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詩「空と海を」

海は沈まない。
空は浮かばない。
わたしたちの繊細な夕暮れが、
どこまでも伸びてゆく春。
やんわりとした肌合いで、
とつぜん射るように冷たく光る。
そこかしこで閉じるものの気配が、
咲くもののはじまりを開く。

手のひら一つ分の今日が
軽いのか重いのか、
量るのはどこまでも自分だ。
軽いと思ったって
まちがってはいないし、
重いと思ったって
まちがってはいない。

空と海を混ぜるように、
そこにあるものを壊して
やっと、
息ができる。
沈みながら浮いているような
わたしたちだから、
どこへいってもどん底など来ない。
それが少し絶望だったりもするけれど、
せめぎ合う一本の境界を
超えるようにして生きていこう。
境目なく終わりのない、
空と
海を
混ぜる。


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