思春期の水曜日 其四
友人に、恋人ができた事を、私は心から祝福した。
「隠し事をするのは、嫌だから」
そう言って、もらえたのは、嬉しかった。面倒な付き合いや、集団による同調圧力とは、無縁に、私個人を、尊重してくれている。そう思えた。
「おめでとう、良かったね」
私の言葉も、本心からのものだった。
友人が、付き合い出してしばらくした頃、
「学校の行き帰りで手を繋ぐのって、ありかな?」
私は悩んだ。結果、
「二人が、色々言われてもいい、そう思えるなら、手を繋ぐのは、自然な事、じゃないかな?」
そう回答した。それが、正しい答えだったか、今もわからない。でも昨日から、友人は、恋人と手を繋いで下校するようになった。
そして、友人から、次のように、言われた。
「もし、わたしたちの関係について聞かれたら、とっくに最後まで進んでいる、と言っておいて」
私は二つ返事で、
「了解」
友の頼みを、承諾した。
今日になって、色んな人から、二人について聞かれた。仲の進展については、私は、友人から言われた通り、応答した。今さっきも、隣席の子から聞かれた。
ただ、隣席の子には、友人の強がり、虚言は、見抜かれている、気がした。多くの子は、動揺して、信じられなさそうな、顔をする。でも隣席の子は、事情通だけあって、私の話を聞いて、落胆した。私から、情報は引き出せない、と判断したと、思うのだ。
教室の前方に、向き直った私の肩を、指先で叩かれた。振り向くと、席から身を乗り出した、眼鏡をかけた女子がいた。
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