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上野 紗妃
2024年1月30日 14:33
「どうだい? 未来の自分に逢った気分は」カエル君はそう言ったが、まさか、それはない。「あの人は偉大な作家だよ。ボクとは違う」「どうしてそう思う?」「昼間あの人の作品をいくつか読んだよ。あんな文章、とてもじゃないが、ボクには書けない」 そう言うとカエル君はまたしてもフフフと意味あり気な含み笑いをした。「それに名前が違うよ。なんだかとても難しそうな名前だった」「……臥龍覆水」「えっ?」
2023年12月26日 21:52
カエル君の運転する車はとんでもないスピードで夜の国道を疾走した。瞬く間に都会を離れ街の灯りはどんどん遠去かった。走る程に薄墨かかっていた空が綺麗な藍色に変わり、それまでぼんやりと光っていた星々が次第にくっきりとその輪郭を浮き立たせた。それから暫く後にはその周囲に撒き散らしたような小さな星がいくつも瞬き始めた。こんなもの街中では見られるはずがない。空気が澄んでいる証拠だ。 急に時間の感覚が失われ