多くて負担になりそうな仕事まで避けていた。普段から仕事量が多かったから助かった。・焼肉弁当を買いにコンビニに行った→偶然好きな人がいて会話のきっかけが生まれ、やがて進展して付き合うようになった。
 ・家族と焼き肉を食べに言った→転勤の指令があったことを聞かされ、生活をどうするかを話し合った結果念願の一人暮らしができるようになった。
 ……など、「イライラ禁物、ラッキーフードが焼き肉」から生まれた小さな行動から、思わぬ方向に転がることがあるのです。
 これらの例は極端かもしれませんが、「誰かの一言で人生が大きく変わる」という事象があるように、ちょっとした占いの言葉が大きい出来事に発展する可能性があるのです。
 占いの言葉が人生を左右する、というと大げさに聞こえるかもしれませんが、決して大げさではありません。占いを伝える際は、他人の時の積み重ね・日々の積み重ね・人生の積み重ねの中で起きる事象に、占いの言葉が影響することも考えていかなければならないのです(これは、占い記事はもちろん、個人鑑定にも言えることです)。

 占いは、薬にも毒にも、願いへのサポートにも呪いにもなります。

 言葉や言い回しに気を使うだけではなく、自分の言葉……書いた占い記事の言葉の責任を重く受け止めた上で文章を考えて書かなくてはいけないという点でも、占い記事を書く大変さがあるのです。

著作権侵害の占いや学習元不明の生成AIの文書作成による占いは占いを冒涜していると思う

 書き手側のこうした裏側と苦労があって占いの運勢記事が出来上がってくるのですが、残念なことに先日のニュースのように、どこかから持ってきた運勢記事を自分が書いたように文体を変えて載せたり、学習元不明の生成AIを使って占いの文章や鑑定書を作成する人がいるのです。

 こんなことをするのは、記事の執筆に困った占い師だけではありません。
 執筆作成や締め切りに困っていない人もやるようです。
 (ヘイズ中村先生のツイートで知りました。

 過去の話になりますが、私が書いた占い記事をそんぐりそのままブログに貼り付けて投稿していた方を見たことがあります。
 その方は占い師ではなく普通のブロガーでした。
 しっかり自分の名前まで貼り付けてあったので「ありがとよ!」と思いましたが(ダメじゃん)。

 こんな感じで、書くことが面倒くさいけど記事は欲しい人、誰かの記事を利用してお金を欲しいと思っている人、なにかの投稿ネタを増やすのに占いを利用したい人、SNSや動画を使ったマネタイズのために占いを取り入れる人は、著作権無視も、AIで生成したデタラメ占いの使用も普通にやるのでしょう。
 ……といいますか、悪どいことって年齢・男女・職業関係なく、やる人はやりますよね。
 そういうのが今回のニュースで表面化されたというだけで、水面下でやっている人はたくさんいるでしょう。見て見ぬふりをして、続けている人もおるでしょうね。
 
 著作権侵害の占い記事や学習元不明の生成AIの文書作成による占い記事や鑑定書を利用する人は、占いによる言葉の重みがわかっていないのでしょうね……。
 占いを金儲けや人集めのツールとしか考えていません。
 占いは、仕事のかたち上は「情報サービス」ではありますが、見えない世界や力を扱うものなので、ぞんざいな扱いはできません。まともに占いを書いている人はそれをわかっていますし、占いそのものにも、自分の占いを読んでくださる読み手にも敬意があります。
 それなのに。
 占いを金儲けや人集めのツールとしてしか考えていない人は、誰かの文章や誰が書いたかわからない文章をサービスとして提供していて、読み手の気持ちを安心させたり不安にさせたりしているのです。
 あまりにも軽率な行為ですし、占いを冒涜していると思います。

 真面目に星や命式、占いの知識を使って一から記事を書いている人からしたら怒って当然、真摯に占いに向き合っている人からしたら軽蔑して当然です。

誰かの文章や、内容に信頼のおけない文章を仕事に使うのは、書き手としては絶対にやってはいけないこと

 過去にも書きましたが、占い記事にも著作権はあります。

 著作権は、占い師に限らず誰しも守るべき法律です。絶対に侵害してしまってはいけません。

 学習元不明の生成AIは、ネットの情報すべてが学習元、もしくは誰が学習させたかわからない謎の情報が学習元です。文章生成時に、間違った情報が文章に組み込まれることがよくあります。それに、ネット内から拾ってきたテキストに著作物も含まれますので、言い回しや文体が著作物に極めて類似していれば、著作権侵害になる可能性があります。
 AIへの指示がうまくいかなければ、精度が低く、的を得ていない文章ができあがります。
 
 生成AIは間違った情報を提供してしまう可能性があること、生成した文章が著作権侵害になりうるかもしれないこと、場合によっては精度が低く的はずれな文章を提供してしまうことから、学習元不明の生成AIでの占い記事や鑑定書の作成は行ってはいけません。現に、生成AIを使った鑑定は禁止事項となっている占い会社もあります。
 現段階の法律では、生成された文章は著作権はAIに指示を出した人が持ちますが、どこかの著作物に似た文章を生成したことを著作者に指摘されれば、責任を問われるのはAIではなく指示を出した人になります。

