見出し画像

結び直していく関係性。フォトグラファー 櫻井 充インタビュー

4/2(金)〜11(日)にアーツ千代田 3331 B104にて開催の
櫻井 充写真展 「Fe」

昨年、自身初の個展を開催したが、コロナ禍で残念ながら多くの人の目に触れることは叶わなかった。
櫻井は今回の個展を、リベンジ個展と位置付けている。

どのような心持ちで、今回の個展に挑むのか。お話を伺った。

取材・文 :大島 有貴
写真:唐 瑞鸿 (MSPG Studio)

全ての人たちと、関係を結び直していきたい。

──櫻井さんは、今回「鉄」をテーマにした写真展を開催するとのことですが、鉄をテーマにしたきっかけは、何かあるのですか。

 子供の頃から、鉄のように強くて、重くて、固いものに憧れがありました。自分自身は、弱くて、自信のない人間だと思っているので、強さの象徴である鉄に惹かれた。その気持ちを、子供の頃から失わずに作り続けてしまいました。笑。同じようにモノを作る人でも、もっと洗練されたものへと、対象を変えていく方もいると思うのです。ですが、自分は直接的に強さを感じる鉄を撮り続けてしまった。

修正後インタビュー0042

──今回の個展は、どのような方に見にきて欲しいですか。

 特に、今までに出会ったことのない人たちに見て欲しいと思います。ここ1年で、いろいろなものを見たり、考えたりする中で「過去はどうでも良いな」と思うようになったんです。新たな出会いだけではなく、過去に会った人たちとも、また新しく関係性を結んで行きたいな、と。

──新しく関係を結んでいきたい…

 過去出会った人たちと、昔話に花を咲かせるのも良いんですけど、それよりも、これから一緒に何をしようか、何をしていきたいか。そういう話がしたいと思うようになりました。作家活動に限らず、日々のクライアントワークで関わっている方々に対しても、そう思います。

──ここ一年で、そのように考えるようになったきっかけは、何かあるのですか。

 やはり、コロナ禍の状況で昨年初めての個展をやったということが大きいかもしれません。自分にとって、初めての試みでした。時間も労力もたくさんかけて、形にしたものが少し残念な結果となってしまった。その中で、自分がどうありたいかをより深く考えるようになりました。

画像2

昨年の展示風景。来場者はかなり少なかったが、自分の作品について、反応をもらえるという初めての経験は、とても嬉しかったとのこと。


視点を変えることで、
写真と社会との関係性が姿を現す。

──櫻井さんは、主に広告の仕事を中心に活動していますが、作家活動と広告の仕事では、どのような捉え方の違いがありますか。

 仕事として広告写真をやっていると、写真が持つ社会への影響力を忘れてしまう。街中で、自分が撮影した広告写真を見かけても「自分の写真、影響力あるぜ」とは思わない。それよりも、職能的な観点で見てしまうんですよね。このライティングがかっこいいなとか、ちょっと粗があるなとか…。そういうことが気になってしまって、本質に気がつかないというのは、職業病でもあり、自分に足りない視点だと思っています。

 それに対して、"作品として"の写真を見る時は、もう少し俯瞰して見ることができます。特に、絵画などの写真ではないアートを見る時は、それを強く感じますね。純粋に自分が受け取り手になれるからだと思います。自分は、広告の仕事が好きで、そこを軸にしていきたいという気持ちは変わりません。ですが、いつもと違った視点を持ち続けるためにも、作家としての活動は続けていきたいです。定期的に個展をやり続けることで、様々な人と出会い、関係性を作っていくことで、自分も成長できるのではないかと思います。

インタビュー0060


写真が持つ力で、
より良い未来を残していきたい。

──櫻井さんが、これからやっていきたいことは、ありますか。

 写真の世界に入って、もうすぐ20年経つのですが、写真って、自分が思っている以上に、人の心や意識を動かすことができると最近、改めて気付きました。
これまでは、一心不乱に良い写真を追求することに集中していた気がします。やっと、写真と社会との関係性について考えることができるようになった。遅いですよね。笑。でも、これが自分のペースなんだと思います。これから、自分に何ができるか考えていきたいです。

 4年前に、一人目の娘が産まれてから「子供たちに、より良い未来を残していきたい」と強く思うようになりました。自分に何ができるだろうかと考えた時に、やっぱり写真を撮ることしかできないな、と。広告の仕事をしている身でこんなことを言うのも、矛盾しているのかもしれませんが、消費し続けることで経済が潤うというシステムは、地球規模で考えたら不自然ですよね。本来ならば循環のシステムがないといけない。けれども、それがすっぽりと抜け落ちている。

 最近、サステナブルを代表として、そういった価値観が世の中で叫ばれるようになってきました。まずは、そういった文脈に沿った仕事を多く受けることや、活動をしている個人や団体に、写真の力を通して、応援するようなことがしていきたいです。今回の個展は、写真を通して、社会との関係性を結び直していく、ひとつの試みでもあると思っています。ここから、フォトグラファーとしての新たな自分が始まっていくと、感じています。

画像4


櫻井さんが20年、写真と向き合い続けて気づいた
「社会と写真の関係性の結び方」の大切さ。

それが、今回の個展を機に始まっていきます。
様々な方の「声」がその始まりを作る。
今回の個展で、その声をたくさんいただきたいと櫻井さんは考えています。ご来場をお待ちしております。

櫻井 充写真展「Fe」の情報はこちら
https://www.3331.jp/schedule/005333.html

櫻井さんの作品が見れるweb siteはこちら
http://www.mspg.xyz/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?