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第30回 リップスティックで男女平等(フィンランド)


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2015年3月、フィンランドで国会議員選挙があった。国会議員200人に2146人が立候補した。女性は845人、全候補者の39・4%を占めた。結果は、女性83人が当選し、全体の41・5 %。

私が出た2012年の日本の衆院選挙と比べてみる。全候補者1504人のうち、女性は223人で14・8%。女性の当選者は39人。わずか8%だった。1907年、フィンランド国会の女性議員は11%だったから、フィンランドの100年前より日本は少ないのである。

しかしフィンランドの女性たちにとって、今回の41・5 %は、伸び悩みなのだそうだ。さほど喜んでいない。

この国の女性たちが、「国会の半分を女性に」という目標を掲げたのは、20年以上も前だった。

国政選挙を翌年に控えた1994年、私は、ヘルシンキにある「フィンランド女性会議」のオフィスを訪問して、レパマーキ代表、エルシー元代表、クローン事務局長の3人を取材した。事務局長は言った。

「フィンランドの女性は、1906年、ヨーロッパでどの国よりも早く参政権を獲得しました。その年、すべての国民、つまり男性も女性も同時に参政権を得ました。ですから参政権に関して、フィンランドは世界で最もジェンダーギャップの小さな国です。初めての選挙で女性は19人、11%でした。現在の目標は国会の半数、つまり100人を女性にすることです」。

啓発運動の絵ハガキを2枚もらった。1枚には「国会に100人の女性を」、もう1枚には「女性であるって素敵」とあって、真っ赤なリップスティックのキスマークがドーンと描かれていた。

当時、日本で某テレビ番組に出ていた私は、男性出演者から「男女平等っていうけど、口紅つけているじゃないか」と言われた。男女に違いがあるのは当然で、その違いで差別や抑圧を受けるのは不当なことだ、という基本が彼にはわかっていなかった。

フィンランドの絵ハガキの真っ赤な唇を見て、この国にはその基本が根づいているらしいと思った。

今日のポスターは、つい先月、同じ「フィンランド女性会議」から贈られた。梱包を開いてびっくり。「100年の歴史。女性の言葉と行動」というフィンランド語ではさまれた投票箱には、例の真っ赤なキスマークがついていた。

ポスターは、女性参政権100周年にあたる2006年の記念行事を知らせるために使われた。カタログには「人口の51%は女性だから、国会の101人は女性が好ましい」と書かれていた。

(三井マリ子/「i女のしんぶん」2015年11月10日号)

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