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賃金はどうあるべきか? -壺中人事塾での学びシリーズ-

9月頭から、坪谷邦生さんが塾長の「壺中人事塾」に参加しています。

毎週の講義内容に合わせて、その講義からの学びを記事にする取り組みを先週から始めました。

主に自分の学びのために始めたものですが、たくさんの反響をいただきとても励みになっています!誰にも読まれなくても書き続けるつもりで始めましたが、やっぱりたくさん読んでいただけるとそれはそれで嬉しい!!応援してくださったみなさま、心からありがとうございます!

さて、今日のテーマは「賃金」です。

自分の賃金に満足?

講義の中でこんな問いがありました。これまでの自分自身の賃金に満足だったか、不満だったか?そしてその理由は何か?

私の場合どうだったかな・・・と考えてみると、満足、だったなと思います。というか、気にしたことがなかったというのが正しいかもしれない・・・

いつも目の前には面白い仕事があってそれに夢中で、毎月口座にいくら振り込まれてるのかは一応給与明細で見るけど、自分の仕事の結果としていくらもらえてるのかなんてどうでも良かったし、自分の年収がいくらなのかも、そらで言えなかった・・・・(しかしこうして今振り返ると本当に恥ずかしい・・・とても視座が低かったし、狭い世界にいたなあと思います。もっといい意味で欲深くても良かったなあと)

いずれにしても、普通に生活して遊んで大事な人にプレゼントをするくらいのお金はいつもあったし、また、在籍中に2回産育休を取得して時短勤務をしていましたがリクルートの制度では時短勤務になっても勤務時間が短くなるからという理由だけで賃金が減ることはない仕組みになっていました。あくまでもその時間の中で担えるミッションに応じた賃金になっていたからです。働く時間がどうだとか、子どもがいるとかいないとかいうような個人の状況に依らず、シンプルに自分の目標に対しての報酬が得られる仕組みはとても納得感が高いものだと在籍当時から思っていました。

※リクルートの時短勤務の際のグレードの考え方はこういう記事にあります(公式の記事を探したんだけどなかった・・ごめんなさい)

さて、一般的に人々は自分の賃金をどう捉えているのかという調査結果が講義の中で紹介されていました。
あしたのチームさんの調査です。

この調査によれば、「お勤めの会社でのご自身の給与額に満足していますか」という問いに対して、こんな結果が出ています。満足・やや満足の人は39%、やや不満・不満の人は61%と。

株式会社あしたのチーム 人事評価と給与に関する調査より

満足/不満、それぞれの理由に対しての回答に関してはこのような解説があります。

「満足」「やや満足」と回答した方は、給与額決定方法や仕組みに気になる点があったり、もっと欲しいという気持ちがあったりしても、月給額が納得いくものであれば満足と感じる傾向があるようです。一方「やや不満」「不満」と回答した方は、給与額決定方法や人事評価の仕組みに対する不満が給与額への不満につながっているようです。特に、どのようにして給与額が決まっているのか不明瞭という方は、ご自身の給与額に納得しにくいのも当然と言えるかもしれません。

株式会社あしたのチーム 人事評価と給与に関する調査より

つまり満足の人は、自身の賃金の金額に「納得」している人たち(私もこれかも)。一方不満の人は自身の賃金の決まり方・仕組みの方に不満があるようです。

職務給と、職能給の話

ちょっと脱線しますが・・・お恥ずかしながら、賃金の話の中で出てくる超基本的な概念、「職務給」と「職能給」の違いって、みなさん正確にわかります、、、よね。分からないの私だけですよね・・・

定義はなんとなくわかりますよ。坪谷さんの「図解 人材マネジメント入門」でも、職務給とは、現在遂行している仕事に対して支払われる賃金であること。職能給とは、職務遂行能力に対して支払う賃金であることが解説されています。(坪谷邦生「図解 人材マネジメント入門」p62-63)

でもなんかいつも頭が混乱してしまう・・・と思い、もう少し調べてみました。楠田丘 著「日本型成果主義の基盤 職能資格制度」この本を、塾のメンターさんから教えていただいていたので、何かヒントがあるかなとめくってみました。1901年(明治34年)、日本の近代化が始まる官営八幡製鉄の創業から今に至るまでの賃金の歴史が書いてあります。

この時日本には熟練労働者がいなかったため高いお金を出して外国人を採用し、豪勢な住宅などを提供し多くの投資をしました。それらの人材の流出を防ぐため、いわゆる終身雇用・年功賃金・退職金制度という「3種の人器」がここで始まったとあります。

