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オランダへいつか

再び書くときのための言葉は、机の上から散らばって消えかかっていた。

彼の国で私が愛した、芝生の上を跳ねるスプリンクラーの粒、子どもを乗せるかご付きの自転車、大きな塊のチーズの並んだ棚は、今もリアルに簡単に思い起こせる。

義理のおばあちゃんの家にあった、陶器でできたゆで卵置き、オレンジ色に染まるサッカーの試合の晩、丸テーブルを囲んだ土曜日、Leukとmaarが、インドネシアン・チャイニーズの甘酸っぱい味と一緒になって響く。

ユカタを着て私は涼しい緑の中を歩いた。猫を抱いて(元)夫と一緒に歩いた。道が二股に別れて私は右へ進み、彼は猫を抱きかかえて左側へ歩いて行った。

彼のお父さんは、涙で濡れためがね越しからでも優しく強くそこに立ってくれていた。

願い事が簡単に叶った後、いつの間にか、そして必然的に敗れて遠くに消える。

オランダはゆっくり午後になろうとしている。もう秋の雨が降り始めるとき。

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