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八月、ぼくらの後悔にさよならを~私のアウトロー感想文~

どーも、どーも。あなたの隣の闇作家、紫藤咲です。過去三回やらせていただきました感想文がとても好評でしたので、今回、第四弾を開催することにいたしましたー! 

ちなみにアウトロー感想文、ここ四回はお知り合いの作家さんを中心にさせていただいております。そのうち、一般文芸のほうもやりたいなあと思っておりますので、この企画を一緒にもりあげていただけると紫藤のやる気があがります(笑)

さて今回は【八月、ぼくらの後悔にさよならを】です! こちらの本の著者様の小谷杏子さんとはカクヨムという小説サイトで知り合い、さらにTwitterでちょこちょこお話をさせていただいております!

今回、この本をとったきっかけはというと、私の行きつけの本屋で平積みでいらっしゃったからです!!!!

平積みってわかります? 本棚に並べているのではなく、目に付くように表紙を上にして積んで売っている状態のことです。発売からわりと日が経っているのに、未だに平積みされている。これはもう良作の予感! ということで、今回、耐えきれずに手を伸ばしました!

おおおおっ! と読んで思いました。なるほどなあと。

ではなんでなるほどだったのか。いつもの通り、闇属性ならではのアウトローな読書感想文にて解説していきたいと思います。なお、これまで同様「え? こんなお話だったっけ?」「え? ちょっとそれ本当!?」と思われたとしても、一個人の勝手なダーク感想なので、それはそれ……ということでとらえていただけるとありがたいと思います。

しかしながら、これもこれまで同様、超絶おススメ本であるという点は変わりません。私の感想を聞いてみて、興味を持っていただければさいわいです。

なお、今回も感想文の最後に著者である小谷杏子さんから読者様へのメッセージをいただいております。楽しみに最後までお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします!

では、さっそくこの本の魅力をひも解いていきましょう!

★青春時代にしかない透明感

大人になると「汚れたなあ」などと口にすることが多いのではないでしょうか。この作品には『青春時代にしかない透明感』で溢れているんですよ。

じゃあ、キラキラ小説なのか!?

と身構えてしまったあなた。そうじゃないんですよ!

主人公はある悩みを抱えています。それは透明とういう言葉とは違った意味の、とても暗くてドロッとした得体の知れないモノなのです。誰にも本音をぶつけられない、もどかしく苦しい悩みを抱えた主人公が冷たくて透明な海の中に閉じ込められてしまっている――それも含めた透明感です。

思春期独特の感性が冷たい海の棺のように主人公を捉える様子を私は感じずにはいられませんでした! ひんやりと冷たくて、抜け出したいともがく主人公に手を差し伸べたくなる気持ちをぜひ体験していただきたいのであります。

★ヒーローは強いわけじゃなかった

この小説。とても淡くて切ない純愛が描かれています。そして、その物語の主軸となるヒーローが完璧に強いわけでもなく、実体があるわけでもありません。そう、このお話のヒーローは『幽霊』です。

幽霊との純愛???

と思いますよねえ! 純愛です。それも超絶じれったい系!

ヒーローが強くないからとか、積極的でないからというわけではないです。まだ大人になりきれない少年らしい弱さがあるのがたまらなくいとおしくなるんです。そして完璧に強くないからこそ、守りたい女の子のために強くあろうとするんです。そのけなげな姿におばちゃんは背中を押して、せいいっぱい応援したくなるんです。もうねえ、必死に応援していましたよ! ダメだ! がんばれ! きみしかいないんだ、サトルくんっっ!って。

で、ラストを読んだときにねえ、たまらなくなります。本当にとんでもないヒーローだったんですから。このヒーローたる理由を知ったら、じわんと胸が熱くなること必至です!

そして叫びますよ!

