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ニホンオオカミ像-かつての息吹を求め、奈良県東吉野村へ足を運びました。

1905年。
奈良県吉野郡東吉野村小川(旧:鷲家口)。

ポーツマス条約が締結されたこの年。
ここで1匹のニホンオオカミが捕獲されました。

その1匹は最後のニホンオオカミとなり、以来日本から姿を消したのです。

それから119年後の2024年1月13日。
場所は同じく奈良県吉野郡東吉野村小川。

私はかつてのニホンオオカミの息吹を感じるべく、友人と共にその場所へ足を運びました。今回はその記録となります。


ニホンオオカミとは

ニホンオオカミのはく製
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元々日本には2種のオオカミが存在していたのはご存知でしょうか。

一種は北海道の「エゾオオカミ(こちらも絶滅)」。
もう一種が本州・四国・九州に広く分布していた「ニホンオオカミ」です。

学名はCanis lupus hodophilax。

体長は中型犬(体長95~114cm)くらいだったようで他の狼に比べると割に小柄。肉食で主な獲物はシカやイノシシだったそうです。

明治初期まではかなりの数が見られたそうですが、病気や人間による駆除によって徐々に数を減らしていきました(具体的な絶滅理由は2024年現在では研究中)。

そして、1905年1月23日。
奈良県吉野郡東吉野村小川(旧:鷲家口)にて、捕獲したニホンオオカミを英国より派遣された東亜動物学探検隊員に売り渡したのが最後。

その後は各地で生存のうわさが出回るも確かな証拠はなく、絶滅したとして今に至ります。


【 参考記事 】


東吉野村にはニホンオオカミ像がある

ニホンオオカミ像についての説明

売り渡された最後のニホンオオカミは標本となり、現在イギリスの大英博物館で展示されています。

残念ながら標本はイギリスまで行かないと見れませんが、奈良県東吉野村にはニホンオオカミ像が建立されているんです。

今回はこの像を見るために現地まで訪れたレポートになります。


※参考情報※
現在、ニホンオオカミの標本は世界に4体しかないようで、その1体は先述した通りイギリスに。内3体は日本にあるとのこと。和歌山大学、国立科学博物館(東京上野)、東京大学農学部にそれぞれ保管されているようで、時々一般展示も行われているようです。

2024年1月では和歌山県で展示が行われているようでした。今回は像を訪れましたが、機会があればぜひ剝製を見てみたい所存です。


ニホンオオカミ像を見に行った感想

ニホンオオカミ像の写真

それでは、ニホンオオカミ像を見に行った感想をば……。

今回は友人と車で向かいました。
大阪市内から下道を走らせること大体2時間半。

大都会から自然に移り変わる景色を楽しんでいると、道ばたに突然その姿を現しました。

誇張ではなく、道端に突然現れたのでビックリしたのをよく覚えています。


ニホンオオカミ像の立て看板の写真

この立て看板がないと絶対気づかなかった自信があります。訪れる際は見落とさないようにお気をつけを。


駐車場は特に整備されておらず、とりあえずスペースだけ確保している感じ。体感的に車なら2台。軽なら3台ギリギリいけるかな……くらいの広さでした。


ニホンオオカミ像のアップの写真

こちらがお目当てのニホンオオカミ像。

凛々しく遠吠えをあげている姿が等身大で表現されており、景観とも相まっていまにも動き出しそうに感じました。


三村純也氏による句碑

現地にはお目当てのニホンオオカミ像のほかに、下記3つの石碑があります。

  1. ニホンオオカミ像についての説明が書かれたもの

  2. 天皇陛下行幸跡

  3. 三村純也氏による句碑を刻んだもの

それ以外には特筆してなにもありません。

ニホンオオカミに興味がなければ、少し物足りないかもしれませんね。


少し離れた場所にある
丹生川上神社から撮影した高見川
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しかし、近くを流れる美しく澄んだ高見川や山々の景色はニホンオオカミが生きていた時代とそう変わらないはず。

