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つむぎ

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詩人・佐藤咲生。
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#ポエム

Poem|ちいさな魂

米を研ぐ音
波の音

料理に塩をつかい
血液は血潮
とじた皮膚のすきまから
汗がこぼれてく
海があり陸があり
空へも行けるとおもった

海外旅行のトランク。
観葉植物に水やり。

世界はひらかれてゆく
ちいさな魂ひとつで

ちいさな魂/佐藤 咲生

Poem|蕾

親指と人差し指を寄せながら
Googleマップを縮小し
わたしのいるばしょを見失う

世界はいつも 蕾のままおわる
わたしには
その全容を捉えきれないし
すべてを把握しようとする
つもりもない
ゆえに想像できる
ひらかない花は
わたしのからだの奥で
何十回も 冬を越す

わたしの生活の舞台には
もうすぐ春が訪れる
ふとした光の角度が
いつもと違うことに気づき
わたしはすこしかなしくなる
紅茶を淹れ

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Poem|ボヤージュ

思い通りにならない体も
夜明けの方にしか進めない
凍てつくような空気に
心まで冷やして
からっぽの呼吸がこぼれる
地球最後の日にも
夜は変わらず明けると
予感させる
祈り

住み慣れない街もかならず
夜明けの方へ流れていく
瓦礫だらけの海も川も
なくしたものばかりの心さえも
全部 夜明けの方へ進んでいく

役に立たない祈りが
朝焼けの光にぼやけます
ボヤージュ
目に見えない流れにのって
いつまでも

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