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コロナ状況下での共感されやすい、企業発信のコミュニケーションを考えてみた

はじめまして。
私は、普段BtoC基盤のプラットフォームサービスで、BtoBプロダクトの事業企画をしています。企業とユーザー間のコミュニケーション設計だったり、それを支援するBtoBプロダクトについて日々考えています。

先日コロナ状況下での企業コミュニケーションについて社外で話す機会がありました。それをきっかけに、普段考えていることがまとめられそうだなと思ったので、少しずつnoteに書きとめてみます。(初投稿どきどき・・・)

第一弾は、「今」コロナの状況下で共感される企業発信コミュニケーションについて。実際に自分が触れた事例を紹介しながら、背景にある流れや「今」共感されるコミュニケーションのかたちについて考えてみたいと思います。

📨テキストメインの”手紙”っぽい広告が増えた

コロナ状況下で広告による情報発信を自粛する企業・ブランドもあるなかで、普段よりもなんとなく増えたなーと思う企業からのコミュニケーション手法があります。それは、企業発信で、顧客へのメッセージやブランドの姿勢・ステートメントを伝えているテキストタイプのものです私は途中から勝手に”お手紙”コミュニケーションと名付けて呼んでました笑

こちらについて、具体的に見つけたものをいくつか紹介します。 

その1: Googleの屋外広告 「いまは、家にいるのがいい」

まずは、このGoogleの広告。5月初旬に周りが真っ白な広告ばかりのセンター街で、ひときわ目立っていました。(自転車に乗りながら急いで撮った写真なので、めちゃめちゃ読みにくい・・・)

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いまは、家にいるのがいい。
家にいて、本を読むのがいい。外国語をひとつ勉強してもいい。しばらく会えてないあの人に連絡するのもいい。鉢植えの手入れをしてもいい。いまは、時間をかけていい。
 だいじょうぶ、きっと晴れた日が来る。(〜続く)

テキストオンリーで、とにかく「だいじょうぶ」「〜をするのはいい」と、とにかく肯定を全面に出している姿勢が鋭く伝わってきます。

その2:ノジマの交通広告「いま、ノジマができること」

そして、こちらはノジマの交通広告です。6月に入って、人によっては元に戻りはじめて通勤が始まったくらいのタイミングでしょうか。

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人との非接触が当たり前になる新しい時代になりそうです。
でも新しい生活スタイルを始めるにはやっぱり人によるサポートが必要です。
(中略)
お客様との間に社会的な距離が必要になっても、心の距離だけは変えたくない。ノジマは今後もお客様のお困りごとにそっと寄り添ってまいります。

ソーシャルディスタンスが求められるなかで、近い距離でのサービスを届けなければならない。そのことを、受け手の目線に寄り添って伝えようとしている姿勢が素敵だなと思いました。こちらもGoogleと同じくテキストメインです。

その3:MARNIのSNS投稿

これはMARNIのLINE公式アカウントでの、タイムライン投稿の内容です。

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「マルニを愛する皆さま」という宛名や「私たち」という主語。そして今回のコロナ禍においてブランドとして考えた・知ったこと、今後やりたいことという内容に、非常にパーソナルな温度感を感じます。

その4:Rouje PARISのECサイト 

最後にこれは広告ではないですが、パリのアパレルブランドのRouje PARISのECにて。まさに手紙っぽいUIデザイン・構成になっていて、これを見た瞬間に名付けました笑

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※「Dearest filles en Rouje, 」というのは「親愛なるRoujeファンのみんなへ」的な感じでしょうか。

👍”手紙風”コミュニケーションの共通点と、今の状況にフィットしていると思う理由

これらの4つのコミュニケーションに共通するのは、

・主語が企業・ブランドであること
・ブランドの姿勢・ステートメントや顧客へのケアにまつわる内容。商品を直接訴求していないこと
・テキストメインのクリエイティブであること

という点です。他にもこういったタイプのコミュニケーションを目にした方が多いのではないでしょうか。

私としてはこのような”手紙風”タイプ、とても今の状況にフィットした、共感されやすいコミュニケーションだなと感じています。なぜかというと、受け手の課題に寄り添う姿勢が伝わる設計とフォーマットだからです。

後で詳しく触れますが、Beforeコロナ時より共感されやすい企業発信のコミュニケーションには、世の中に潜む何らかの課題やインサイトが設定されることが多いです。通常は課題を設定し、その課題を一緒に解決しようとすることで共感が生まれるという構造です。

ただ今の状況が特殊なのが、コロナという前提が切っても切り離せないこと。そして「新型感染症による皆が不安な状況」という課題設定をした場合に、企業単位で根本解決することが難しい・できないことです。そのなかで共感されやすいコミュニケーションをするにはどうしたらいいのか? この企業側も戸惑う状況をそのまま表現したのが、話題になったKINCHOのケースバイケース新聞広告「もうどう広告したらわからないので。」だったのかもしれません。

この問いに対する一つの手法が、課題は解決できないけれど、一緒に寄り添うという姿勢を見せるコミュニケーションなのでは?と考えています。そして、この寄り添う姿勢を見せるために、テキストメインのメッセージのようなクリエイティブ表現が増えているのかなと思っています。

