見出し画像

[創作]”ミラより”について

久しぶりにちょっと長めの文を書きます。



[はじめに] -読み飛ばしていい話-

最近、全く日記を書かなくなりました。ずっと読んでいた人の日記も1ヶ月おきくらいにしか読まなくなって、「読んだよ」の合図だったハートもなんとなく申し訳ない気がして押さなくなってしまいました。

最近はけっこう色んなところで無気力なようで頑張っていたり、頑張ってるようでサボってたり、自分でも自分が何をして生きているのかよく分かっていません。
学生の指導をしてみたり、論文を読んでみたり、データ解析をしてみたり、いろんな分野の知識を齧ってみたり、カメラを持ち出して写真を撮ってみたり、実名のTwitterアカウントを更新してみたり、そんな感じの日々をぼんやり送っています。もう頻繁に連絡を取れる心の距離の近い友達がいないことをたまに思い出して寂しくなったり。


最近活動的なのは「物語創作」?です。

というのも、とあるYouTubeチャンネルで始まったラジオ企画が楽しくて、そこに出すお便りを考えたりしてます。

↓ solaさんのファクションコズミックラジオ

「ファクション」とは「現実と創作を織り交ぜたもの」、フィクションとノンフィクションの間の世界観のことです。
ラジオという媒体のエモさに宇宙とファンタジーが掛け合わされ、solaさんのじゅんわり聴き心地のいい声との相乗効果で非常に満足度が高いです。

第0回として公開されている音源は以前リリースされたCDのおまけ企画だったのですが、その後視聴者さんからお便りを集めて本当にラジオっぽくお話をしたりするようになりました。


僕は現在、このsolaさんのラジオにお便りを出すことに一定の生きがいを感じています。ラジオ企画だけでなく世界観の拡大のために新しいnoteアカウントを立ててみたり。↓

ファクションラジオには何通かお便りを投稿しています。
やっぱり自分が考えた物語ってすごく可愛く見えちゃうんですよね。「お便り」という形式になる以上、本質的に物語は制限を受けてしまうことを感じていて、そのせいもあって意図した物語の全容が伝わることはありません
そういう全容のボカされたところもファクションラジオのいいところだとは思うのですが、自分の物語への愛着と伝わり具合の間の温度差がなんだか寂しくて、僕がどう考えてどんな物語があってどうお便りに変えたのかの解説をしたい気持ちが膨れ上がっています。
もちろんそのために立てた新しいnoteアカウントの方に解説を書くこともできるのかな〜とは思ったんですが、そっちのnoteの世界観をそこまで壊したくないなぁと思いまして。ラジオの視聴者さんの目につく可能性があるのもありますし。
物語が語り尽くされないままの状態をできるだけ保ちつつ語りたい欲を解消するために、もうこっちのアカウントに書いちゃおと思って記事を書き始めました。
そういうわけで、誰に読まれなくても[創作]というタイトルをつけてここに僕の考えた物語を紹介していこうと思います。


[結局この記事は何?]

まとめると
目的:解説欲の解消
対象:誰に向けてでもない
のようになっています。誰に読まれなくてもいいから書き残しておきたいことが人間ひとつふたつはあるものです。
一応読み手を想定したような語り口になっているところもあるかもしれませんが、自己満の限りですしこれ読んで背景となるラジオを聴く人もそういないと思うので、文章構成のために最低限の集中力だけを動員して書く記事になっています。リラックスして書きますね。


[本文]

解説を始めます。

本記事はファクションラジオ第一回のお便り「ミラより」についてです。

コメントにタイムスタンプも残しているので、よければ動画の方も参照してください。


[説明 1 : ファクションラジオについて]

お便りの前に土台となるファクションラジオについて説明をしておきます。

ファクションラジオとは?

