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Instagramのデジタルウェルビーイングを考えるUIデザイン | UI/UX Weekly vol.14

以前、「ユーザーを騙す、4つのダークパターン」というテーマでnoteを書きました。
ダークパターンとは、ユーザーが意図しない選択肢に故意に誘導するユーザーインターフェースのことを指します。
それらの多くは、ユーザーに想定外の料金を支払わせる、会員費を支払わせ続ける等、金銭的な面で企業側の利益を最優先に設計されたものが多いです。それらは誰が見ても「悪いもの」であり、ほとんどの場合それらをどう改善するべきかが明確になっています。

一方で、

「毎朝毎晩、ユーザーにアプリを使ってもらうおう」
「より長い時間、ユーザーがアプリを見るような仕組みを作ろう」

と企業側が作り上げてきた「面白い」アプリは、ユーザーの時間を必要以上に奪い依存させてしまうこともあります。

例えば、Instagramが生まれるまでは、友人や家族との会話で知っていた出来事を、「もっと多く、もっとリアルタイムに」知りたくなってしまい、特に目的もなくInstagramのフィードやストーリーを見ていることもあるかもしれません。
さらには、フォロワーの増減やいいね・コメントの数を気にしすぎて毎分のようにスマホを見てしまったり、一般のユーザーまでもがフォロワーを買うなんてことも珍しいことではなくなってきました。

デジタルウェルビーイングを促進するUIデザイン

そのようなユーザーのスマホ依存が社会問題として考えられるようになった頃から、デジタルウェルビーイングの考え方が注目されるようになってきました。

ウェルビーイング(well-being)とは、「健康なことやその生活状態」を表す英語で、デジタルウェルビーイングとは、つまりスマホやその他デジタルデバイスを使うユーザーが、心身ともに健康でいられるようにすることです。

そんなユーザーのデジタルウェルビーイングと真剣に向き合い始めた企業の一つである、Instagramの例を紹介していきたいと思います。


無限スクロールを抑制するメッセージ

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フィードの最新投稿を見終えると、「コンテンツは以上です」とユーザーに知らせる表示は、
目的なくInstagramのフィードを無限にスクロールして、過去の投稿を見続けてしまうことを抑制する役割を果たしています。
「最新の情報はここまでだよ!もう見てない投稿はないから大丈夫!」と知らせるこの表示は、今まで永遠に連なった投稿が並んでいたフィードに区切りを設け、「一旦インスタは終わり」という機会をユーザーに提供しています。


いいね数を非表示に

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今までは他人の投稿に「いいね」の数が表示されていましたが、「ユーザー名、他」と数字の表示がなくなりました。
これに関してInstagramは、「友だちがどれだけ多くのいいねを獲得したのではなく、シェアした写真や動画を見てほしい」と説明しています。


▼ フォロワーの数を目立たなくするUIもテスト中

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(画像元:携帯総合研究所

上記の「いいね数非表示」と同じ考え方で、プロフィールの一番上に「フォロワー数」を表示することが、「自分に何人の友達がいるか」の数を示しているようで不安を呼んでしまいます。
その不安を少しでも解消するため、レイアウトを変え、文字サイズを調整することで、フォロワー数ではなくユーザーを主役にしたデザインがテストされています。

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このデザインに関しては、NETFLIX「Art of Design」で、Instagramのデザイナーであるイアン・スパルターを取り上げたエピソードでも紹介されています。


本当にユーザーのためになるのか?を考える視点

世の中にあるたくさんの「面白い」アプリに恩恵を受けている反面、私たちの生活はそれらによって一変しました。

上述したようなInstagramのUIデザイン変更によって、ユーザーのスマホ依存やスマホ中毒を完全に解消できる訳ではもちろんありませんが、
ユーザーの時間を必要以上に奪ったり、不安を煽ったりしないため、デジタルウェルビーイングの視点は非常に重要視されています。

ユーザー数を増やしたり、利益を上げることは企業にとって言わずもがな重要なことですが、
長期的にユーザーのために、企業の未来のために、そして世の中のために、正しい倫理観を持ってサービス作りに携わる姿勢は、今後より必要になってくると感じました。

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