「きみは最高だよ!」って。

★明日があるわけじゃない

この強烈なメッセージは主人公たちの会話の中でも出てきます。

私たちは明日があると思って生きています。だからいろんなことを後回しにするし、日々をのらりくらりと過ごしていることも多い。だけど人間、どこでどうなるかなんてわからないんですよね。

ちなみに私はこの話を読んで、我が子たちの未来を思いました。自転車通学している高校生の息子。先日、自転車の違反切符を切られました。今回は違反切符を切られて済みましたが、もしかしたら大きな事故につながっていくかもしれません。そうなったとき、息子の未来はどう変わっていくのか――と思ったら、すごく胸が苦しくなりました。

私だってそうです。夏前に受けた子宮頸がんの検査が思わしくなくて、精密検査をしたとき、明日のことを考えました。生きていられる時間があっという間に短くなってしまった気がしたんです。

そうやって考えたら、一生懸命生きなくちゃって思ったんですよ。それも自分のために。一回しかない人生を後悔しないようにって。

人はなにか大きな出来事がないと、今のしあわせに気づきません。コロナウィルスによって世界が変わったことで、これまで不満だらけの生活がなんてしあわせだったのかをかみしめる日々を送ることになりました。そういうメッセージがぎゅっと詰め込まれているんです。

明日を生きるために今日をがんばろう――

あなたの背中をそうやって押してくれる作品であることは間違いありません。

★ミステリー仕立て

これ、純愛ラブストーリーなんですけど、ミステリー仕立てになっています。お話のきっかけが『幽霊になってしまった理由探し』なんですけれど、その理由を主人公は追いかけていきます。そして過去を遡ったときに見つける真実に目を見張ります。

これねえ。ラスト知ると「まぢかああああああっ!」ってなります。なったあと、ラストの主人公と幽霊の彼との会話に胸アツになるんですよ!!!!

このふたりは出会うべくして出会ったし、初恋はこんなにも切なくなるんだって、あらためて思い知らされるんです。

きっとあなたも思い出します。あなたの大切な初恋を。そしてなんとも切なくなるわけです。初恋ってガラスのようにきれいで儚いんだって。

★ファンアートに込めた思い

八ぼく

今回の私のファンアートは海の中に閉じ込められた主人公をイメージして描きました。これについてはすでに解説したとおりです。ただし、このイメージには続きがあります。

私はこれ、ヒーロー目線で描いています。海の中に閉じ込められた主人公を見つめるヒーローです。そしてこの後、彼は彼女に手を伸ばします。彼女の手を握って、海から引き揚げていく――

イラストの左端が光でぼやけているのは、ヒーローが放つ希望の光だとおもってください。

そういう妄想を掻き立てるお話でした。そして今回のイラストはこの作品のおかげで新しいチャレンジを試みることも可能にしてくれた――私には忘れられない作品であるのは間違いありません。

★最後に著者小谷杏子さんの思いをみなさまへ

幽霊と女子高生、そして払い屋、普通とはちょっと違う価値観を持った先生(大人)という組み合わせは私の中ではテッパンで、どこかしらそういうモチーフを使って小説を書いてきました。
気づいた方は気づくだろうなぁ、と思う小谷杏子小ネタみたいなものも忍ばせてます。(これに気づいた方はかなりマニアックな小谷杏子ファンです)
とは言え「初めまして」の読者さんばかりでしょうし、わからなくて大丈夫です!笑
詳しくは小谷杏子が書いたネット小説や同人誌にあります。探してみてください。
多分、それが「はちぼく」の元祖です。

さて、おふざけはここまでにして、真面目に話します笑
私の原点であり、出発点でもある本作にはたくさんの思いを詰め込みました。
2019年は渋谷の交差点で事故がありましたね。そして、京都アニメーションの事件。
その痛ましい事件をリアルタイムで追いかけていたときに出来上がった作品です。
そして、いまはコロナで苦しい時期……どこか他人事に思えることも、もしかしたら明日、あなたの身に起きるかもしれない。この世に当然はありません。
これからの生活、どうなるかわからない不安を抱えながら生きている方へ、せめてもの慰めになれればと思います。
頑張っていきましょう!

★最後にアウトローではない感想を

人には視えないものが視えてしまう真彩が出会ったのは幽霊のサトル。彼の死んだ理由を一緒に探す真彩はその過程で、今まで目をそらしてきたものと向き合うことになる――透明感のある青春ストーリーに思春期の女の子の抱える悩みを上手に練り込んでいる。読後はとても爽やかで明るい未来を予見させる。読者は必ず思い出すだろう。サトルの笑顔と共に彼の言葉を――

その言葉はぜひ自分の目で確かめてください。

後半からラストまでの押し寄せてくる感情の波があなたの心の芯まで揺さぶることでしょう!


最後までお付き合いくださり、ありがたとうございました!

次回もお楽しみにー!

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