書籍:神道はなぜ教えがないのか

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


神道はなぜ教えがないのか

宗教学者の島田裕巳さんが書かれた「神道はなぜ教えがないのか」を拝読いたしました。

神道の信仰は、生活に染み込んではいるけれども、それ故に普段から意識していないもののようです。

お宮参りや七五三、年始の参拝など、「普通にするよね」と思っている人は現代でも多いでしょう。
住んでいる地域には、数多くの神社があるでしょう。

身の回りに自然と存在するものではありますが、神道について説明出来る人は多くないという感覚があります。

正直、私もよくわかっていません。

書籍「神道はなぜ教えがないのか」では、神道の特徴を他の宗教と比較して説明しています。

「確かに」と思わされる内容が多く、非常に興味深い内容でした。

その学びのいくつかを記載いたします。

宗教の分類

世界の宗教を分類する際、一般的にはまず以下の二つに大分されます。

  • 世界宗教

  • 民族宗教

世界宗教は、その教えが民族の枠を超えている宗教を指します。
具体的には、仏教、キリスト教、イスラム教が代表と言えます。

民族宗教は、一つの民族における固有の宗教を指します。
ユダヤ教やヒンドゥー教も民族宗教と言えるでしょう。

神道は、民族宗教に当たります。
そして、日本の島国の外には広まっていかない、土地属性の強いの宗教でもあります。
(ハワイやブラジルなどの日系移民が多く国で神社が創建されることはあります)

宗教の変容

歴史上、多くの国においては、古代からの伝統的な信仰が世界宗教に置き換わることが多いと言えます。
そのような中で、古代から受け継がれた信仰を、現代でも引き継いでいる国や民族は、非常に珍しいと言えます。

アメリカ大陸はキリスト教国が多いですが、これは大航海時代による征服や移民の影響が理由とされます。

古代ヨーロッパのキリスト教は、逆に、ゲルマン民族の影響をうけてゲルマン化しています。
クリスマスの文化は、キリスト教発祥の中東地域にはありませんでした。
それがヨーロッパの地域に広まった際に、ゲルマン民族の民族宗教を取り込んでいき、クリスマスの文化もその中から生まれたと言われています。

神道も、外来の仏教・儒教・道教の影響を多分に受けています。
しかしながら、神道は「神道」という名前のままに残っています。

「ない」宗教

教義

神道では、教義といえるものがほとんど発達していません。

世界宗教は、聖書、コーラン、仏典などをもととした教義の体系を持ちます。
これらはそれぞれの宗教において非常に重要視されており、教徒はそれらの存在を強く認識しています。

神道には教義がまったく存在しないわけではないのですが、仏教や儒教などの思想を借りてきた概念的なものになっています。
一般の人が実践するようなものにはなっていません。

救い

神道では、救いという概念がほとんど無いと言えます。

神社でお祈りをすることはありますが、あくまでも祈願するだけです。
穢れを祓うという概念もありますが、あくまでもお祓いをするまでにとどまります。

キリスト教やイスラム教では、死と終末、そして救いの概念が明確にあります。

そのような強烈な救いの概念は、神道にはありません。

開祖

神道には、明確な開祖がありません。

世界宗教には、キリスト、ムハンマド、ブッダといった開祖がいます。

開祖だけでなく、重要な預言者や宗教家も登場しています。
キリスト教やイスラム教においては、アブラハムやモーセといった有名人がいます。
仏教においても、各宗派を作った有名人が数多くいます。

儒教においては孔子、道教においては老子や壮子をはじめ、様々な開祖や宗教家が誕生しています。

神社の中にも何もない

神社の多くは、一般の参拝者が入ることができる拝殿があり、その奥には足を踏み入れることができない本殿があります。

この本殿において、直接、神の姿を見ることはできません。
神の姿をかたどった神像のようなものもありません。

あるのは、神が宿っているとされる依代のみです。
例えば鏡や神札がその依代となりますが、それはあくまでも依代であり、神そのものではありません。

「ある」宗教との共存

これらを踏まえると、神道は「ない」ことが特徴といえる宗教だとも言えます。

一方、古代日本には、中国から仏教が伝来してきます。

仏教は、明確に「ある」宗教です。
教祖、教義、経典、死生観、仏具、仏像などがあり、それらが体系化されています。

仏教は、日本が国を護るために積極的に活用されてきました。

ここで興味深いことは、世界宗教が他の土着の信仰に取って代わったように、仏教が神道に置き換わることはなかったということです。

神道は「ない」宗教のため、仏教の「ある」とコンフリクトしなかったのではないか、と言われています。


「神道はなぜ教えがないのか」では、この「ない」宗教という軸をもとに、様々な内容が記載されています。

神道は、普段の生活の中に溶け込んでいるが、よくわかっていない宗教だという実感があります。

その神道の特徴が何か、他の宗教と比較して理解を深めさせてくれるのが「神道はなぜ教えがないのか」という書籍だと感じました。

神道には、神社と神話があるため、それらを学ぶのも面白いと思います。
それに加え、何が「ない」のかに着目すると、日本人の特性やルーツについての解像度が上がるとも感じました。

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