手紙を入れたガラスびんを、海に流す人【前田裕二著:人生の勝算】
あぁ、ここにも変態がいた。
そう思った。
本書は、SHOWROOMという、ライブ配信サービスを立ち上げた、29歳の経営者の自伝である。
堀江貴文さん、秋元康さんが帯にコメントを寄せ、はあちゅうさんやキッズラインの経沢香保子さんも絶賛していたのを見て、興味を持って読んでみた。
単純に、ビジネスパーソンとしてすごいなぁ、賢いなぁと思うことがたくさんあった。
幼くしてご両親を失くし、食べていくために路上ライブを始め、どうしたら投げ銭してもらえるかを戦略的に考えて試したこと。
目標とする人に近づくため、がむしゃらに仕事に取り組んだこと。
自分のことも、仕事に関することも、圧倒的なエネルギーで、しつこく、深く深く深く深く掘りつくして知り尽くすこと。
とてもじゃないけど、マネはできない。
変態的な情熱だと思った。
が、ふと疑問が湧いた。
前田さんは、何の変態なんだろう?
お金儲け?違う。
ビジネスを大きくすること?違う。
すごいビジネスパーソンになること?違う。
ここで、ある人物が浮かんだ。
松任谷由美さんの楽曲、「瞳を閉じて」をご存知だろうか。
1974年にリリースされた、離島の学校の校歌として作られた曲だ。
この曲の登場人物は、海の青さを、潮騒の音を、遠い所へ行った友達や小さな子どもに伝えようとする。
そのために、手紙を入れたガラスびんを海に流す。
前田さんは、この人に似ているように思えた。
表現をする人が、食べていける。
見てくれる人を楽しませる努力をした人が、報われる。
時間や場所のハンデなく、演者と観客がひとつの場を共有し、絆をつくれる。
その価値を伝え、実現させることに対する変態的な情熱ゆえに、嵐だろうが凪だろうが、ひたすら手紙を海に流しているのではないだろうか。
原体験が路上ライブやスナックだからだろうか。
インターネット上のサービスの話なのに、全然サイバー感がなく有機的で、どこかいなかっぽく感じるのも、この曲とつながった原因のように思う。
ビジネスパーソンとしては圧倒的にレベルが違い、「私もこんな風になりたい!」などとは露ほども思えないのだけれど、それでも本書を通じて知った前田裕二さんという人は、静かな情熱に満ち、とても愛おしく思えた。
彼から届いた手紙には、希望に輝く未来が見えた。
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noteを始めて1年半、本書に触発されて、初めて路上でギターケースを広げる気持ちで、投げ銭箱を設置してみようと思います。
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