見出し画像

マインドの師匠

以前入院していた患者さんで、こんな風に生きたいと思った人がいた。

もよおしたときにうんこちゃんと連呼していたのでそのまま愛称とする。

うんこちゃんは足の血管がつまって入院してきて、薬でも治らないので血管の手術することになった。

手術しても足の状態はは良くならず、他の病棟に移動して足を切断することになる。

入院してから移動するまで、1カ月以上は入院していたうんこちゃん。入院が長くなるとともに忘れっぽさが際立ち、幻覚が見えることもしばしば。それでも数本残っている歯を見せながら笑顔を絶やさないうんこちゃん。笑顔の理由を聞いたら、辛いことがあっても笑ってたら楽しいでしょ、と不意に深い話をしてくれた。

寂しい気持ちもありつつ、他の病棟に見送る。

それからしばらく、手術を終え落ち着いたうんこちゃんが戻ってきた。

まるで初めての場所に来たような表情をするうんこちゃん。

私達がおかえりと声をかけ、一瞬きょとんとするがすぐにあの笑顔。思い出した様子はないが、周りの空気に一瞬で合わせる順応力の高さ。これぞ生きる力だ。

金銭的な理由で、介護力のない自宅に退院していったうんこちゃん。でもきっと、満面の笑みを浮かべながら楽しく暮らしているだろう。

同じような人生を歩みたいとは思わないが、心意気は是非とも手本にしたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?