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うどん1玉とアクエリアス

「うどん1玉とアクエリアス」


先日、どうにもこうにもお腹の調子が悪く。
連勤真っ只中のわたしは病院に行く時間がなかったのと
それほど大ごとでもなかったので、とりあえず整腸剤でも買っとくか、と町のドラッグストアに立ち寄ったんですよ。

都会の同じドラッグストアと比べたら棚数も商品数も少なく
入り口付近にはヒンヤリシリーズなんかよりも
農業関連の虫駆除系のものの方が優先的に置かれているようなところ。
しかも蚊取り線香なんて生ぬるいものではなく。

そこで数少ない整腸剤のコーナーを眺めていたら、

後ろから

「なんだ、腹が痛いんか?」

と声をかけられる。

この人は、、、レジのおばちゃんだ。
ドラッグストアには必ず薬剤師というか、お薬について説明できる人がいるのだけれど、

この人はパートの普通のおばちゃんだ。よく行くから知っている。ちょっと強めのおばちゃんだ。

「あ、、、、はい、そうなんですよ〜、ちょっと昨日くらいからお腹ゆるくて、冷えたのかなあ〜、
あ、でもとりあえずこれ買いますかねえ〜ありがとうございますハハハ、、」

なんてヘラヘラ返したりして、また棚に目線を戻して眺めていると
おばちゃんもずっと後ろにいて、一緒に目線を低くして眺めている。

「おばちゃんが決めてあげたいところだけどなあ、私薬剤師とかじゃないけん下手なこと言えんのだがんな〜!
今!薬剤師の人呼ぶけん待っとって!」

そういっておばちゃんが店内放送で「タラタタン♫お薬コーナーで、お客様がお待ちです」
と呼び出しを流す。

「今な!メガネの兄ちゃんが来るから!そしたらいい薬選んでくれるけん!」

(あああ〜〜
いいのに〜〜〜〜、、
そんなそんな、、なんか申し訳ない大丈夫なのに〜!)

私は自分のことで人に世話をかけたり、手を煩わせることに非常に恐縮するタイプなので
こういう時って冷や汗がとまらない。

私が、この後来るであろう某メガネの兄ちゃんに
どんな種類の「すいません」を言おうかななんて考えながら待っていたのだが、

待てど暮らせどその兄ちゃんは現れない。

「あれ?おかしいな、居るんだけどな〜」

おばちゃんが店内放送を連打
「タラタタン♫お薬コーナーにて、お客様がおまtお薬コーナーにて、お客様がおmお客様がお待ちです」

どんだけ待っとんや、もうその時間使って病院行けというレベルで、機械のお姉さんの優しい声が連投される。

ヒイイ、、、お願いもうなんか正露丸とか買いますから帰らせてくれ、、

メガネの兄ちゃんが来ないうちに、レジ打ちの手が空いた別のパートのおばちゃん達までも、こちらにやってくる。

「誰も来んねぇ〜、お客様お腹のお薬ですか〜」

もはやメガネの兄ちゃんなど忘れさられたかのように、
私を囲んでおばちゃん同士の井戸端会議が始まる。

「この薬は〜、、」
「こんなもんはほとんど気休め」
「これよりこれの方が安い」

あああ、、メガネの兄ちゃん早くきてくれ、もしくはお客さん一気に10人くらいレジに並んで大混雑してくれ、

なんて小さくなっていた私に

井戸端会議から話が流れて私の方を向き

「お客さん、うどんとかリンゴとか、消化のいいもん食べるだよ。
あとは、、とにかく水分をよく取ること!!!
おかゆさんにして食べたりとかしてね。」

「そうそう」

「あ、あと油もんは食べたらいけんよ。それとね、、」

あ、あれっ??
なんかこれ、、
お母さん??お母さんに電話で「アンタちゃんとまともなもん食べてるの?」のノリから始まる小さな説教受けてる??

「とにかく食欲なくてもうどん!うどんとか食べて水飲んでね!それが一番です!」

「あっはい!わかりました!そうですよね、、ありがとうございます!!!」

「お大事にね!!」

「はい!!!!!!!」

そして
私はカゴにうどん1玉とアクエリアス2本を買って帰った。

家に帰ってうどん1玉とアクエリアスを冷蔵庫に入れ、
「あ〜よかったよかった」
と一息ついた所で

私の中のノブ(千鳥)が
「いや薬わい!!!!!!」

と叫んだ。

気づいたらもうお腹が痛いのもどっかいって、

ただただ
薬買うはずだった分の数百円が浮いて、ただただドラッグストアでわざわざうどん買って1玉食った女がいたっていう話でした。

薬よりおばちゃんの知恵が勝った。

そんなしょーもない平和がたくさんの世界でありたい、いつまでも。

2022.7.9 Instagramの投稿より

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