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FF7Rレビュー:アクションはダメだが、体験としては素晴らしい

35時間程度でクリアした直後のこと、オフゲーとして数年ぶりに「隅々まで味わいたい」と思うことができた。やりこみを初めて合計60時間を経た今でも、その気持ちは変わらない。「分作だから」という理由だけでこのゲームをスキップするのはあまりにも勿体ない。

発売前、FF7Rに大きな期待を寄せていた。
何故なら、RPGであると共に、アクションの要素も兼ね備えているからだ。
私の好きなゲームは、モンスターハンターやデビルメイクライといったアクションであり、自らの手でキャラクターを動かし、敵をなぎ倒していくことを人生の喜びとしている。
また、無骨ながらどこか繊細な存在感を持つバスターソードと、寡黙でクールな振る舞いのクラウドは、全国のキッズを厨二病へと誘ったであろう。私もそれに漏れず、そんな魅力的なキャラクターを実際に動かし、かつFF7の物語を体験できるのであれば、期待しない理由はない。

<フルボイスの力とマップデザイン>
本当のフルボイスとは、このゲームのことを言うんだと思う。
近年、カットシーン以外の細かな会話には声が用意されていないゲームも多く見られるが、FF7Rはそうではない。メインキャラクター達は様々なパターンの声を持っており、それはプレイヤーの選択や行動によって変化し、声が途絶えることはない。
最も驚いたのがプレイアブルからカットシーンへ移行しても、背景に聞こえる会話が流れ続けているところだ。カットシーンをそれと感じさせない自然なプレイアブルからの切り替えも見事。
また、プレイヤーが道に迷い、意図せず道を戻ってしまったときは「戻るか?」や、「こっちなんかあんのか?」等、それとなくプレイヤーに知らせてくれる。
また、進行に必須ではない寄り道的な探索のときも「たっから探しに出発だ~」と知らせてくれる。物語に直接関わらないボイスを通じて、キャラクターが身近な存在になるという効果もある。物語中盤、エアリスと出会ってしばらく行動を共にした後、一度しばらく別れるシーンがある。そのシーンまでに、もっとエアリスと一緒にいたいと思うほど愛着が湧いていた。憎いことに、分かれる手前でプレイアブルに切り替わり、エアリスに話しかけることで別れるかどうかの選択肢まで発生する。久々にゲームのキャラクターに恋をした。エアリスかわいいすきぴ。
「声」を持っているのはメインキャラクターだけではない。スラムに暮らす人々や、道中ですれ違う、所謂「モブキャラ」も同様だ。ここも妥協せずに吹き込まれている。
物語序盤、クラウドが「なんでも屋」としてサブクエストをこなす場面がある。クエストをいくつかこなすと、街の人々の会話が「なんでも屋がいるらしいぜ」と噂が立ったようなものになり、クエストをコンプすると「あのなんでも屋はすごい!」というような内容に変わる。また、バイクメカニックを目指す青年がいるのだが、物語を最初は目指すんだと息巻いていたが、物語が進むと師匠に認められたりする。この作り込みの緻密さはすごい。
これらはクラウドが話しかけてプレイヤーが意図的に発生させている会話ではないというところも演出として評価すべきだ。これらはスラムの街を歩いていると、自然に聞こえてくる声であり、これによりスラム街をリアルに感じることができる。また、その声ひとつひとつに潜む、プレイヤーに直接関わらない物語を知ることとなり、ここに人が生きているんだと実感させてくれる。
それをプレイヤーに感じさせやすくするマップデザインも良い。街はコンパクトで、一度走り回れば覚える程の広さ、ランドマークとしての建造物もある。またここでも、声によって人を認知する。なんの関係もないキャラクターを声で認識し、街の一部として認識するという、声によるマップデザインは秀逸だ。直感的に得た印象と情報が、ビジュアル的にも書き込まれた街を、より濃密なものにしてくれている。
筆者は位置情報を共有する「Swarm」というアプリを愛用しているのだが、セブンスヘブン(アバランチのアジトを兼ね備えたバー)に入ったときに、直感的に「Swarmしなきゃ」と思ってしまうほど、街への没入感を高めてくれた。
FF7Rにおいて「声」は大きな要素であることがわかるだろう。

