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愛と再生の物語…18

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「メイは母さんにそっくりだからって……
鏡を見れば…」
父親は目を見開いた…これだったんだ…
頭に一枚の写真が想い浮かんだ
そして……妻が息を引き取る間際に…
「メイが…早いけど…メイに………
メイが4歳になったら……あの子に、
あの人形を…受け継がせてね……
ずっと…ずっと…受け継いできた
……あのビスクドール……
お願い…し……ます…」そう言った。。。
最後の言葉だった…。
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「父さん…母さんがね、誕生日のプレゼントに、ビスクドールをって…
父さんには言ってあるからって」
「メイには少し早いけど
どれほど大切なものかを、ボクがメイにちゃんと教えてねって……
母さんそう言ったよ…」
父親は…ケントの言葉は聞こえたが
頭の中がぐるぐる回っているようで……
「父さん…どうかした?
ねぇ……父さん…」
父親は、我に返った
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「ケント……ケント…ちょっと待ってておくれ…
直ぐに戻るから……」
そう言うなりケントをもう一度、力一杯抱きしめて、立ち上がった
「直ぐに戻るよ…」頭にキスをして
部屋を出た……。。。
ケントは大きな安堵感に包まれていた。
父親から…あんなに強く抱きしめられ
誇りに想うと言ってもらった
……父さん…ありがとう。
そして、母さん…昨日…ボクに逢いに来てくれてありがとう。。。
ケントは心の中で繰り返した🙏
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父さんは母さんが大切にしていた
美しい薔薇の花が描かれた箱と
ビスクドールを手に…戻ってきた
「ケント、これを見てご覧…」
そう言いながら箱の蓋を開け
中から古びた一冊のアルバムを取り出した
父親はパラパラ捲り…
「これだよ」開いたページの一枚の写真を見せた……
「父さん⁉️父さん‼️これって……」
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母親がそっくりだと言った事
ドリーさんのプレゼント
ビスクドール…
全ては一枚の写真の中に……
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一枚一枚の写真が
生まれてきた時からの時を閉じ込め
綴る事でその想い出となる
写し出された世界
その中には
たくさんの言葉もまた想い出となって
閉じ込められている
にっこりした表情から
かけられた言葉が思い浮かぶ
微笑ましい瞬間が
幾重にも……
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愛しいと想う人が愛しいと想う相手を撮った写真
たった一枚の写真からも
たくさんの愛が溢れていた…
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外は、雪がしんしんと降っていた
月夜でもないのに
とても明るく
降り積もる雪はキラキラと輝いていた
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同じ頃、ドリーは寝る支度をしていた
暖炉の火を小さくなるようにして
いつもより…うんと早い時間だ
余りにも多くの事が…あり
今夜は早くやすむ事にした
1階の明かりを消すと
ピッピが階段を上がる…はい寝ましょうね😊
ベッドに入るとピッピは
床で丸くなった
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枕元の明かりを消して…
今日の出来事を想い出していた
メイちゃんのお誕生日会を共に過ごさせてもらい
あの天真爛漫で真っ直ぐな心が
私の封じ込めてきた
家族を亡くし、一人になった時から
頑なに想い出さないようにしてきた
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それまでの家族の温かい想い出を
全て…想い出さないようにしてきた
そんな…心を…
心の扉を開けてしまった……
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恐れていたような事には…ならなかった
涙は溢れ出たけれど、
その涙は……冷たい……あの時流した
慟哭の涙ではなく
あの小さな手のひらから伝わる
温かな心が
ドリーの心に届き……
もう…閉じ込めておかなくとも
いいよと…
それは、家族からの許しの温かさのように
流れる涙さえも温かかった
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家族が…生きていれば
子供はケントとメイの父親と同じ年齢位だろう
それを想うと、孫も……。。。。
きっと亡くなったあの子たちが
私をここへと連れてきて
ケント一家とこうして巡り逢う道を
創ってくれていたのだと想った。。。
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亡くした夫と子供たちに…
出逢え、同じ時を過ごせた事を
初めて、後悔ではなく…感謝して
「ありがとう」と、目を閉じて呟いた
流れ落ちる涙が枕を濡らす
そのまま
ドリーは深い眠りの中へと…誘われて
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床で寝ていたピッピが
耳をピンとさて、ゆっくり起き上がった
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続く…。

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