私が雨を好きな理由
こんにちは。花巻です。
私は雨が好きです。
これには理由があります。
私が雨を好きな理由は、
「みんなが雨を嫌いだと言うから」です。
多くの人に晴れと雨のどちらが好きかと聞くと、晴れと答える人が多いです。
雨を鬱陶しいと感じる人も少なくないでしょう。
だからこそ、私は雨が好きなのです。
私が雨を好きになったのは、小学生のころ。
ディベートかなにかの授業で晴れと雨どちらが良いかという議論をしました。
その頃の私はまだ晴れの方が好きだったけれど、授業の進行をするため、雨の側につきました。
たしか、雨の良さを伝える時に「雨が降らなければ虹がかからない」だとか、「雨がなければ食物が育たない」だとか、そんな誰にでも思いつくようなことを言っていたと思います。
しかし、晴れ側の反論で「虹がかかるのは雨が止んで晴れた時だ」「晴れだって同じで作物を育てるために必要だ」と論破され、
更には「雨は湿気で髪がまとまらないし、服が濡れる」「晴れていれば傘はいらないし、外で遊べる」と述べられました。
結果は想像通り、多数決で晴れの圧勝。
その時に私は思ったのです。
「雨が可哀想だ。」
どちらも同じ天気で必要な存在なのにどうしてここまで雨は嫌われなければいけないんだ。
みんなが雨を嫌いなら、私だけでも雨を好きでいてあげなくちゃ。
(後に知ることになりますが、この感情のことを「判官贔屓」と言うそうです。
なんでも源義経に由来する言葉だとか)
これ以来、私は雨が好きになりました。
晴れも好きだけれど、どちらが好きか聞かれたら必ず「雨だ」と答えるようになりました。
そして時が経ち、高校生の頃。
遊園地のレストランでバイトしていた時に、たまたま天気の話になり、バイト先の先輩にどちらが好きかと聞かれました。
私はすかさず「雨」と答えると何故か問われました。
私は「雨が可哀想だから」と、先程述べた通りに告げると、バイト先の先輩が
「さきのちゃんて変だね」
と言われました。
私は先輩が言っている意味が分かりませんでした。
なにが変なのか聞くと、先輩は
「だって雨に感情なんてあるわけないじゃん。それなのに可哀想だなんて変だよ。」
私はなんだか恥ずかしくなりました。
今まで信じて疑わなかった「可哀想だ」という自分の気持ちが、他人から見たらおかしな事なのだと、初めて知りました。
この事があり、私は雨が好きな理由を話すのを躊躇うようになりました。
なんとなく、と流せばそれ以上誰も追求してこないことにも気が付きました。
わざわざ自ら恥をかきにいくなんてもうやめよう、と思ったのです。
更に数年後、専門学校に入学した私は、ネームに詰まった時に「天気」を題材にした話を描きました。
その時、封印してた「雨が可哀想」という理由をネームにして講師に見てもらいました。
それを読んだ講師には「これじゃ共感できない」「雨が可哀想だなんて思ったこともないから、分からないよ」と指摘されました。
マンガは共感されることが大事だから、私の独りよがりの話じゃダメなんだ、とこの時に気づかされました。
それから私はこのネームを直し「雨がないと作物が育たない」だとか「虹がかかるのは雨があるから」だとか、当たり障りのないことをかき連ねました。
しかし、直したネームはなんだか私のモノではなくなってしまった気がして、途端に描くのが嫌になってしまい、それ以来そのネームは引き出しの中に眠ったままになってしまいました。
そこから更に数ヶ月経ったある日、専門の友人とネームの相談をしている時に、「天気の話」になりました。
私は雨が好きだ、というと友人は「なぜ?」と聞いてきました。
私が言い淀むと、友人は不思議そうに見てきました。
私は友人ならもしかしたら、分かってくれるかも、と淡い期待を抱き、「雨が可哀想だから」と話しました。
友人はぽかんとしながら「どういうこと?」と聞き直しました。
「変だって思われるかもしれないけど、」と前置きを据えて、
「みんなが雨が嫌いって言うから、それじゃあ可哀想でしょ?」と、私がヘラヘラと笑いながら誤魔化して言うと友人は
「可愛いね!」
私ははじめて言われた肯定の言葉に動揺して、「え?可愛い?なにが?」と聞くと、
友人は「自分には分からないけど、それって純粋な気持ちで雨を見てるってことでしょ?」と言われました。
今まで私の感性は人と違って変わっていておかしいことだと思っていたのに、
友人は「純粋で可愛いもの」と言ってくれたのです。
もしかしたらこれは「子供っぽい」という意味で言われたのかもしれないけれど、それでも私は救われた気分になりました。
人と考え方が違うことはダメなことではないのだとその友人に言われたような気になりました。
共感こそされなかったものの、自分を肯定してくれた。その事実だけで私は嬉しかったです。
私は今まで、「変わり者だ」と言われることが怖くてこの話を出来なかったけれど、
変わり者って悪いことじゃないのかもしれません。
まぁ、共感されない私はもしかしたら「マンガ家」には向いていないのかもしれませんが…笑
それでも、私は人と違うことに怖がらないでいられます。
たった1人でも自分を肯定してくれたから。
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