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つむぎ

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詩人・佐藤咲生。
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2021年11月の記事一覧

詩「流れ星」

胸の奥にひとすじの
流れ星が流れ、流れて消え
これが最後であればいいと思いながら
眠りに落ちた

いらないものなど一つもない
かといって手放し難いものもない
小さい粒になって
ただ底へ、底へと落ちていき
光の速さで擦り減りながら
輝いて、最後に底にコツンと当たる衝撃で
燃え尽きる
そんなはずだった
落ちているあいだは夢なんて見ていなかったよ
ただ感覚がどんどん抜けていき
そのうち光も闇も一緒になっ

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詩「明け方の月」

私が揺れているあいだに
あなたの大地は固まり
私の雲は軋んで
今夜は月が二つ見える

だいじょうぶ、どっちが偽物とかないから
同じように美しくても
どちらかを信じなきゃならないのなら
私は先に見えなくなる方を信じるよ
だから明け方までこのまま、ここにいよう

私があなたの瞳を覗き込めば
ちゃんと絶望が見えるように、あなた生きていて
あなたの映す希望が、私には絶望に見えるように
その瞳の弦は
きれい

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詩「月へ帰ろう」

貯まったポイントを使ったから
今夜の夕食は豪華にできるね
その前に公園に寄って
すこしだけ上達した、逆上がりの失敗をみせてよ
白い月がひそかに現れたから
ここをおとぎ話の世界に変えてくれるかな
砂利をふむ私たちの足が
何も急いでいないようにみえること
ゆっくりと石を鳴らして
歩いているのか、沈んでいくのか、
それすらもわからないようになれば
知らぬうちに二人だけがゆっくり消えるような気がする
もう

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