インターネットで声の活動をしている「sola」さん(Twitter @sola_she)が始めた、「宇宙のいろんな星から銀河ステーションに送られてくるお便りをsolaが読む」という設定のラジオ番組です。

「ファクション」とは「事実と虚構を織り混ぜた物語」を指す言葉で、歴史物なんかの多くはこのジャンルにあたります。多分。
本ラジオはその設定からも分かるように、基本的には設定の上で好きにお便りを送って読まれて雑談して楽しもう!みたいなゆるっとした空気感で行われています。


宇宙のいろんなところからお便りが送られてくる

solaさんはラジオの日になると宇宙タクシーで銀河ハイウェイを通って銀河ステーションに向かいます。そこには地球を含めた宇宙のいろんなところからお便りが届いており、いろんな星の人たちのお話が聞ける番組になっています。

………という設定なので、基本的にはsolaさんのことを知っている人が宇宙的な何者かになりきったり自身の体験を宇宙っぽくアレンジしたりしたお便りを書いていることでしょうね。

このラジオ自体には詳細な設定は無く、銀河ステーションが一体何なのか〜みたいなことは決まっていません。ここは考察の余地にはなりますが、深入りすると世界観の崩壊を起こす可能性があるので気をつけなければいけません。


[説明 2 : "ミラより"の説明]


お便りの解説に入ります。

はじめにお便りの原文を書いておきますね。

ラジオネーム:ミラより

こんばんは、私は旅の者です。こないだ寄った星でこのラジオを聴きました。ラジオの言葉はまだ分からなかったですけど、旅をしながら言葉を勉強しました。ラジオが復活すると聞いて居ても立っても居られずに、頑張ってお便りを書いています。言葉は合っていますか?
あのときのラジオが私の旅の行く先を示しました。ラジオを聴いてから見に行った流星雨はとても綺麗でした。このラジオが届かない宇宙にも綺麗なものがたくさんあります。いつかこの宇宙がもっと行き交いやすくなって、たくさんの人が綺麗な世界を見に行けますように。
そろそろ私は次の旅に行きます。またいつか。今度は私の故郷の星の話をしますね。


”ミラより”はミラの星の近傍からやってきた旅人です。

彼は銀河ステーション近傍のラジオ受信可能な区域に偶然訪れ、ラジオ第0回を聴いたという設定です。

特に、”ミラより”のお便りに出ている「流星雨」とは第0回の”らあら”さん(表記不明)のお便りに上がった夜空から降ってくる流星の雨のことです。流星雨、詳しくは不明なんですけどね。現実にも非常に多い流星の群のことをこう呼びますが、”らあら”さんの言う流星雨との関わりは不明です。

しかしお便りを聞いてみるとすごく素敵なんですよね。
とても綺麗だなぁと感動しました。天才だと思います。
第0回のお便りはsolaさんの周りの人にお願いしたらしいのですが、一体どうしてこんな素敵なお便りが書けるんでしょう。
この感動から”ミラより”のお便りは生まれました。


”ミラより”の話に戻りますね。

ミラとは「くじら座οオミクロン星」にあたる恒星です。
ミラは天体の中でもちょっと面白い属性を持っていて、特にミラの主星*1であるミラAは「漸近巨星分枝星」であることが面白いです。
*1: ミラは連星系(複数の星が一緒に回ってるやつ)で、連星の中でもメインの星を主星、それ以外を伴星といいます。主星のことを○○Aと呼びます。(この注釈はnoteのルビ機能を変に使ってるのでブラウザによってはとても読みづらいかと思います。すみません。)

全然何言ってるか分かんないや。ここに詳しい説明を書く気はないので適当にWikipediaのリンクを付けておきます。とてもざっくり説明すると、

漸近巨星分枝星とは「もうすぐ生涯を終える恒星」のことです。

質量がそれほど大きくないために熱量と圧力が足りず核融合が起こらない星では、外層のガスが流出を続け、残りカスが輝くだけの白色矮星へと進化します。恒星の進化はとてもダイナミックで、勉強するとなかなか楽しいものでした。


[アイデア1:終わる星]

