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とりとめのない日記4

9月●日 くもり
「どんぐりマッサージ」

先日のこと。2日間休みが続き、起きてから寝るまで読書やネットサーフィンを思う存分楽しんだ。
身体のあちこちが、凝り固まっていて痛い。
明日からの仕事に支障が出ないよう、マッサージに行くことにした。

いつものマッサージ店へ行くと、閉店まで予約でいっぱいだと言う。
とても腕が良く、1時間で3000円なので仕方がない。他を当たることにした。

適当に散歩がてら歩く、新しいカフェが出来ていたり、雑貨屋ができていたり、野良猫が塀から見下ろしていたり、いつの間にか蝉の声も少なくなった。

住宅街に入り、建売の同じような家と家の間に、細長い青い二階建ての建物が見えた。

『どんぐりマッサージ』予約優先

素朴な木の看板がかかった、マッサージ店を見つけた。

予約優先の文字に心配したが、中には丁度会計が終わった客が「スッキリしたよ。また頼むね。」と出て行く所だった。

程なくしてマッサージ師が、私を部屋に呼んだ。

簡素な紺色のマッサージ台に横たわると、「じゃうつ伏せね」と言われ、うつ伏せに寝た。
頭にタオルをかけられ、「うちのマッサージは、変わっていてね。指圧したりはしないんだ。」
首から腰にかけてスポッスポッスポッと、体に吸盤を付けられているような感覚がする。

吸盤の付いているであろう場所が、引っ張られるように熱さを帯びた。

私は急激に眠くなり、そのまま寝てしまった。

「終わりましたよ。いかがですか?」

「とてもスッキリしました。寝てしまって申し訳ないです。ありがとうございました。」時計を見ると30分経っていた。
1日中眠っても、こんなに身体が軽くなった事はない。当たりの店を見つけてしまった。
私は思わぬラッキーに、にこにこと会計を待った。

会計の時、「是非次はスペシャルコースをお勧めします。」と言われた。
「どこが違うんですか?」と聞くと、『どんぐり虫の幼虫を、血管に注射で入れるんですよ』『先程のマッサージでは成虫で行いましたが、スペシャルコースではさらに身体の隅々までどんぐり虫が行き渡るので効果の保ちも違いますよ』

「そうですか」としか返せなかった。

ふと自分の腕に目をやると、吸盤の跡の真ん中に小さく赤い点があった。
それに気付いたマッサージ師が「その小さい穴から、どんぐり虫が舌を入れてコリをほぐします。心配しなくても明日には赤みが消えますよ。』『今日は水分をよく摂ってくださいね。色々吸われていますから。』

領収書と共に、どんぐりマッサージについての詳細が載った紙を渡された。

その後どうやって家に帰ったか記憶が無いが、サッとシャワーを浴びて寝たようだった。

私にしては珍しく寝つきも良く、目覚めも良い日が続いた。

今日改めてどんぐりマッサージの事が気になり、ネットで調べると意外にも高評価レビューが並んでいた。

9月●日 くもりのち晴れ
「立ち位置」

最近年齢について考えている。
今年で3●歳になる。
この30代と言うのは、なってみると実に微妙な立ち位置だと思う。
本当の『若者』からすれば、私は若いには分類されず、かと言って中高年からは『若者』としてカテゴライズされる。
そして、決して他者に『若者』面はしないものの、内心ではまだまだ『中年』ではなく『若者』でありたい。

この何物にもなれない『立ち位置』に悩んでいる。

子どもの相手をする時には『おじさん』と自称するのを躊躇ながら、焼き肉屋で食べ放題なぞ無謀な事は出来ない。
飲み会では、年配者から『若いんだからどんどん食べろ』と酒やご飯を勧められ、流行りに疎く後輩から、わからない単語だらけの『推し活』の話を、頷きと微笑みでやり過ごしている。

『何物』でもないのは、自分を何と自称して良いのかわからなくて困る。

でもまぁ、明日も『私』として生きるほかあるまい。


とりとめのない日記1
https://note.com/saku_isamura/n/nbdcb5ca268d7

とりとめのない日記2
https://note.com/saku_isamura/n/n25856589d24a

とりとめのない日記3
https://note.com/saku_isamura/n/nb553d262b987

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