渓谷とASAKO IWAYANAGI SALON DE THE
十一月某日。等々力駅の近くにあるASAKO IWAYANAGI SALON DE THE(アサコイヤワヤナギ サロン ド テ)に友人と行ってきた。
私の方が少しだけ早く到着したので、お店の中で待つことになった。てっきり線路沿いにあるお店に案内されると思ったら、住宅地の方にある階段へ向かうよう案内される。しかし、私が入ろうとしていたのは保育園(お休み中)であることに気づき、慌ててスタート地点に戻った。
案内のおじさまに「あ、ごめんもっと手前の階段、ほっそいの」と言われ辺りを見回すと、建物と建物の間にひっそりと森の小径の風情が漂う階段があった。なるほど! そういう感じか!(私、テンションが上がる)
モノトーンで統一された店内に入るとと、まずショーケースが目に入る。ケーキ、タルト、キッシュ、サンドイッチがまるで宝石やレティキュールのように並べられており、食欲と好奇心がぐんとあがる。(更にテンションが上がる)
特に私のときめきを刺激したのはキッシュであった。サツマイモやカボチャがぎっしりと詰まって、表面にはかりかりチーズ、なによりもその分厚さに心が惹かれた。迷うことなくセレクトランチのキッシュコースを注文した。前菜付きのキッシュと本日のスープ、デザートにお好きなケーキを選ぶコースである。盛りだくさんだ。前日に私は「そんなに食べられないかもしれないから、ケーキと飲み物だけにしよう」と思っていた。我が意志は豆腐なみに崩れやすい。
友人もキッシュを注文し、二人そろってケーキを選びに席を立つ。ショーケースに並んだ色とりどりのケーキの前で「どれにしようかな」と悩む時間は至福であった。素晴らしい出で立ちのケーキの中から、私はチーズケーキを、友人はタルトタタンを選びいそいそと席に戻る。すぐに季節のスープが運ばれてきた。幸せ過ぎる。
私は冬瓜が大好きでよく食べるのだが、ポタージュは初めてだ。冬瓜とポタージュが結びつかないまま匙ですくって一口啜る。
お、い、し、い! まろやかで優しい味が口いっぱいに広がる。寒さと乾燥でしおしおになっていた身体に活力が沸いてくる。
前菜もたっぷり、キッシュもぎっちり。こんなに幸せで良いのでしょうか……。思った以上にカリカリチーズにガッツがあり、ナイフで1口サイズに切ることができなかった。おそらく私の技量に問題があるのだろう。ナイフを入れるたびにカボチャやサツマイモがころんころんと飛び出てしまうのだ。逃げないで、秋の味覚!
30秒迷ったあと、私は友人に断りを入れてからフォークのみでがつがつ食べることにした。30代の目標のひとつに「MIU404の桔梗隊長のように美しく物を食べるようになる」があるのだが、道のりは遠い。ホテルで美味しく食事を頂きながらテーブルマナーを学べる教室があるらしいので、来年挑戦してみよう。
はい来ました二層の半生チーズケーキ! パールクラッカンののっているクリームがお城の塔みたい!
ビスケットの硬さ、クリームチーズのやわさ、ベイクドチーズクリームのこってりが、一気に味わえる豪華さ! あともう一つクリームが重なっていたのだが、なんというのか分からなくて後で調べたらサワークリームチーズですって! 美味しいわけだよ! もぐもぐ。
猛然と食べている私とはうらはらに、友人はひとくちずつシェアしようという心の余裕と優しさがあった。なんて素晴らしい気遣いだろう……! 食べることに夢中になっていた自分が恥ずかしい。心をほこほこさせながらフォークを伸ばす。ふがふが。
友人の選んだタルトタタンは、黄金のタタンの存在感がすごかった。形はシンプルだけれど、りんごの果肉の重厚感さ、しっかり焼き上げた丁寧さが伝わってきた。食べ比べした時、芳醇なりんごの薫りがぶわっと鼻腔にひろがって大変美味であった。幸せ過ぎて怖い。お茶もコーヒーも、趣深い茶器に注がれて供される。
ここは楽園か……。あえて惜しいところをあげるのであれば80分という時間制限であろうか。90分は欲しいと感じたけれど、結構混み合っているので、難しいのであろう。
終わった後は腹ごなしに等々力渓谷を散策! ……とはならなかった。前日の風雨で倒木とのこと。あわわ。
暑くなったり寒くなったり気圧が暴れ馬のように乱れたり忙しないので、気分転換を多めに取り入れながら乗り越えていきたい。
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