いまなお残る当時の面影を感じながら像を眺め、彼らの息吹に想いを馳せる時間は私にとって贅沢で有意義でした。

個人的には訪れることが出来てよかったです。


ニホンオオカミ像を訪れる際は天候に注意

ニホンオオカミ像は訪れてよかった場所ですが、天候が悪い時に行くのはおすすめできません。

というのも、ニホンオオカミ像周辺は積雪することもあるようです。

私たちが訪れた日も、現地に着いた時はヒョウが降っていました。風も強かったので道路に枝が散乱していたり、飛んできた枯れ木が車に当たって恐怖を覚えましたね……。

今回はスタッドレスタイヤに変えていましたが、大阪市内だと雪対策をしていない方も多いと思います。安易な気持ちで訪れると思わぬ事故に繋がるかもしれません。

単純に晴れていた方が川の水もより綺麗だったと思いますし、天気の悪い時は控えるのが無難かと思います。


ニホンオオカミ像周辺のおすすめスポット

ニホンオオカミ像が設置されている場所には、先述した通り3つの石碑しかありません。

そのため、少し物足りない気持ちになるかもしれませんが、ニホンオオカミ像周辺には見どころがいくつかあるようでした。

今回は訪れていない場所も含め、調べた情報を共有します!


天誅組史跡

東吉野村は、明治維新より遡ることわずか5年、明治維新の魁となったとなった天誅義士の無念の足跡が村中に残されています。

東吉野村「天誅組史跡」

東吉野村は、1863年に結成された尊王攘夷派(天皇を敬い、外国人を追い払うという考え)の集団「天誅組」の史跡をたどることができます。

天誅組は1863年に五條代官所を襲撃し、幕府による統治排除を宣言しますが、予定していた計画が狂い、逆賊として敗退をよぎなくされてしまうんです。そんな彼らの最後の戦いの場所が東吉野村。

ニホンオオカミ像周辺には旗がかかげられ、近辺には天誅組の歴史を刻んだ石碑がいくつか置かれていました。

「日本のために外国人を追い払う」という想いで活動していた天誅組最後の場所で、最後のニホンオオカミがイギリスに売り渡されるとは……なんだか数奇な巡り合わせですよね。


【 参考記事 】


高見川

丹生川上神社中社 夢淵の写真
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ニホンオオカミ像の近くには、美しく雄大な高見川という川が流れています。季節になればアユ釣りやアマゴ釣り、カヌーやカヤックなどの川遊びができるそうです。

また、川沿いには丹生川上神社という神社もあるとのこと。

今回は悪天候で川遊びを楽しむことも神社に訪れることも出来なかったので、今度行く機会があれば追記で紹介します。


【 参考記事 】


酒蔵カフェ 久保本家酒造

酒蔵カフェ 久保本家酒造の写真

ニホンオオカミ像に行く前に一息ついた場所なんですが雰囲気がとてもよかったです。

これ以上進むと店が少なくなるので、大阪側から向かう際はここで休憩をはさむといいと思いますね。


注文した甘酒とクッキーの写真

今回はチョコ味の甘酒を注文。

ジンジャー味のクッキーとぽかぽかの甘酒が冷えた身体に染み渡りました……。


山菜うどんとハムカツ、黒毛和牛コロッケの写真

すぐ隣には「道の駅 宇陀路大宇陀」があるんですが、そちらもすごくおすすめ。喫茶軽食で山菜うどんを頂いたんですがとても美味しかったです。


【 参考記事 】


世の中にはまだまだ不思議がある

以上がニホンオオカミ像を訪れたレポートになります。

豊かな自然に囲まれた場所に佇む像を見ていると、すぐそこの茂みから本物が姿を現すんじゃないかという想像に駆られました。

もちろん絶滅したという事実や、生きていたとしても自然交配が進んで想像とは違う姿になっている……みたいな少々がっかりしてしまう現実も理解しています。

ですが、私たちが頭に思い描く崇高で神秘的な存在のニホンオオカミはきっとどこかにいる。そんな確信に近いものを抱かずにはいられませんでした。

都会で現実的な生活を送っていると忘れがちですが、世の中にはまだまだ不思議なことが溢れています。

今回の旅は、そのことを私に思い出させたかったのかもしれません。

狼は亡び木霊(こだま)ハ存(ながら)ふる

ニホンオオカミ像のそばに刻まれた
三村純也による句碑

それでは!
最後までお読みいただきありがとうございます。


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