畑は私をキッチンに向かわせる
畑をはじめてから明らかにキッチンに立つ時間が増えた。
畑で採ってきた大量の野菜を洗うことだけでもかなりの時間がとられる。
スーパーに売っている、きれいでツルツルなお野菜さんたちが不気味に思えるほど、畑から採ってきた野菜は汚い。
水の中に沈めて洗うと虫や泥が浮かんできて、水を変えてまた洗ってもまた泥が浮かんでくる。
そんなことを繰り返してやっと料理する準備が整う。
さて料理だが、畑からのお野菜は旬になればたくさん収穫でき、時期が過ぎればなくなる。
つまり1つの食材を大量消費できるようなメニューが好ましい。
「7種類の野菜スープ」などヘルシーメニューとしてレストランで提供されるお料理がいかに旬を無視していてちっともヘルシーじゃないかを実感する。
大根の時期は大根。と、その葉っぱだけ。
お裾分けしながらも、家に持ち帰る大量のお野菜は放置すればかならず腐る。自分が育てた野菜だからプライドもあって絶対に無駄にしたくないし、おいしく食べたい。
野菜は冷蔵庫の中でだんだん傷んで色を変えながら私を急かす。
「早く料理してくれないと腐っちゃうよ~」って。
だから私は多忙な日々の貴重な時間を割いてキッチンに立つ。
でも、こういう非効率でスケジュール通りでない「超自然な生活サイクル」が自分の生活のなかにできて私は少し嬉しい。
「暮らしのプロセス」を無視して生きることができる今の社会の中で、「めんどくさいこと」「非効率なこと」が増えるとなんだか生きている心地がする。
畑をはじめて、省略されてきた私の「暮らし」が戻ってきた。
自分が育てた野菜をキッチンで調理するのはなんとも人間臭くて贅沢な時間なのだ。
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