<カットシーン>
カットシーンの豪華さは天下一品といっても良い。物語が大きく動く場面では非常にリッチで派手なアクションが用意されている。アドベントチルドレンはCG作品として評価されたが、それを遙か凌駕するのはもちろん、FF15キングスグレイブと比較しても遜色ない。
その素晴らしいカットシーンとプレイアブルの境目が全く感じられないという点もすごい。開発に長い時間がかかっていると思われる作品だが、それにも納得でき、その長さに見合っている。
また、カットシーンとプレイアブルが剥離していないというのは、カットシーンでの没入感を圧倒的に高めてくれるという意味でもある。
それには、しっかりとした下地(=プレイアブル)が必要で、その下地の上質さに酔った状態であれば、操作できるか否かは、たいした問題ではないのだ。
濃密でリアルなプレイアブルが、プレイヤーのものになっているからこそ、カットシーンが説得力を持ち、プレイアブルでの感情移入を増幅させてくれるという効果をしっかりと持っている。あるべきカットシーンのお手本のようだ。街とキャラクターを極限までリアルに感じている状態では、プレート崩壊の場面では特にそれが感じられるだろう。

<音楽>
次に音楽の話だ。残念ながら筆者は音楽の深い知識は持っておらず、深くお話することはできないし、今更スクエアエニックスの音楽について語る必要ないかもしれないが、2つだけ語りたい。
ひとつめは、エアリスのテーマがいくつあるんだ!というところ。エアリスがフィーチャーされる場面では必ずと言ってよいほどこの曲が流れるが、そのパターンがとても多く、いくつもの表情を持っている。その度に「あ、また違うエアリスのテーマだ!」となるほど。
ふたつめは、「ミュージックディスク」だ。これはコレクタブルアイテムとして用意されている。人に話しかけると貰えたり、店で買うことはもちろん、ある一定の条件を満たすことで開放されるものもある。また、所謂ダンジョン(モンスターが出てくる、街と街の間の移動経路等)に置かれた、自動販売機からも流れている。この自動販売機では回復アイテム等を買うことができ、そのそばには回復スポットとしてベンチが用意されている。
つまり、回復スポットには常に音楽がセットになっているということ。
キャラクターだけでなく、プレイヤーの心を一旦落ち着けるスポットとしても作用している。上手な音楽の使い方の一つだ。
ちなみに、集めたミュージックディスクは一部のマップに用意された「ジュークボックス」で流すこともできる。

<バトル>
今回のレビューで核としてお話したいのは、バトルデザインについてだ。
まず難易度については、丁度良いものであった。ノーマルで一周したが、適切で遊びやすい。少しばかり工夫が必要なボスもいるが、物語最序盤で得られるマテリア「みやぶる」で攻略情報が出てくるものが殆どであり、弱点もそれでわかる。情報通りに弱点を上手く突けると楽しく、バーストというシステムとの相性も良い。HPゲージの他にバーストゲージを溜めていくというのは、FF13のブレイクシステムによく似ているが、ブレイクした敵に大きなダメージが入るのは、単純にプレイフィールとして気持ちが良い。
一気にそれぞれのキャラクターの大技を繰り出す、「畳み掛けるぞ」という雰囲気も感じられて楽しい。攻略のしがいとしては薄いが、ちょっとした工夫で気持ちよく倒せる難易度は私にとって丁度良く楽しかった。
しかし、アクションを無駄に取り入れたことに対して、私はどうしても意見したい。

