夫婦のキャリアはトレードオフなのか
結婚4年でシンガポール→東京→ロンドンの3か国を巡った夫婦のキャリア観(妻目線)
「ロンドンに転職してもいい?」
最初に夫が「ロンドン」という単語を発したのは昨年の秋ごろだったと思う。夫も私も、今までロンドンにはゆかりがない。しかもコロナ真っ只中。
でも、この言葉を聞いたとき、実は私は少しほっとした。夫が最近仕事で無理してるのを感じていたからだ。
日系企業に馴染まなかった夫
夫はとある外資系企業@シンガポールに勤めていたが、私たち夫婦の生活拠点をシンガポールから東京に移すために、日系企業に転職した。
でも残念ながら、半分外国人のような夫は、新しい会社にあまりフィットしなかったようだ。
最初のうちは「自分の苗字の印鑑もらった~!」とか「稟議まわした~」など初めて経験する伝統的日本企業の文化を楽しんでいたようだが、徐々にトーンダウンしていくのが見て取れた。(まさに異文化適応の過程である)
そんな彼を傍目に私は「申し訳ない事したかな。。」と後ろめたい気持ちが募っていた。
なぜなら、シンガポールから東京に拠点を移したのは私が古巣の職場に復帰することが目的だったからだ。(他にもあったが、その話はまたいずれ)
自分のやりたい仕事が、夫の我慢とストレスの上に成り立っているとしたら、あまりいい気はしないものだ。
動き出す夫
半年ほど経った頃、いよいよ夫は決意を固めたようで再び転職活動を始めた。最初は勤務地が東京で、私が今の仕事を続けられる地域を中心に探してくれていたようだ。
しかしながら世間はコロナ一色。更に夫はニッチな職種かつ日系企業アレルギー絶賛発症中(苦笑)であったため仕事探しは難航していた。そして最終的にたどり着いたのが冒頭のロンドンへの転職発言である。
もやもやする妻
ロンドンに行くなら、私は復帰した職場を一年そこらで退職することになる。夫が希望の職を見つけたのは嬉しいが、少しモヤモヤした。
私たち夫婦には子供はいないので、多少身軽ではあり物理的に別居も可能だろう。けれど、夫と別居してまで成し遂げたい仕事なのか?と自分に問うと自信を持ってYESと言えない中途半端な自分がいた。
かつて私がシンガポールから東京の職場に復帰を考えていると相談した時、夫は思ったよりあっさりOKして、自分の転職活動を始めた。このとき夫は何を思っていたのだろう。私のようなモヤモヤを彼も感じたのだろうか?(聞けよ、という感じだがお互い寡黙ゆえ。。汗)
夫婦のキャリアをトレードオフにしたくない
夫婦のキャリアはトレードオフなのだろうか。どちらかのキャリアを尊重すると、もう一方は何かを諦めないといけないのだろうか。
自律的キャリアという言葉が日本でも盛んに言われるようになって久しい。会社主導のキャリア形成の時代は終焉を迎え、自分自身でキャリアを描き作り上げていく時代になっていく。
しかしながら、従来よりも個人の自由度が増したとはいえ、キャリアの選択や挑戦は大抵、自分ひとりでは完結しない。配偶者や子供、親など自分な大切な人にも影響がある。
一緒に人生を歩んで行こうと決めたパートナーと、お互いのキャリアを奪い合うことになるとしたら、それは何とも皮肉なことである。
欲張りなのかもしれないが、どちらにとっても価値がある選択をしたいし、何ならパートナーの決断のお陰で自分のキャリアも開けたと思えるようになりたい。
私たちなりの結論(仮)
上記のモヤモヤに対する明確な答えはまだないが、私は会社を辞めて夫とロンドンに行くことにした。そしていつか行けたらいいなと思っていた大学院にチャレンジすることにした。
無職になった実感はボディーブローのように効いてくるし、日本に残っていたらこんな事があったかもな~。と思いを馳せることもある。
けれど、受験勉強のように期限やゴールがあることに取り組むことで、生活に張り合いが出たし、精神衛生上良い選択であったと思う。(いや、結構追い込まれたから精神衛生上は悪かったかもしれない。。)
今の選択が自分にとってベストだったと思えるか否かは分からないが、1年後に胸を張って修士号を取得できている状態でありたい。
そして「君のぶっ飛んだ転職のお陰でこんなに面白い経験ができたよ」と、夫に改めて感謝できる自分でありたい。