さて、”ミラより”のアイデアとなったのはこの「もうすぐ生涯を終える」という言葉の持つ魅力でした。

solaさんから「お便り募集!」の号が出たとき、はじめに考えたのが

旅人が故郷を思っている。故郷はもう消えているのに。
……そういうの良いじゃん。
なんて外道みたいな哀しい発想でした。哀しい物語が好きなんです。

———今度は私の故郷の星の話をしますね。

故郷「ミラ」が終わる星だと知ったらどんな気持ちになるんだろう!と胸を高鳴らせて書いた結びの言葉、我ながら好きです。

しかし実際のところ、漸近巨星分枝星が質量放出しきって白色矮星になってさらにその光を失うまでにはすっごーーーーーく長い時間がかかって、計算によると現在の宇宙の年齢よりもずっと大きいようです。
それにミラは地球からせいぜい300光年の距離にあるので、健在の故郷から旅立った旅人が知らぬ間に故郷が消えていた……なんてことが起こるのはちょっと難しそうですね。
これはファクションラジオのために色んな勉強をしている中で後から知った事実でした。参っちゃいますね。宇宙デカすぎ。すごい。
もしかしたら漸近巨星分枝の後期に進むにつれて起こる質量放出を間近で浴びてしまえば、そこに既に定着しているとはいえある程度の文明は消えてしまうんじゃないかな〜とか想像してます。数万年程度ならエネルギー放射も一定の基準内に収まる領域もあったりしないかな。ここから先は現在の勉強量だと十分に論理的な物語を形成することができません。宇宙SFって難しい。


[アイデア2:言語の違い]


”ミラより”の物語は上の「終わる星」のアイデアが背骨となっていますが、これに血肉をつけるためのもう一つのアイデアが「言語の違い」でした。

「終わる星」のアイデアが実はあんま意味ないことが判明しても、言語の違いによって旅人としての現実感を付加できていたのは良かったことですね。


ラジオ第0回を初めて聴いた時、solaさんの声の良さやお便りの素敵さをしみじみ感じると共に、
こんなに広い宇宙の色んなところから集まるお便りがどうして日本語なのだろう
という疑問が浮かんできました。

もしかしたら宇宙中のあらゆる言語に対応する翻訳機があるのかもしれませんね。実際に「翻訳装置」に言及するお便りもありました(ラジオ第2回の”アンマルケ”さん)。
もしかしたら銀河ステーションが言語の管理をしてるんじゃないかな、と考えたこともあったのですが、これはしばらく温めたのちにラジオ第3回αの”Toy-X”へと昇華しています。そのうち”Toy-X”についても書くつもりです。


”ミラより”ではそういう翻訳機のことは考えず、お便りにも表れているように彼自身の努力によって日本語の文章になっています。
お便りを読む番組として成立するために、内容の意味が伝わる範囲でかつ日本語ネイティブではなさそうなほんのり違和感のある日本語を意識しました。
そういえばラジオネームにちょっと違和感があるのもこの設定からです。

———こないだ寄った星でこのラジオを聴きました。ラジオの言葉はまだ分からなかったですけど、旅をしながら言葉を勉強しました。

彼はラジオの言語はさっぱり分からなかったものの、
「こうして銀河中に届く優しく穏やかなラジオがあるのか」
と心を打たれ、すぐにファンになったのでした。

言葉がわからなくても何かが伝わるって、なんか良いなと思いませんか。僕はよくわかりませんが。



[まとめ]


ここまで、ファクションラジオ第1回に投稿されたお便り”ミラより”についての解説を書いてきました。

まとめると「ミラという星がもうすぐ終わる星である」ということと「外の宇宙の人は当然私たちと言語が違うだろう」ということをアイデアにして、故郷から旅を続けている旅人が偶然立ち寄ったお話にしたのでした。
また今度彼の話が聞ける日が楽しみですね。


この”ミラより”は、僕が書いたお便りの中でも背景がシンプルで、二日くらいでパッと投稿することができました。

”砂の星”はこれに比べてたくさん細かな設定を継ぎ足し継ぎ足ししておっきな世界観を構築しちゃいました。本記事が前振りとか含めてだいたい5000字だったのですが、”砂の星”に関して同じように解説するとなるとおそらくこの10倍には収まらないと思います。”砂の星”については新しい方のアカウントで小刻みに書いてもいいかもね。



久しぶりに気を張らずに文章を書いて楽しかった。また日記とか書こっかな。原付旅の記録も早く書き上げたいな。またね。


おやすみ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?