 個人的には、AI使用者が占い師を名乗っておきながら自分(人間)は占っていない「なりすまし占い師」や、生成した占い記事の手直しだけを行う「なんちゃって占いライター」の存在そのものが謎だと思っています。
 AI絵師と同じで自分で占ってないじゃん……。
 早くAIの法制度が整い、こういった人たちを取り締まって欲しいと思います。

占いをするAIはすでにある

 占い師の監修を得ているAI占い、元々AIが占いをしている占いはすでにあります。

 こういった「元々、きちんとした学習をしているAIを使った占いですよ」とわかるものなら安心して使えるでしょう。堂々と「AIです」と言ってますし、占い師のなりすましではないので全く問題ないでしょう。

「人が書く占い」の信頼度をとりもどすのは難しいかもしれない

 信頼を損なう行動をしてしまうと業界の信頼度が一気に落ちるのはどの業種もそうなのですが、元々信頼度が低い占い業界の場合は、ひとりが悪さをするとその信頼度の落ち具合は半端ないのです。なにかがあるたびに「やっぱり信用できない」「まただましたのか」と言われる業種は、どの時代も占い師が多いと思っています。
 悪いことをする人は残念ながらどの時代にもいますが、それでもこれまでの悪さは、悪徳を働いたものが責任を背負い罪を償い、真っ当な占い師が頑張ればなんとか信頼回復できるものでした。

 今回のニュースの件は、特定の占い師がどうこうすれば信用を取り戻せる問題ではないと思っています。
 「SNSやブログで書かれている占い記事や雑誌、サイトに掲載されている記事が、占い師本人が書いたものかどうかわからなくなった」と、占いの読み物すべてに疑いの目をかけられてしまったからです。

 「これまでも占い師の雑誌記事や著書をゴーストライターが書いていたんだ、今更何いってんの」と思う人もいるかもしれませんが、やっていることの性質が違います。
 ライターがつく記事や著書には「監修」「執筆協力」等のクレジットがあるし、それがなかったとしても日陰の存在として執筆し報酬をもらう「代筆」という仕事関係が成立しているため、「占いを書く仕事そのもの」はごまかす必要がなかったはずです。(それでも、著作物をパクって書く人はいたとどこかのSNSで見ましたが)。
 今回のは「代筆」ではなく「他者の著作物のパクリ」と「AIの生成物」です。「占いを書く仕事そのもの」をごまかしています。それも、報酬をいただいた上です。
 
 「SNSやブログで書かれている占い記事や雑誌、サイトに掲載されている記事が、占い師本人が書いたものかどうかわからなくなった」という疑惑は、AI登場前からSNSやブログで占いを書いていた占い師や占いライター、占い記事を掲載している占い師の投稿、投稿先のサイトにも向けられてしまったと思います。
 頑張って書いていても「この人の文章もAI……」とか「どこかから文章パクってきたんじゃないか……」とか思われたら、たまったもんじゃありません。
 「人が書く占い」の信頼度をとりもどすのは難しいように感じます。
 この場合は、書いている姿を見せたら信じてもらえるのでしょうか。
 
 この占い記事の盗用&生成AI使用の問題、個人的には、疑惑がここで花咲いたのであって、種まきを行っていたのは、近年にみる「コンテンツ販売」だの「高額講座」だの「副業」だの「AI×占い」だの騙る占いビジネス稼業の増加(真摯に記事や鑑定を書く占い師ではない)だと感じています。

 こんなものも登場していますしね。

 最近はノーコードで生成AIがつくれるものもありますし……。
 これで簡易占いを作って、サイトに埋め込んで無料占いサービスを作る程度ならいい(むしろ面白そうだから試しに作ってみたい)と思うけど……占いAIを作って自分の代わりに記事を書く人も出てきそう(こっちは試すな危険)。

 人の書く文章は生成AIが生成した文章と違って、書いた人の感情の機微が感じられ、温かみがあります。それだけ伝えたい思いが文章に乗っているんだと思い……た……い……(ここで「うまく書けない〜」と泣きながら納品した記憶や「タヒぬぅぅぅぅ今夜中の3時ぃぃぃ」と叫びながら書いた記憶が蘇える)。

 占い記事やテキストの占い鑑定、占い師や占いライターのイメージや信頼回復のために、自分のちからで文章を書き、質の良いものを仕上げ続ける。
 頑張って書いた文章は、AIなんかに負けません。
 「占いを書く」みなさん、ともに頑張りましょう!

 ちなみに今回のこの記事も含め今までの記事も、著作物パクリもAI使用もしてません。書きたい内容やだいたいの構成が頭の中にあるのに、そんなことしたら内容がぐちゃぐちゃになっちゃって、頭の中のイメージが消えますので……。


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