【スタートアップ!占い師】#32 「占いのアピールにカードの絵柄をネットに載せちゃえ!」……って、それ許可とった? 占い師と知的財産④ 著作権と占いの仕事。著作権侵害になるものとは?
自宅で占い師の活動をしているさくらさん。
自分の占いのアピールとして、SNSで三択占いを行おうとしています。
SNSで他の占い師さんたちがやっているところをみて、「自分も!」と、思ったのでしょうね。
タロットなどの写真を載せ、「どれにしましたか?では、みてみましょう」と占いの結果を展開していく、SNSでの占い。ブログやYoutubeでもよくみかけますね。
でも、ちょっと待ってください!
それって、カードを描いた人やカードの出版社に黙ってやってもいいものなのでしょうか。みんながやっているから、大丈夫?ほんとうに?
今回は、知財財産。
みんなが知りたかった?著作権と占い師の仕事についてです。
どんなものが著作物になるのか。著作物を使うにはどうすればいいのか、等をお話していきます。
これも大事な話なので、無料です。
(経験に基づく情報は有料記事にしております。無料記事が続いておりますが、いつも無料ではないです!ご理解くださいませ!)
※現在の法律等各サイトを調べて書いている内容です。確実性を求めるのであれば、弁護士さんや弁理士さんに直接ご相談いただければと思います。
占い師の仕事と著作権
占い師なら、誰でも著作権を持っている……?!
占い師の中に著作権を持っている人がいるのでしょうか。
占いの本を書いた著者の占い師。著作権持っていますね。
占いカードを作った占い師も、もちろん著作権を持っています。
では、占い師になりたい人や占い師として活動している人は、著作権を持っているのでしょうか?
はい、ほとんどの人が著作権を持っているといえます。
著作物には「ブログの文章、SNSに投稿した文章や写真やイラスト」「なにかの実演」「録音されたもの」も含まれます。占い師として活動したい人や活動している人は、自分の占いや仕事を広めるために、ブログやSNSなど、どこかには自分の活動内容や占い結果を残していると思います。
(ブログやSNSを使わず、チラシも配らず口コミのみで活動をされている人も中にはいますが、ネット社会の現代ではあまり見かけないレアなケースですね)
ブログやSNSで自分が書いた文章、撮った写真や動画、占いライブ配信のアーカイブ、ラジオ配信、同人創作で生み出した出版物や美術的な作品……それぞれに著作権が発生しているのです。
それらを生み出した占い師や占い師のたまごさん、アマチュア占い師はみーんな著作者、といえるのです。
占いのツール、それに関わるもの……どこからどこまでが著作物?
占いの記事や写真などの著作物を生み出すためには、占いを行うためのツールが必要です。では、そのツールやツールに関わるものは著作権があるのでしょうか。
だいたいの方は「そんなのあるに決まってんじゃん!」と言うと思いますが、ツールの中でも、著作権があるものとないものがあります。
著作権があるものは、以下になります。
著作権があるもの(無断で使うと著作権侵害になるもの)
・パブリックドメインになっていない占いカードの絵すべて
・パブリックドメインを使った二次創作的なカード
・占い本や雑誌の解説の絵や文章、写真すべて
・占い本や雑誌の表紙(占い本や雑誌の表紙は、その装丁デザインに著作権があるため、写真で載せることはNG)
・誰かが書いた、もしくは誰かが話した鑑定結果や占い理論
・オリジナルデザインの鑑定書テンプレートや鑑定シート。それを使って作成した鑑定書(鑑定書やシートのデザインに著作権があります)
・鑑定アプリ(ホロスコープなど)で商用利用禁止のもの、著作権を主張しているもの
・誰かが作成した占い講座のテキストや資料、パワーポイント等のスライドショー(直だけではなく、スクショしたものもダメ)
・占い会社のサイト・アプリのデザイン
・占い師が監修している占いサイト
……他、創作性やデザイン性のあるもの。もちろんここに、誰かが(自分も含む)書いたブログやSNS、写真、作成した画像、サイトのデザイン、動画、ラジオなども含みます。
そう……『占いのアピールにカードの絵柄をネットに載せちゃえ!』は、ものによっては著作権侵害になり、許可をもらわないと勝手に載せてはいけないのです。著作権がカードの著作者や出版社等にあるので、自分の好きなように使ってはいけません。著作権を持つ人の知らないところでカードの絵柄をネット(SNSでもブログでも)に載せる行為は、著作権侵害になります。ネットに載せなくても、講座の資料等で勝手に印刷するのもいけません。
「みんなやってるし!」は「みんなで悪いことやっていてもOK」という謎の主張であり、本来はやってはいけません!
著作権がないものもみていきましょう。
著作権がないもの(無断で使っても著作権侵害にならないもの)
・占いカードの箱。工場で大量印刷されたものであり、カードを入れる「実用品」のため。
※パッケージのデザインが著作物と認められないケースは、過去の判決に
ある(黒烏龍茶類似品事件)
・パブリックドメインとなっている占いカードの絵すべて
・占い本の名前、雑誌の名前
・占いの説明、占いの手法、展開法そのもの
例えば、カードのオリジナルスプレッドを生み出して「うちが生み出
したんや〜!」と主張しても、著作権は認められない。世界のどこかに
同じスプレッドを生み出している人もいるだろうし、その主張すら意味
がない。
オリジナルの占術に著作権を訴える占い師もいるが、手法には著作権
は発生しない。ただし学ぶためのオリジナルテキストやオリジナル占い
カードには発生する。
※占いの手法をパクったとして(手法が、本を読んでいないからわから
ないのです。すみません)占い本の著作権侵害で訴えた裁判が過去に
ありますが、棄却されております(数霊占術書籍事件)
・命盤やホロスコープ、鑑定結果そのもの。誰かを占うことそのもの。
(ただし、有名人・著名人の占い結果は、本人が嫌がる場合や占いその
ものを拒否・否定している場合があるので取り扱い注意。どこかの会社
に原稿執筆等、占い鑑定依頼されない限りは、有名人・著名人を占った
り、占い結果を公表しないのが賢明。)
・著作権フリーの鑑定アプリ
・著作権フリーのオリジナルデザインの鑑定書テンプレートや鑑定シート。それを使って作成した鑑定書。
・ルーン「文字」や易の「卦」、惑星名といった名詞。
(ただし、文字や名詞を表現するフォントを使用する場合はフォントの作者の主張による)
・占い師同士の会話やただの主張
「このカード買いました!」と、カードのパッケージを見せるはOK。ルーンストーンや易サイコロの写真を載せて、占い結果をSNSで投稿するのも、著作権には引っかかりません。
自分の占い師活動で著作物を使いたい!どうすればいいの?
