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折込チラシ
毎朝届く新聞の中に、たくさんのチラシが入っている。同時に夕刊も、何食わぬ顔をして朝刊と一緒にいる。新聞配達屋さんは、一日に二度も山間の小さな集落には来てくれないのだ。
早朝に届く夕刊は、前日の日付のものだ。朝刊だってほとんど読まないのに、夕刊なんてもっと見やしない。
目的は新聞に挟まれているたくさんのチラシだった。大きさも紙の質も、印刷の仕方も多種多様。スーパーの特売日のお知らせや、欲しいおもちゃの広告など必要なものは事前に抜いておく。その後にやることは、チラシの裏が白いかどうかのチェック。
両面印刷のチラシは使えない。裏が白いチラシは使える。
片面印刷のチラシだけかき集め、印字されていない白い面が表に出るように二つ折りにする。それを何枚かかき集め、左上をホッチキスで留める。
束になった白い紙は、勉強のお供になる。私はお手製メモ用紙に、あるときは筆算で使ったり、またあるときにはお経を唱えるように漢字の羅列を書いていた。
勉強に関係するものにはお金を使っていいと言われていたから、ノートが買えないわけではなかった。正規のノートなんて、欲しいと言えばいくらでも買ってもらえる。でも、使用目的が殴り書きをするためだけなら、チラシの裏で十分だった。
理解が遅かったし、覚えるのが遅かった。比の計算が苦手だったし、漢字が私を拒否しているとしか思えられないくらい、ある一文字が覚えられないこともあった。だからひたすら鉛筆を握って紙に書いていた。
何十枚も白い紙があっても、すぐに真っ黒く埋め尽くされる。黒くなった紙は、ゴミ箱行きだった。
大量にある真っ白なチラシの裏が、一瞬で鉛筆の黒鉛で染まり、躊躇なく捨てられていく。メモ魔ではなく書き魔だったから、チラシの裏がないと外に出て庭にチョークで書いたりもしていた。トートバッグを作ったときの型紙作りは、チョークを持ちながらやっていたことを覚えている。
チラシの裏に鉛筆で書くとき、光沢紙だと黒鉛が砂のように滑ってしまい、薄く淡い文字になってしまう。普通紙であれば、揺らぐことなく黒鉛が留まってくれるため、濃く書きつけることができる。
折込チラシの片面印刷には、滑らかな光沢紙が高頻度で含まれていて、これだと鉛筆で書きにくいんだよなぁと浮かない気持ちになりつつも、その書きにくさに愛着さえ沸いてしまっていた。
2022.5.16
好きな四字熟語は「自画自賛」です。