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欧州コロナパニック -引きこもりも捨てたもんじゃない-

さて、いつの間にかコロナウィルスの震源地になってしまったヨーロッパ。私の住むオランダも昨日3/20の時点で感染者2994人、死者106人という中々の大惨事になっている。感染者1万人超えのドイツやフランス、そして言うまでもなくイタリアなどはもっと大変だろう。ほんの一ヶ月前までコロナウィルスのニュースを「アジアは大変だなぁ」と対岸の火事的に見ていたのが嘘のようだ。感染力の強さが半端ない。

そんな中、先週の木曜日(3/12)にオランダ政府が【100人以上のイベントは中止】【出来るだけ自宅勤務】という要請を出し、そしてその三日後の日曜日(3/15)には【学校と託児所も閉鎖】【すべての飲食業施設も閉鎖】【外出時はお互い1.5mの距離を保つべし】という要請も加えた。これは全て4/6まで有効だ。

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(*「しばらく閉まります。願わくば直ぐにまた皆さんに会えますように。」)

またこの発表は、同時にセックスクラブやコーヒーショップ(大麻の合法販売所)の閉鎖も意味していた為、この発表の後にはアムスのコーヒーショップで大麻愛好家たちの長蛇の列が出来たらしい。なんともオランダらしい光景だが、どけっこう本末転倒だ。

そんなわけで我が家の2軒隣にあるコーヒーショップも月曜日にはひっそりと閉まっていた。なんという異様な光景。朝も夜も関係なくストーナーたちが中でぼけーっとしている様子を見るのが毎日の日課だったというのにこれはちょっと寂しい。が、そのセンチメンタルな気持ちは一瞬で裏切られる。なんと火曜日にはドアが開いていたのだ。あれ、まさか内緒で開いてる?なんて思ったが、なんてことはない、どうやら『中に客を滞在させないカウンター営業ならいいですよ』と政府が要請を“微調整”したらしいのだ。というのも各都市の市長が政府に「いやいや、コーヒーショップを完全に閉鎖しちゃうと路上での麻薬取引が絶対増えるからそこはやめてよ」と言ったらしい。ついでにカウンター営業可能な飲食店も営業継続できることになった。本当に良かったと思う。

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(*テイクアウトはやってますよ!アピール)

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(*外にベンチがあるお店は、客が座ると困るので座れないように工夫)

テイクアウトは再開しても、狭い店内で他の客と近づかないように常に一発触発な状態だし、現金での支払いが一切不可能になっていたりと非常時な雰囲気はそれなりにある。そもそも街には人が少なく、公共交通機関を利用する人もほとんどいない。

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(*至る所に貼られいている、「1.5m離れましょう」の貼り紙)

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(*路面電車もガラガラ)

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(*唯一忙しくしているのは、UberEatsなどの宅配サービス)

コロナのワクチンが完成し実際に人々への使用が可能になるまで少なくとも1,2年かかると言われている今、明言しているかどうかはともかく基本的にどの国も集団免疫の獲得をコロナウィルスの収束と見ているのではないだろうか。ここまで世界中に感染が広がってしまった今、もはやウイルス感染者の封じ込めは不可能だ。オランダもその方針は同じだが、近隣のヨーロッパ諸国のように国民を自宅隔離するには至っていない。それはなぜだ?と指摘したメディアに対し、オランダのルッテ首相は“その判断はその国の集中治療室の数によるところが大きく、まだその数に余裕がある我が国は国民を自宅隔離して患者数を(大幅に)制限するほどではない。今後そうなる可能性はあれど、今はその必要がない。”という旨のことを話している。隣国にとりあえず足並みを揃えるのではなく、自国の状況とリスクバランスを加味して独自のやり方を選ぶところがなんともオランダらしい。

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(*鳩もゴーインゴマイウェイ)

そんなわけで色々と娯楽はなくなったが、今のところまだまだ自由が許されている今日この頃。公園まで散歩に行くと、普通に賑わっていた。行くところが他にないのもあるだろうが、やはり外に出て自然に触れたいと思うのは人間の性なのだきっと。

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しかし今は良くとも、いつ自宅隔離になるか分からないのが正直なところ。そうなれば、いくら願っても散歩にすら行けない。家に引きこもりながらも出来るだけストレスを少なく、かつ有意義に過ごすために考えなくては。

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(*とりあえず花を飾る)

これを機に今までどうしてもできなかったことを考えた。期限が決まっているというのが地味に良い。(期限が伸びるかもしれないという可能性は一先ず無視しよう。)そして考えついたのが以下の三つだ。

①腹筋を作る。

②本を一冊読む。

③パンを焼く。

なんともシンプルだが、意外と日常をダラダラ生きていたら出来ないことだらけだ。

まずは①、これは知り合いのライターさんの記事「コロナが怖くて引きこもっていたら腹筋が割れた話」を読んで触発されたという単純さだ。というのも私には腹筋が存在しない。小学生の頃から兄にからかわれ続けたポヨポヨのお腹をどうにかしなければと思いつづけて早数十年....やっと目を向ける覚悟が出来た。早速上のブログで紹介されているアプリを使い30日間のプランク筋トレを始めることにした。

