キツネの海
生まれた歌たちに付随する物語。
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生家の近くにはお稲荷さんがありました。映画「となりのトトロ」に出てくるような、いや、あれよりも質素で薄暗い佇まいは、子供心に不気味さがありました。大晦日近く、底冷えする真冬の真夜中、お稲荷さんの階段の下辺りでキツネが「ギャン、ギャン」と何かに向かって吠えていることがありました。
そんな山深い場所でも、ツバメはやってきて、毎年子育てをしていきました。ツバメは何千キロも、海を越えてくるのだと聞いたことがありました。森の奥には、動物たちの集会所のようなところがあると信じていた私は、ツバメが山の動物たちに、海の話をする様子を思い浮かべていました。
いつしか海に憧れを抱いたキツネが海に向かって走り出す様子を歌にしました。街の暮らしに憧れて、故郷を飛び出した私自身の姿にも重ねました。
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人生は憧れを抱くこと。
会いにいくこと。
渡ること。
越えること。
五感で感じること。
小さな自分を知ること。
大地と海のぬくもりを知ること。
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かつて、故郷に背を向けた時代がありました。
狭く閉ざされた世界だと思っていた故郷でした。
今は、その故郷へと心が向かうのです。
お父さん
お母さん
ありがとう、と同じ思いで
私の故郷へ
ありがとう
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