こうして明治34年から始まった日本の年功賃金はその後、1945年まで続きます。終戦とともにGHQが日本に君臨し2つの大きな変革をもたらしました。ひとつはアメリカ型の職務給を日本に入れよという指示。もうひとつは労働組合の力を支援する政策です。これによって年齢別の生計費に準拠した年齢給7割、職務手当3割という形で戦後の賃金体系がスタートしました。

その後、1973年のオイルショックによって日本の経済成長率は大きく落ち込みます。年齢給では、所属する従業員の年齢が上がるとともに賃金は右肩上がりになっていきますが、このオイルショックによって従来の右肩上がりの賃金カーブに耐えきれなくなりました。このことを契機に、年齢給よりも賃金カーブをゆるやかにした職能給体系の導入が始まります。こうして、1975年以降、日本の賃金は本格的に能力主義に移行することになりました。

しかしこの職能給体系も、1990年代半ば、いわゆるバブルの崩壊により維持できなくなります。ここから21世紀を目指して新しい人事・賃金体系の模索が始まり、そのひとつの結論が能力主義プラス成果主義、いわゆる人間基準の日本型成果主義のあり方だとありました。
(ここまで、楠田丘「日本型成果主義の基盤 職能資格制度」p.7-9を参照し要約しました)

この一節自体は、へぇぇぇこういう歴史があったのね!知らんかった!恥ずかし!と大変興味深く読んだのですが、しかし、まだ分からないことがあります。長年お世話になったリクルートの賃金は、職務給だったのか?職能給だったのか?・・・・という超基本的でこれまたお恥ずかしい疑問・・・これまで職能給だと思って過ごしていたけど、よくよく考えると、期待されるミッションに応じて賃金が決まるミッショングレード制は、職務給とも職能給とも違うような・・・?と思って頭が混乱し始めましたw  でもこれはきっと、壺中人事塾の講義の「等級」の回まで受けると謎が解ける気がするので、今日のところは保留します。知ってる人もまだ私に答えを教えないでくださいw w

賃金はどうあるべきか?

さて、だいぶ寄り道をしましたが、賃金の講義の話に戻ると、最後の問いはこれでした。

ここに関しては、「図解 人材マネジメント入門」から引用します。

外的報酬とは、足りないと不満になりますが、多くてもやりがいや満足にはつながらないものです。満足ではなく、納得を目指す。それが正しい姿勢です。(中略)賃金に納得してもらうためには、「正しく設計された等級」「公平感ある評価結果」を根拠に「透明性高く」公開されており「丁寧な説明」がなされることが必要です。給与明細を見ながら、賃金を説明するならば、それは等級と評価結果を根拠とした説明となるでしょう。「職能等級が3級で能力評価がAだから、テーブルに照らすと30万円になります」と。完全な満足は得られないかもしれませんが、納得することはできるでしょう。その上で根本的に不満の解消を図るならば、評価を上げるか、等級を上げるか、企業を変わるか、という選択肢が待っています。

坪谷邦生「図解 人材マネジメント入門」p72より

つまり大事なのは「正解より納得解」であり、正しい仕組みを作ったからうまくいくというものでもない。納得が得られるよう、コミュニケーションも含めて運用していくことが重要、というまたまた首がもげそうな話で講義は終えられました。

おわりに

実は今回の講義は子どもの誕生日と重なっていてリアルタイムで参加できずアーカイブで見たので、毎回楽しみにしている「放課後」(講義のあとの雑談)も今回は参加できず、毎回連発される放課後での坪谷さんはじめファシリテーターみなさまの金言を聞くことはできませんでした・・・

でも講義本編でもたくさんの金言がありましたので、そちらを紹介して、今日の記事をおしまいにします。

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・給料が不満だ!と言っている人は、等級、評価、賃金、これらを全部混ぜてなんとなく「不満だ」と言っていることが多い。「分かる」は「分ける」だから、等級、評価、賃金を分けて説明してあげることで納得が得られる場合もたくさんある。

・人事は運用が命だとよく言われる。運用8割、仕組み2割は真理ではあるが、かといってこの2割の仕組みの部分もおろそかにはできない。仕組みに魂が込められていなければ、8割部分の運用もまわらない。

・納得を得るためには、人事担当者自身が、なぜこうなっているかをちゃんと語れることが重要。そこに意志がなければならない。他社から借りてきたような人事制度では従業員の納得など得られるわけがない。
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