2022年5月20日-5月29日
高円寺ストロベリー・スーパーソニックさんにて、
松村早希子個展
「わたしの かわいい はどこから来たのか 〜かわいい源泉掘りおこし〜」
を開催しました。
はじめに
もともとこの展示は、作品集「愛のひきだし、みえないお菓子」(セルフレビューはこちら /刊行記念展覧会「愛のひきだし」記録はこちら)
の制作中、ある方からいただいた厳しい言葉をきっかけに生まれました。
自分はほんとーに甘ちゃんで何も突き詰めていなくて、ノーコンセプトで只々好きな女の子を描いてきただけ、しかも顔のみ!!!で、20年突っ走って来たために基礎的な技術力が弱く、具体的にココとココがこうだからダメ、ココはまあマシ、ココはダメ…と、本来なら高い月謝を払ったセミナーなどで教えてもらうようなことを無償で一気に伝えてくださったその方には、どんなに感謝してもしきれません。
そしてその時「僕なら『20年前からタイムスリップしてきた高校1年生』が描いた絵っていう設定にしてみる」とも言われ、そのまま言われた通りにやるのはあまりにもつまらない(捻くれ者…)と思ったけれど、その言葉が何ヶ月も引っかかっていて、そもそも自分はどうして「かわいい」女の子が好きなんだろう?と、掘り起こしてみることにしました。
遡って思い出せる限り一番古い「かわいい」と思った記憶から始まり近年に至るまで、自分の「かわいい」価値観に影響を与えた存在を、絵とテキストで展示したインスタレーションです。
キャプションは
かわいい!と感じた存在について
●出会った年代
●出会った時の自分の年齢
●名前(作品名)
1:その存在とどのように出会ったか
2:その存在の魅力
3:その存在が自分にどのような影響を与えたか
で、構成。
【番外編】
<作品写真撮影:フカヲさん>
こんな分量の文字を…現地で読んでくださった皆さん……本当にありがとう(泣)!!!
観てくださるお客様にかなり負担を強いる文字数だったと思いますが、スマホやZINEの手のひらサイズでなく、壁面埋め尽くす展示でしか出せない圧力を感じていただけたでしょうか。
そして、ご協力くださったストロベリー・スーパーソニックさん🍓ありがとうございました!!!
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ストロベリー・スーパーソニックさんでは、2020年11月にも個展「わたしの緊急事態」を開催しました
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おわりに
ここまで読んでくださっている方はよっぽどの物好きかどうしても長い文章が読みたくて仕方ない方だと思うので、とってもプライベートなことを書きます。
この展示はパートナー(以下、夫氏)の多大なる協力が無ければ実現できませんでした。それは、実務的な(壁にきっちり貼るとか紙を真っ直ぐ切るとか、私が苦手な細かい作業)ことはもちろん、展覧会のコンセプトと構成自体が、夫氏と喧々轟々言い合いながら作り上げたものだったからです。
いつもふわっと描きたいものを描いているだけの私に、人に見せる作品として発表する意味を突きつけ、なぜこのような絵を描いているのか、一日に何度も「かわいい」という言葉を発しているけれど、その感性はどのように作られたのか、夫氏が私へインタビューを行い、作成した年表と膨大なメモをもとに、私がバーっと雑多に書いた文章を夫氏が校正し、読みやすいよう文字組を整え、最終的な展示構成も共に決めました。
(展示の書影のほとんどは、マッチ箱や段ボールの切れ端に夫氏が写真を貼り付けて作りました。カッターで手を傷だらけにしながら…)
展覧会に来た方へこのことを伝えると必ず「やさしい旦那さんですね」「すてきなご夫婦ね」と言われます。
実際もし他人から「夫婦でつくった展覧会なんです」と聞いたらはいはい幸せでよかったねーと思うでしょう。しかし、私自身にとっては大変きびしく辛い経験でした。なぜなら、本物の芸術家はこの(自分自身の内側を掘り起こし徹底的に見つめ直すという)作業を、たった一人でおこなわなければならないと思うからです。
勿論、パートナーや複数人のチームと協働で制作する素晴らしい芸術家はこの世に沢山います。しかし、その方達はみな一人一人が独立したアーティストとして、アイデアを出し合ったり実作業を共にすることで、一つのものを作り上げているのではないでしょうか。自分はアーティストとしてのスタート地点にも立っていない、ただ好きなように絵を描いてるだけ、根本的に「土台が弱い」というこれまで目を逸らし続けてきた事実に、毎秒ごとに向き合わなければならない展示でした。
足りないところを補い合って、最終的にいいものが出来れば何でもいいじゃん!と割り切れないのは、自分の中に「自分がカッコイイと思う芸術家で在りたい」という欲があるからだとわかりました。でも、自分自身がカッコイイと思われることよりも(それも嬉しいですが)、作品をカッコイイと思われる方がずっと大切なことなので、優先順位を間違えないようにしたいです。
自己顕示欲も自覚し、自分の中の欲望やドロドロした感情の存在を認めた上で、これからも皆様におもしろいと思ってもらえる展示を(できる限り協力し合って)つくっていきたいと思います!!!