SNSで占いカードの絵の画像を投稿するなど、自分の占い師活動で著作物を使いたい場合は、著作権侵害にならないよう正しく著作物を利用しなければいけません。著作物を利用する正しい方法は、次の2つになります。
・著作者や出版社、著作団体に許諾をもらう
著作者や出版社、著作団体のガイドラインに沿う
「常識じゃないか?」と思う人もいますが、この手間をめんどくさがって、やらない人が多いのです。「みんなやっているから、自分もやってもいい」と勝手な解釈をしている人もいますし、そもそも著作権があることをわかっていない人もいます。販売している占いカードは「大量に印刷された実用品」、著作権がないと思っているなら間違いです。そこに描かれている絵のイラストやデザインは創作性があるものですので、著作権はバリバリ発生します。
占いカードを使いたいときは、まずは著作権を持つ人に「使っていいですか?」と聞きましょう。著作者や出版社、著作団体が、カード使用についてのガイドラインをネット等に掲載している場合があります。自分で調べて、ガイドラインに沿って使用するようにしましょう。これは、USGames社やLo Scarabeo社のようなメジャーなカード制作会社に限ったことではなく、Etsyで売られているようなインディーズのカードも同様です。
(ちなみに。著作権と結構間違われるのは「商標権(ネーミングや何かの目印、商品などにつけるマーク、社名のロゴなどの標識の権利)」の存在ですが、海外で獲得されている商標権は、国をまたぐことはありません。ただ、海外の著作者や出版会社が日本でも商標権を獲得している場合があります。そのときは、勝手にロゴ等を使ってはいけません。)
・引用を使う
条件をみたせば、「引用」として、著作物を使うことができます。
その条件は、
・引用元が公表されていること(非公表のものはダメ)
・引用や転載する理由が明確
・引用元や転載元を改変しない
・利用する箇所が適当・適切・適量・正当
・引用元や転載元がちゃんと書かれていること(サイト等に、Amazonなどの販売元のリンクを貼り付けるのもOK)
です。
「カードで占った結果をSNSに載せるときに、カードの写真と出版元を載せて『引用しました!』というのはOKなのか?」というと、それは引用になりません。なぜなら、「カードで占って出た結果」がメインになっていて、引用の範囲を超えているからです。写真に自分が書いた文章をつけて載せていても、自分の文章がカードの結果に基づいて書いているものなので、これも引用になりません。
引用を使用する場合は、自分が書く記事や撮った写真(ただし著作物は映っていないか、チラッとしか映っていないもの)がメインになっている必要があります。そのメインを補足するための引用や、引用元を抜き出して自分の感想を言ったり評価をする程度なら、著作物は使用できるのです。
他にも著作権に触れない方法はないの?
上記の他にも、著作権に触れない方法があります。
それは、「占い本のタイトルやカード名『だけ』を書く」「占い本や解説書、カードの絵に頼らず、自分の言葉や絵やおしゃべり言葉で占いの結果を伝える・解説をする・占いに関わる出来事を話す」「著作権がないものを使う」「感想を書く」です。
表現力や表現技術勝負なところがありますが、許諾をもらうのも引用も面倒なら、これらの方法を使うしかありません。
著作権侵害が許されているのではなく「ただ探していないだけ」「見つかっていないだけ」「スルーされているだけ」「黙認しているだけ」です
著作権侵害をしていたとしても「著作者が何も言ってこないから」と、そのまま著作物の写真や動画等を投稿し続けている占い師は多いものです。
著作権侵害しているユーザーを探すほど、著作者も出版社も暇ではありません。著作権侵害をしている占い師の投稿が山程流れてきても、「著作権侵害だ」と気がついて、いちいち著作者に報告する占い師もいません(普通に考えて、そんなレベルな人を相手にしたくないじゃないですか……あっても、遠回しに注意喚起する程度です)。
「販促になるかも」と見逃している著作者もいると思います。
「著作権侵害をしていても何も言ってこない」のは、本当に何も言ってこないのではありません。「ただ探していないだけ」「ただ見つかっていないだけ」「ただスルーされているだけ」「ただ黙認しているだけ」なのです。
「本当はやってはいけないことなんだ」と思わないといけません。
ダメなことだと認めて、許諾をもらおうとするなり、著作物にならないものを使用するなり、著作物を使わないで自分の力でなんとかするなり、しましょう。著作権侵害しないで、自分の文章や絵、自分のおしゃべり言葉で勝負できる占い師さんはすごく素敵です。
No more著作権侵害!
次回に続きます!
引用・参考サイト
https://www.f.waseda.jp/uenot/hanrei/txt/h200611.txt(数霊占術書籍事件)
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