アクションゲームというのは非常に繊細なものである。
コマンドを主体としたRPG(以下コマンドRPG)であれば、プレイヤーはキャラクターの頭脳になるだけで良いが、アクションはそうはいかない。プレイヤー自身がキャラクターの手足となって強敵に立ち向かうのだ。
私がアクションを好む理由はそこにあって、コマンドRPGはどうも戦闘を俯瞰している感覚が強く、没入感が損なわれてしまうと考えている。それに比べてアクションは、実際にフィールドに立ち、敵を眼前に剣を構え、自らの腕と判断で勝利を掴むリアリティがある。

まず問題となるのはカメラワークだ。
敵が離れた時の操作が最悪だ。ボスは離れたところにいるけど、近くにいる雑魚にロックを切り替えたいというときに、遠くと近くの敵がそれぞれ順番にカメラにフォーカスされ、ぐわんぐわんする。アクションを用いたゲームにおいて、このカメラワークは最悪だ。アクションゲームというのは、敵の動きを捉えてこちらが対応することが求められ、このゲームも例外ではない。

またキャラクターを切り替えた際にそのキャラクターが敵の方を向いていないことが度々ある。なんでそんな方向を向いているのか理解し難いし、切り替えた直後に敵をフォーカスして(複数いる場合はさっきまでフォーカスしていたものをまた探して)攻撃を開始しなければならない。これが全体的なテンポを損ねている。
また、敵は拘束を伴う攻撃と、近接攻撃が届かない位置からの攻撃をやたらと繰り出してくる。ここでキャラクター切り替えていろんなキャラクターを使ってねという思惑が読み取れるが、切り替え後のテンポの悪さと噛み合っていないことは明白だ。

また、コマンドRPGにおいて、「絶対に食らう攻撃」があると思う。
基本的にコマンドRPGでは敵の攻撃を、こちらの手腕で躱すということはできない(運とか確率で当たらないことはあるけどね)そのような攻撃が今作にはある。
アクションゲームで「絶対に食らう攻撃」というのは、それが演出や意図的なものでない限り、あってはならない。
言い換えると、「プレイヤーに非のない攻撃」を食らうことは理不尽であるということだ。
敵がある程度の予備動作を伴った上で食らう攻撃と、ノーモーションで何のヒントもなく食らう攻撃では、全く意味が異なる。
前者であれば攻撃を読めず、躱す判断ができなかった自分のせいと納得できるが、後者は「そういうもの」と割り切る他、納得する方法はない。
「プレイヤーに非のない攻撃」を食らうストレスが、このゲームのバトルには常につきまとっている。

また、基本的に動かしていないキャラクターは「こうげき」をしているだけと考えたほうが良い。ここで、ATBゲージの問題が発生する。
現実的な問題として、自ら操作して攻撃しないとなかなかATBゲージが溜まらない。ATBゲージを消費せずに取れる行動は、通常の「こうげき」と「ガード」だけ。魔法やアビリティはもちろん、アイテムすら使うことはできない。ジリ貧になったときに、詰む可能性も出てくるわけだ。
キャラ切り替え→ATBゲージ溜め→アビリティor魔法
というのが一つのルーティンだが、例えば、バースト時に複数キャラの大技を出すため、その前に、他のキャラのATBゲージを溜めなければ、という作業が発生する。
また、近接しか通らないフェーズと、魔法しか通らないフェーズがある場合、それが切り替わったときにまた1からルーティンをやり直さなければならないという問題もある。すると、
ATBゲージ溜め→アビリティor魔法
という流れと
バースゲージ蓄積→バースト→攻撃
という流れが根本的に噛み合わなくなり、バトルの流れをガタつかせている。冒頭で触れた通り、弱点がハッキリしている分、このガタツキが大きくなっているボスも見られる。
キャラをこまめに切り替えてATBゲージを溜めるという手もあるが、そこでカメラワークの悪さが光ってしまう。
操作キャラのATBゲージの蓄積や使用で、他キャラのゲージがもっと溜まればプレイしやすくなるのではないか。マテリアや、エアリスのアビリティでATBゲージが関わるものもあるため、これをタクティクスとして認識すべきだろうが、カメラワークとアクションの悪さがそれを殺してしまっている。

