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手を振るあなたの美しさ

仕事の関係で、4年ぶりくらいに出張をした。

いつもは出張といえば新幹線なのだけれど、今回は空路に頼らざるを得なかった。場所がずいぶん遠い場所だったからだ。

ひとりで飛行機に乗るのも久しぶりで、
朝5時過ぎの電車の中では、眠気を感じることもできず、終始そわそわしていた。

ターミナルはどこだったかな。
荷物の重量制限は大丈夫だろうか。
チェックインは、何時からだった?

早朝のほとんど人の乗ってくることのない電車は、私と、一泊にしては小さすぎる荷物、そして期待と不安をのんびり目的地へと運んだ。
久しぶりの成田は、ずいぶん遠く感じた。


飛行機が嫌い、という人の話はよく聞くけれど、実は、私もあまり飛行機での旅は得意ではない。

上空でフワッとするあの胃の浮くような感覚や旋回中の揺れは気分が悪くなるし、単純に高い場所を高速で飛ぶのは怖い。何かあったら絶対死ぬし。

ただ、そんなことを言いながらも、同時にものすごく飛行機が好きで、用もないのに空港へ行っては飛行機の写真を撮ったり、ジェット機の音を聞いたりする。
なあに、乗らなければなんてことはない。現金ではあるけれど。

乗りたいか乗りたくないかは置いておいて、人が空を飛ぶために開発したそれを、私は単純に素晴らしいものだと思っている。
そして、開発したその機体が安全に飛び続けられるよう努める空港職員をとても尊敬している。

安全というのは本当に脆く、人が何かを怠ればすぐに崩壊するのだと、私は鉄道会社に勤めている時に知った。
鉄の塊が地面を高速で走ったり、空を飛んだりするのだ。止まっている間は比較的安全だけれど、動き始めたら制御には限界がある。
でも、彼らは彼らのした仕事を信じ、誇りを持って毎日電車や飛行機を走らせたり飛ばしたりするのだ。本当にすごい。

夜の滑走路のまっすぐ伸びたライトと、機内の少しざらついたアナウンス。
小さな窓から外を見れば、グランドハンドリングがこちらに手を振っている。

見知らぬ旅客に手を振り、空へ飛び立つ飛行機を見送る彼らを見ると、なんだかいつも泣きたくなるような気持ちになるのは、
彼らのその見送りに、彼らの矜持や優しさを感じるからなのかもしれない。

いつも、安全で楽しい旅をありがとう。
また明日も、たのみます。

心の中で大きく手を振って、東京に戻る。
ああ、怖いのになあ。
また、乗りたいな。

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