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作品集「愛のひきだし、みえないお菓子」と個展「わたしの かわいい はどこから来たのか」の告知 松村早希子

「レビューとレポート」をご覧の皆様、はじめまして!画家の松村早希子と申します。
2021年12月に、私の初めての作品集「愛のひきだし、みえないお菓子」を蛍光資料より刊行しました。
編集長に直訴し、この作品集の紹介文(セルフレビュー)を掲載していただけることになりました。図々しくて、すみません!

私は、2001年に多摩美術大学絵画学科油画専攻に入学、在学中は椹木野衣ゼミに在籍。学生時代は憧れの美術家やミュージシャンを好奇心赴くままミーハー精神で追いかけまくり、様々な展覧会やギャラリーのボランティアスタッフを経験するも、実務能力は無くその後の職業には繋がらず。
2005年に大学卒業後は、美術と全く関係のないお仕事をしながら、自分で展覧会をやってみたり、雑誌やWEBでコラムとイラストを発表したりして暮らしています。

このような絵を描いています。

ドローイング 2021.5.4.

参照:松村早希子website 


10代の頃から日本の現代美術とサブカルチャーが大好きで、アート界をウロウロしながらも、「美術作家です」と自称する気概はなく、かと言って「美術関係者です」と言える立場でもなく、ただただ運の良さと御縁に恵まれて、のほほんと生きて来ました。
2020年のコロナ禍により生まれた空白の時間で、「やはり自分は作家として在りたい」という胸の奥の捨てきれない願望を自覚し、その自己実現として、約20年描いてきた絵の中から自薦した作品集を制作しました。
また、この本の編集長であり蛍光資料主宰者の羽山氏の企画にて、作品集刊行を記念した展覧会を2021年12月に開催しました。


愛のひきだし展 展示風景

参照:作品集刊行記念展「愛のひきだし」記録


美大生時代はバイト先の古道具屋の一室、卒業後に借りた小さな小さなアトリエ、そこを引き払って移り住んだ先の屋根裏部屋の奥のほう、愛のひきだしにしまいこんでいたお菓子は、みえなくてもずっと心の中に在りました。
この約20年自分が描いてきた絵を振り返って、気づいたことがあります。

目醒めと同時に忘れていく夢、波が引く時の足元の砂、花の蕾がひらく瞬間のパチンという音、紅茶に浮かぶレモンにかけた砂糖の味。
そんなすぐに消えてしまう儚い物々、捉えたいと思った瞬間からもう失っている影を、じたばたぐるぐる追いかけ続けて、未だその切れっ端すらも掴めていないのです。

奈良さん、宇野さん、エリザベス・ペイトン、リタ・アッカーマンに憧れ焦がれても、そんなドデカい「本物」には、ぜんぜん成れませんでした。
軽くてふわふわして少し体に悪いお菓子が貼り重ねられた、重厚さも批評性も歴史性も持たない、ただひたすら甘いだけのうわべ。
「一冊の本」という目に見える物理的な厚みを得た時、甘さ以外の味が立ち現れるのでしょうか。

作品集のまえがきより


もの心ついた頃から可愛い女の子が大好きでした。誰かの似顔絵や好きな漫画のキャラクターをノートの隅やテスト用紙の裏に描く瞬間とまったく同じ気持ちで、その時々の衝動にまかせて描かれた沢山の絵が、日々増殖しています。
美大に入学し作品を発表するようになってからも、いつも勢いまかせ行き当たりばったりで、気づけば20年経っていました。
変わらないということは、良いことでも悪いことでもありません。
ただ変わらなかった何かが、この一冊に纏められました。

全84ページフルカラー、ハードカバー表紙のすべすべした手触りに、裏表紙は猫の肉球ピンク色。編集長のご尽力のお陰で、宝物のような一冊になりました。

お手に取って、ご覧いただけましたら幸いです。


「愛のひきだし、みえないお菓子」書影


松村早希子作品集「愛のひきだし、みえないお菓子」
B5判 / ハードカバー / 84P 全カラー ¥2,750(税込)

販売情報:
【通販】 
https://sakiko427.thebase.in/

【書店】
◆古書ビビビ (下北沢)
https://mobile.twitter.com/binbinstory (twitter)
http://www6.kiwi-us.com/~cutbaba/
◆タコシェ (中野)
https://mobile.twitter.com/tacoche (twitter)
http://tacoche.com




そして2022年5月20日より、2020年に個展「わたしの緊急事態」を開催したストロベリー・スーパーソニックにて、2回目の個展を開催いたします。


これまで出会ってきた沢山のかわいい人たちのお陰で、自分は生きられている。
隣のおうちの、歳上のお姉さんに。
親に隠れて覗いた写真集「少女アリス」に。
団地のごみ捨て場で拾った80年代のりぼんで連載されていた
「ときめきトゥナイト」の、蘭世に。
幾多のTVドラマの中、煌めく女優さん達に。
FRUiTS の表紙を飾る原宿のあの子に。
美術館の受付にいたあの子に。
ステージで歌い踊るあの子に。
インスタストーリーの1日で消えちゃうあの子に。
映画「おとぎ話みたい」の、高崎さんに。
(サブカル貧乏、サブカル貧乏、サブカル貧乏!) *1
怒られ続けて世界から消えたくなった帰り道立ち寄るコンビニで、雑誌のなか微笑むあの子に。

もの心ついた時からずっと「可愛い女の子」が大好きだった。
私はよく「全然変わらないね」と言われる。数年単位から、10年20年会っていなかった相手でも。
さすがに40歳にもなると「変わらないこと」を、ただ手放しでは喜べなくなってくる。
2021年、美大在学中から約20年の間に描いてきた絵から自選した、作品集を制作した。
その段階で、自分はいかに行き当たりばったりで、甘えんぼうでフラフラした人間かと思い知らされた。
本は編集の力で美しい物になったけれど、自分の絵の一点一点、良いものもダメなものも真正面から向き合うことを、この20年一切やってこなかったと突き付けられたのだった。
そして向き合った結果、大学入学よりももっと以前から、「かわいい」存在との出会いはいつどんな時も自分の生きるよろこびと繋がっている、マグマのような原動力なのだと気づいた。
勉強も仕事も部屋の片付けも何もかもが中途半端で、一つのことをコツコツと続けて成し遂げるのが何よりも苦手な自分が、唯一とくに努力しなくても続けられたのは、かわいい存在にときめいたその瞬間を絵に描くことだった。
出来る限り長生きして、死ぬまでこの源泉を枯らさずにいたい。

*1………映画「おとぎ話みたい」予告編より 2014、山戸結希(監督)、趣里(主演)
youtube https://youtu.be/tGDBB4bbP4w

個展のステイトメントより


ライラック香る初夏の日差しのもと、可愛いと毒と魔法をぎゅぎゅっと煮詰めたジャムのようなお店🍓ストロベリー・スーパーソニックに沸き起こる私のかわいい源泉を、是非目撃してください。


松村早希子個展
「わたしの かわいい はどこから来たのか 〜かわいい源泉掘りおこし〜」

松村早希子個展「わたしの かわいい はどこから来たのか」フライヤー


会期:
2022年5月20日(金)、21日(土)、22日(日)、27日(金)、28日(土)、29日(日)
時間:14:00 - 20:00
会場:ストロベリー・スーパーソニック
東京都杉並区高円寺南3-60-10
(JR高円寺駅南口より徒歩3分)
WEB:http://sakiko427.tumblr.com/


松村早希子(画家)




ストロベリー・スーパーソニックについてはこちらをご覧ください。




レビューとレポート第36号(2022年5月)