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松村早希子個展「愛のひきだし」のこと〜その1〜


2021年12月17,18,19日に開催した個展「愛のひきだし」の記録

(文化庁Arts for the futre補助対象事業)

愛のひきだし

屋根裏部屋の引き出しの奥、何年も眠っていた旧作から、絵の具乾きたての新作まで。
過去の絵を振り返っていたら、見えなくてもずっと心の中にいる存在を、目の前に留めておくために自分は描いていたのだと気付きました。

目醒めと同時に忘れていく夢、波が引く時の足元の砂、花の蕾がひらいた瞬間のパチンという音、紅茶に浮かぶレモンにかけた砂糖の味。
つかまえておかないと消えてしまう儚い物々に、ずっと支えられて生きて来たのでした。

テレビを見た時、漫画や小説を読んだ時、ライブを見た時、アイドルに会えた時、道でかわいい女の子を見かけた時。そのときめきを逃さないように、ノートの隅に書き留めるようにして生まれた絵。
隅々までビシッと決まった構成力も、目から血が流れるほど考え抜かれたコンセプトも、ここにはありません。
この会場に集められた作品たちをご覧になって、少しでも気にかかったり、何かを感じてくださったのなら、そのあなたの心が、何よりも美しいのだと思います。


2021年12月
【展覧会ステートメント】
展覧会フライヤー
「愛のひきだし、みえないお菓子」表紙

十代の頃より描き溜めてきた作品の中から自選した作品集
「愛のひきだし、みえないお菓子」
(刊行:蛍光資料) 
この本の刊行記念展として、収録した作品や、未収録の掘り出し(?)作品などを展示。
自分史上最大の広さで個展ができてとても嬉しかったと同時に、反省点もたくさん。
たった三日間の儚いお祭りだったけれど、自分は何が出来て何が出来ないのか、何をやりたいのか何をつくりたいのか、考えるきっかけになった大切な時間だった。



今回はギャラリーの2部屋を使用する展示と決まり、これまで壁一面もしくは二面ほどしか使用した事がなかった私は大変焦った!どうしよう…頭の中だけで立体的にものを考えるなんて出来ない…
気ばかり焦って行動せずいつまでもウジウジしている私を見かねた家族が、段ボールの切れ端を使い模型を作ってくれて感動!(しかし、中の小さい絵を描くのが楽しすぎて、「それだけで満足してない?!本来の目的忘れないでね?!」と、怒られたりもした)
この模型と毎日にらめっこして、あーでもないこーでもないと考え、前日ギリギリまで変更したりして、完成した展覧会場の案内図がこちら。

会場案内図

No.27「ウチダさん」は19歳くらいの頃に描いたもの、No.11「珈琲の精」は39歳(2021年9月)で描いたもので、最古(?)と最新を向かい合わせに配置した。その他、この20年の様々な時期に描いてきたキャンバス画(比喩ではなくマジで屋根裏部屋で眠っていた…)を展示。
はじめはきっちり年代順に並べようかとも思ったけど、実際に配置して見た時のリズム感と隣り合った絵との相性を優先。

:No.27「ウチダさん」/右:No.1「りぼん」
左:No.15「火星の子」、右:No.11「珈琲の精」

キャンバスの壁面の下、奥行60センチ×約5メートル幅の展示台があり、一面にドローイングを敷き詰めてアクリル板を上に設置して展示。これだけの面積を自分の絵だけで埋めたことはなかったので、かなり大きな挑戦だった!
額に入れたり壁面に展示した時とは見え方が全く変わるこの展示方法を実現できて、ものすご〜くワクワクしてテンション上がった。それは、今まで自分が只々衝動にまかせて描いていたドローイング達に、人に見られる為の舞台(ステージ)を用意してあげられたからだと思う。
アクリル板をホームセンターで購入し、親戚に手伝ってもらいヨッコラショと運んだのもまた良き思い出。

今回の主役(?)である作品集「愛のひきだし、みえないお菓子」の販売コーナー。また、過去に制作したZINE「I♡(love)IDOL」vol.1〜3や、旧作ポストカード、今回初めて作ったクリアファイルなども販売した。(お買い上げ下さった皆様ありがとうございました!!!)
作品集とZINEは、現在こちらのオンラインショップで販売中。

上左:No.13「新世界」 上右:No.12「必要火急」
:愛のひきだしフライヤー原画

作品集表紙の絵の原画と、クリアファイルの原画、今回のフライヤー原画も。
キャンバス画は、2作とも愛猫しまこ(ミーちゃん)をモデルにした絵なので特に思い入れ強い。
猫の可愛さをそのまま絵に描くことがどうしてもできなくて、人間の女の子の姿にしてみたら「猫が大好きな気持ち」を多少なりとも表せた気がする。大島弓子先生『綿の国星』方式をお借りしている。

No.2「オニ」

その横には、20歳頃に描いた板絵「オニ」。泣いた赤鬼のお話とか、人間と鬼の関係などにハマっていて、自分も鬼になりたい!(ヤバ)と思っていた頃。さすがに最近は「どうもなれなさそうだ」と分かってきた…。

薄桃色のオーガンジーのカーテンを抜けるともう一つの部屋に続く。

この20点も、屋根裏部屋のひきだしの奥から発見された一冊のスケッチブックに描いたシリーズ。年代を書き残してないので(反省!)、いつの作品か正確にわからない…おそらく2008〜9年くらい。すべてクレヨン画。はじめは展示を予定していなかったけれど、直前にやっぱり出そう!と決めた作品。

No.35:いつか見た夢(部分)

この7点は、展示された中で最も古い作品。大学三年(約20年前)の課題で描いたもの。何十年も見ていなかったけど、とても思い出深い絵なので見た瞬間色々蘇った。なぜ思い出深いかについては、作品集を読んでね!

板絵シリーズと、2011/2013年制作のコラージュ

こちらの部屋の方が広く、床は黒で壁がコンクリート打ちっぱなしなので、寒々しくさみしい感じになってしまったらどうしよう…とはじめは心配したけれど、協力してくれた友人達のお陰で、絵の中の人たちを包み込んでくれるようなあたたかい空間になった。
展示を見に来てくれた方がふと漏らしていた「これだけ顔があると…さみしくないね!」という言葉、そういう見方もあるのか〜!と、新鮮だった。

No.28:Kiyoka

これもかなり昔(19年前…)に描いたもので、当時アトリエとして部屋を借りていたリサイクルショップ地球堂で、働いていた女の子がモデル。(きよかちゃん元気かな…)
あまりにも稚拙すぎて自分では恥ずかしいと思っていたけど、展示してみたら意外と人気が高かったので、恥も外聞も捨ててよかった。


そして!展覧会二日目の12月18日土曜日には、人生はじめての試み…トークショー&朗読+ライブドローイングを開催。
こちらのイベントについては、次回記事に続きま〜す!

〜つづく〜


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