【現代詩】「output」#11
前回
仰け反る朱い猫の喉に前歯を埋めながらその奥で舌を極めて小さなストロークで震わせるとそれは恐怖か悦びか単なる共振なのかはわからぬがその喉元の肉がやはり震えてだからいずれにしろこの行いはこの瞬間にしか体現することのできないこの行いはどこまでもそしていつでも正当なものでその残虐性その酷さあるいは穢さについてさえ何者の咎めにも応じないしこのような捕食このような結合このような性このような愛ィエルサレムの旗を地底で振り故郷の果実を幹で砕きそれでもなお尽きることのない捕食と暴虐と感動の欲を放ちまた放ち足首を掴んで熱砂を引きずると朱い猫の背は爛れ艶の消えた毛は擦り切れやがて露出した皮膚が裂け朱味がヌメヌメとした艶を放ちながら垂れ落ちて千切れた毛を濡らし艶を戻すあちこちの裂け目を抉る熱砂肢体を削る熱砂恐怖か悦びか単なる共振なのか愛よりも荒く大きな幅を伴ってそれは振幅を繰り返し押し寄せる波が削れて細いその肉体を弄ぶのだやがて流れ着く粗野な乞食が溢れる世界研ぎ澄まされた加虐の感度を知覚せよどこまでも被虐の感度を高く高く射ち放てこの空間は果てしなく自由だ一方的な求愛も一方的な憎悪も一方的な暴力もそしてその一方的な力同士が拮抗してやがて衝突しそこで明らかになる光生まれる光包まれて抱かれてやがて解放という名の枷が快楽を呼ぶのだどこまでも快楽を快楽を今この瞬間の快楽をそれが食であれ知であれ性であれ虐であれ受容された瞬間にそれは快楽として時を壊し個を結び個を繋いで正しくひとつの弧と成ってやがて散るまで交わりながら肉と肉を撫で合うのだ無惨な朱い猫の一部は熱砂に熔けてしまい知を失って腐敗が進みながら半骨となった頭を振りまだ求めるあまり脈を打ち細々とした息の隙間に喘ぐ声それは喉から漏れていて腐った容姿同様に無様だが仰け反り続けるその喉にはやはり前歯を埋め舌を這わせ股間には性器を埋め痙攣を続けながら両極で乖離する希望に満ちた欲望が突き刺さり毛と皮膚と肉と骨を貫通して首に抜けるのだがそれでも止まない力まかせの抱擁に朱い猫はついに折れ絶叫は熱砂に吸われて残るのはその骨と最後の微笑