本当にシンプルなアプリで、ただただ使いやすい。実は別に紹介されていたモデルさん直伝の腹筋が割れる筋トレもこれと一緒に始めたのだが、翌日に筋肉痛が酷くなりすぎて1日で断念した。とにかくソファから起き上がることができないほど腹筋が死んだのだ。3日経ってもまだ痛い、涙が出るほど貧弱な腹筋だ。

せっかくだからと夫も一緒に始めたのだが、誰かと一緒に始めると「もうやめちゃおうかな」という気持ちにストップがかかるのでオススメだ。寝る前にやると、寝つきが良くなる感じもする。というわけで筋トレ頑張ります。

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(*関係ない、リビングにある梅の枝。葉っぱをつけてて可愛い。)

次の引きこもり活動は「本を一冊読む」だ。私は本を買うのは好きだが、それを最後まで読みきることが中々出来ない。大体読み切る前に途中で飽きてしまうのだ。そんなわけで今回4/6までに絶対に一冊読み切ることを決めた。これをきっかけに自らの「本読みあさり症候群」を治したい。

選んだ本は、イギリスのフードライターJenny Linfordさんによる、The Missing Ingredient(足りない材料)

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(*「すべての食好きの本棚に置かれるべき本」と評されている。)

この間旅行先の本屋で、食好きの私のために夫が選んで買ってくれた本だ。まだ2割程度しか読んでいないが、既にすごく面白い。食にまつわるショートエッセイ集で「Seconds」「Minutes」「Hours」「Days」...などと時間の概念で章が区切られているのもアプローチとして新鮮だ。チョコレートのオタク話やコーヒーの焙煎話、人がどのように香りを感じるかの話や“ウマミ”の発見の話...読みながら出会う調理法や味の性質を表す英単語はどれもニッチで英語の勉強にもなる。blanching(さっと湯通しする)の話を読んだあとは、さっそく感化されてチンゲンサイの中華風を作ってみた。ささっと2分ほど茹でて直ぐに冷たい水に移し、水気を切ったあと皿に持って上からにんにくの香りを移した油とオイスターソースを垂らすだけ。シンプルながらに、かなり美味しい一皿だった。(ちなみにレシピはこちら。)

この本に加え、最近NetflixのCookedという番組を見ていて思いついたのが③の「パンを焼く」だ。もっと詳しく言うと「“本物”のパンを焼く」だ。これはもう10年くらいやろうやろうと思っていて、ずっと出来ていなかったラスボス的存在だ。市販のドライイーストを使うのではなく、穀物と水を混ぜたものを一週間以上かけてゆっくり発酵させて天然のサワー種(ルヴァン種ともいう)を作るところから始める。こうやって作るパンは「消化しやすくて胃に優しい」「グルテン不耐性の人も大丈夫」「風味が素晴らしい」と最近巷でジワジワ人気だ。多分。そもそも3500年も前から人間が食べ続けていたこの健康的なパンは、ここ数十年でメイドイン工場の安価で風味もへったくれもないパンもどきにパンの座を奪われてしまったのだ。なんて嘆かわしい。せめて我が家の中だけでも本物のパンを食べなければ!

というわけで早速近所でガラス瓶を買ってきて、適当にネットで拾ったレシピでスペルト小麦全粒粉と水を混ぜた元種を仕込んだ。うまく出来ることを祈ろう。

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次にパンを焼くための容器をネットで探す。別になくても焼けるはずだが、ここはひとつ気分を上げていきたい。店舗への来客が見込めない今どこもオンラインショップに力を入れているようで、10%OFFをやっているオランダの田舎の鍋専門店でオーブンポットを買った。最近はネットショッピングをするにしてもできるだけ某大手ではなくローカルビジネスを選ぶよう心がけている。微力ながらも小売店を応援しなければ。うっかり10%OFFのクーポンコードを入力しないで購入手続きしてしまい、ガーン!となっていたが、ダメ元で事情を説明したらすぐに10%分の代金を返金してくれた。なんてありがたい。大手サイトでチャチャっとキャンセル手続きする方が圧倒的に楽なのに、不思議とこういう手間のかかるやりとりをした方が気持ち的に満たされる。人の顔が見えるのはいいことだ。

そして2日後に届いたそのポットがこちら。

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(*一見ただのボウル)

Emile Henryというフランスのメーカーの、その名もPotato-Potという商品。密閉性が高いので水なしでポテトを完璧に調理できるこの子はパンを焼くのも大得意らしい。パン生地を入れてオーブンに入れれば、ふんわりとしたカンパーニュが焼けるのだ(きっと。)

元種は今日も元気に発酵しており、先ほどまた餌をあげた。英語ではfeed the starter(元種に餌をやる)という表現をレシピ上で使っているが、日本語でもそう言うのだろうか。なんだかペットを育てているみたいで愛おしい。さっそく「とみ子」と命名しようとしたが、夫から『それはバアちゃんの名前だ。』と言われたのでやめた。代わりに一番目という意味で「いち子」と名付けよう。

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そんな今日はびっくりするほどの快晴。外に出るとなんだか人が多い。晴れることが少ないオランダでは、晴れると皆我慢できずに外に出てしまうのだろう。昨日までは閉まっていたカフェやレストランが、テイクアウトの体制を立て直して再オープンしていた。感染者が増えるかどうかはさておき、活気付いている街はやっぱりなんだか嬉しい。まぁ私は引きこもる準備万端だけれども。

(おわり)



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