また、コマンドにもアクションが要求されるという重大な問題がある。
敵は予備動作もなしにコマンドRPGのような動きをするくせに、こちらの攻撃にはアクションゲームのような読みが求められる。
こちらがATBゲージをためてアビリティを繰り出しても、敵が移動したりするとそれは虚しく外れてしまう。この部分にアクション性が求められるのは奇妙極まりない。
RTSなどで確率によって攻撃が当たるかどうかドキドキするシステムがあるが、このゲームはそこにスリルを求めて欲しいとは思っていないはずだ。
これは特に、アクションとコマンドの剥離を感じた要素の一つだ。

また、ボスのフェーズ移行も問題だ。一定の体力を削る等の条件を満たすと演出が入り、ボスが強化されたり、アプローチを変えた攻撃をしてくる等のことだ。FF14でいうところの履行だが、これはボス戦に間延びした印象を持たせないため、プレイヤーが一旦落ち着くための施策と思われ、実際それには成功している。
ただ別の問題が発生している。バーストだ。
せっかくバーストさせた直後でも、そこで一定のHPまで削ってしまえば、問答無用のカットシーンに突入し、そのバーストは無駄になってしまう。これはバーストとの相性が極めて悪く、プレイヤーを落胆させる大きな要素だろう。
余談だが、FF14はこの問題を雑魚フェーズやDPSで解決したと考えると天才的だ。

つらつらと問題点を語ってきたが。よほどアクションが好きなゲーマーでなければここまで気にならないと思う。何故なら、このバトルのガタツキを凌駕するほどのすばらしいグラフィックとエフェクトがあるからだ。
やはりここが一番触る部分というのもあって、ここの完成度が高いと第一印象として良いバトルに思えてしまう。クラウドの剣での「こうげき」は、他のアクションと比較しても遜色のない、綺麗なエフェクトとヒットストップによる気持ちよさがある。物語が進むにつれ、「こうげき」のヒット数とアクションが進化するのも良い。もっともプレイヤーは□ボタンを連打しているだけだが。ATBゲージをためるための手段にしておくのは勿体ないほど、気持ちが良い。アビリティもダイナミックなものが用意されていて、魔法等のエフェクトもサウンドを含めて非常に綺麗で爽快だ。パーツだけみると良いものがあるが、それらが整合性をもって実装されていれば、このゲームはもっと良いものになったはずだ。

やはりアクションというのは繊細で膨大な要素が組み合わさって成り立っているもので、それをコマンドRPGと融合させるのは難しい。
アクションに寄り過ぎた結果、アクションとコマンドの双方のレベルが下がってしまったといえる。
FF13は似たようなコマンドバトルシステムだが、オプティマシステムにより戦略は無限大と思えるほどの選択肢があった。
一方でFF15はアクションに大きく寄ったが、シフトブレイクやジャストガード、パリィによってその楽しさを存分に感じさせてくれた。
FF7Rではすばらしいエフェクトとサウンドで、総合的に楽しいものではあったが、中途半端という印象は拭いきれない。

ただ、ゲーム全体を通した「体験」としてみれば素晴らしいものであったことは確かだ。
血の通った仲間たちと街の人々、息遣いを感じるミッドガル、素晴らしいサウンドとグラフィックは、クラウドとアバランチのアドベンチャーを本当の意味で「リアル」に盛り上げてくれている。
オリジナル版ではミッドガル脱出後、一気に自由度が高くなるが、そこがどう描かれるのか今から楽しみで仕方ない。「もっと仲間たちと冒険がしたい」そう思わせてくれる作品を作り上げてくれたことに感謝したい。


最後に、レノ役を演じられた藤原啓治さんが逝去された。
本作だけでなく、クライシスコアやアドベントチルドレンでも、憎めない嫌らしさを、かっこよく、色っぽく演じてくれたことに最大の敬意を感謝を。
本当に。ありがとうございました。

筆者:岡野朔太郎


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