※フォーマットについて。
もしかしたら、テキストメインのほうが今のクリエイティブ制作環境に適しているからというのもあるかもしれません。クリエイティブ制作側もリモート環境下で撮影等がしにくいのと、状況変化に応じてスピーディーに制作する必要があることが背景にありそう。この点に関してはその道のプロではないので、仮説までに。。

🤝 背景: 共感されやすいコミュニケーション”DO型”とは

結論からは少し話がずれますが、背景となる流れについて触れさせてください。今回の事例を見るなかで、強烈に思い出したのは【SAY型→DO型コミュニケーションへの変化】というコミュニケーション設計のテーマです。今の「ソーシャルグッド」という考えにつながる流れなのですが、(今調べてみると)2012年頃に言われはじめた考え方になります。

本来広告とは「広く告げる」、つまりSAY型(情報発信/"What to Say? ")コミュニケーションをメインとしてきました。

ただ情報量が人の処理能力を超え、かつソーシャルメディア上で共感ベースで情報が伝わっていく今、単なるSAY型だとコミュニケーションとして埋没してしまいます。そのなかで共感され、情報を届けたりブランドを理解してもらうためには、SAY型だけではなく、企業がどう振る舞うか( "What to DO?")というDO型のコミュニケーションが重要になってきた、という考え方です。

SAY型とDO型については、これだけでワンテーマになるレベルですが、私のなかでは、捉える課題対象とやり方、手口が違うのではないかなと考えています。

SAY型とDO型

商品に関わる情報発信に留まるのがSAY型、企業・ブランドの振る舞いも含めたコミュニケーションまで設計されるのがDO型という区別がいいかもしれません。

実際に事例を見ると分かりやすいので2つ挙げておきます。成功事例とよく言われるのは、GODIVAの「日本は、義理チョコをやめよう」やパンテーンの「#1000人の就活生のホンネ」。どちらも企業のDO・振る舞いまで設計されているキャンペーン事例です。

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※補足。裏側のコミュニケーション設計についての私の仮説です
▼GODIVA
課題:義理チョコが義務化し、苦痛にさえなっている世の中の見えない不満がある
→お菓子メーカー自体が、バレンタインのチョコをやめようと”提言”するDOを起こした

▼パンテーン
課題:好きな髪型を染めて画一的な「ひっつめ髪」にせざる得ない就活生の不自由な状況
→「HairWeGo」をブランドメッセージとするパンテーンが就活生のホンネを”代弁”するDOを起こした

🤔課題に寄り添うタイプのコミュニケーションはSAY型か?DO型か?

さて、テーマである”手紙風”コミュニケーションに戻ります。なぜ今回先程の【SAY型→DO型の話】を思い出したのかでいうと、「あれ?これSAY型に戻ってないか?」と最初不思議に思ったからです。
なにか課題に対して行動を起こしているわけではなく、シンプルに企業・ブランドのメッセージ・ステートメントを伝えているだけになるので、やり方だけを見ると情報発信のSAY型とも受け取れます。

ここからは私の解釈ですが、今回の例を踏まえると、DO型を2パターンに分けてもよいのでは?と思います。

まず、GODIVAやパンテーンのように、課題に対して実際に提言や代弁をして解決しようとするパターン。これは分かりやすく行動をしているのでDO型です。
そして今回のコロナのように、世の中の課題の根本解決が難しいため、一緒に寄り添う姿勢を見せたり、応援するパターン。テキストフォーマットだと一見SAY型に見えますが、これも世の中の課題が対象であることと、”振る舞い”という意味ではDO型と言えるのではないでしょうか。
さらに今回は、自粛という選択を取る企業も多いなかで、メッセージを発信すること自体がDO型になっていたとも考えられます。

DO型2パターンv2

先述のSAY型とDO型の対比にさらに加えると、このような分岐のイメージです。コロナ状況下においては、課題解決が難しいという特殊ケースだったため、寄り添う・応援するという企業行動で共感が生まれたのではないかなと思います。

そして、寄り添うという姿勢の表現手段を突き詰めたときに、人格が表現しやすく、パーソナルな温度感が伝わる”手紙風”のクリエイティブになったのではと・・・このクリエイティブの落とし込みはもう少し深堀りしたいです。

📝まとめ

共感を考える上で、情報発信のSAY型→振る舞いまで含めたDO型コミュニケーション設計は今後も重要です。ただDO型のなかでも、GODIVAやパンテーンのような課題解決のための行動だけが唯一のやり方なのではなく、寄り添う・応援するという姿勢でもよいのかもしれません。

コロナは特殊ケースだと書きましたが、このような【課題解決できない課題】に対するコミュニケーション設計が必要になることはあると思います。そんなとき今回のような”手紙風”コミュニケーションが、ひとつの手法として今後も出続けるのかなと期待しています。ウォッチ続けたいです👀

おまけのメモ

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SAY型とDO型について、あまりWEBに情報がないのですが、私はグレイワールドワイド・名古さんの講座で知りました。下の記事も近い論点だと思います。

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Googleのメッセージで感じたのは「ひらがな」多用のライティング。こちらのnaoさんの記事が参考になります。

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SAY型とDO型に近いコミュニケーションの切り分けで、尾形真理子さんの「赤色(強い言葉)」「水色(弱い言葉)」のコミュニケーションという話も思い出しました。この表現も面白いです。

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実際にこういった企業の姿勢に対して、受け取る側もポジティブな反応があったというレポートもありました。


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