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動画で学べるシリーズ!日本酒講座「製法編 速醸系酒母」

みなさんこんにちは❗️
今回の動画で学べるシリーズ第5回は「製法編 速醸系酒母」についてです!
動画だけでなく文字でも解説していくので、お好みの形式でお酒のことを学んでもらえればと思います🍶
コチラのチャンネルの動画をベースに解説を進めていきます!

今回はコチラの動画になります!
この動画では日本酒の製法のうち、速醸系酒母について解説しています!

1.酒母の役割
2.酒母工程
3.様々な速醸系酒母

今回はこの3つの項目で進めていきます!

1.酒母の役割

まずは、酒母についてです。
酛(もと)とも呼ばれ、文字通り、お酒の母、お酒の元というように日本酒造りのスターターになります。
主な役割としては、アルコール発酵を担う酵母を繁殖、育成することになります。
日本酒に用いられる酵母は、培養されたものを利用すると以前に説明しました。
しかし、美味しい日本酒を作ることは得意でも、他の菌との競争は不得意で、いきなりお米と麹と水が混ざった環境に放り込まれても、うまく繁殖できずに淘汰されてしまいます。
そのため、酵母に有利な環境を整えることで、酵母を元気に増殖させ、目的の酵母が純粋に繁殖している状態を目指していきます。

では、その有利な環境はどんな状態でしょうか?
それを一言で表すなら、酸性環境です。
酵母は他の菌と比べると酸性環境に強い性質があり、他の菌が生育できない酸性の環境でも、力強く繁殖することができます。
また、酒母においては、仕込み配合がもろみと比較すると麹の割合が高く、水の割合は低い濃厚な状態となります。
過度に糖分が多い濃厚な環境でも雑菌は繁殖しにくいです。
酒母でその酸性環境を作り出す方法は大きく分けて2通りあり、その方法で酒母の製法が異なっています。
1つが乳酸菌により乳酸を生み出す方法です。
こちらが生酛系酒母に分類されます。
もう1つが、直接乳酸を添加する方法です。
こちらは、速醸系酒母に分類されます。
今回は速醸系酒母について深く掘り下げていきます。

2.酒母工程

では、酒母立ての工程について詳しく解説していきます。
ここでは普通速醸の工程について触れていきます。

一番初めは、仕込みの工程です。
あらかじめタンクに麹米と水、そして乳酸を加えておき、麹米に含まれている酵素を溶かし出しておきます。
この際、酵母も添加しておきます。
その後、投入後の温度が20度ほどになるように冷却した蒸米をタンクへ投入し、櫂入れを行います。

次は汲み掛けの工程です。
こちらは酒母の糖化を促進させるために行う作業になります。
仕込み後は蒸米が水分を吸って膨らんでくるので、表面は水分がなくなってしまいます。
水分の少ないところではなかなか糖化が進みません。
そこで、あらかじめ円筒状の汲みかけ器を酒母に差し込んでおきます。
これは底の方に小さな穴が空いていて、液体のみ通すようになっています。
底に溜まってくる液体を定期的に表面の蒸米に汲みかけていきます。

次の工程は打瀬(うたせ)になります。
こちらは酵母は早く繁殖してしまうことを防ぐために酒母の品温を下げる作業になります。
この時点で仕込みから約1日が経過しています。
汲みかけで糖化が進み、酒母の流動性が良くなってきます。
そのタイミングで、全体が均一になるように撹拌し、品温を10度前後まで一度低下させます。
温度が高いままだと酵母が急激に繁殖し、酒母のバランスが崩れたり、アルコール発酵により糖分が消費され、雑菌も混ざってしまう可能性が上がります。

次の工程は暖気(だき)になります。
こちらは前半は糖化の促進後半は酵母の増殖の促進を目的とした作業になります。
酒母の温度を局所的に上げ、酵素の適性温度の箇所を作り出します。
方法は2通りあり、暖気樽(だきだる)と呼ばれる容器にお湯を入れ、その暖気樽をタンクに直接投入する暖気樽法と、タンクの底にヒーターを入れる行火(あんか)法というものがあります。
終了後、酒母全体を撹拌し温度を全体的に上昇させ、数日かけて温度の上げ下げを繰り返しながら徐々に品温を上げていきます。

次の工程は膨れになります。
こちらは品温が上昇してきて、徐々に酵母の発酵が活発になってきている状態のことを言います。
発酵により、炭酸ガスが発生するために体積が増して見えます。
温度は15度前後となります。
この時点でも暖気の作業は継続しています。

次の工程は湧き付きになります。
こちらはさらに品温が上昇し、20度前後となり、酵母の発酵がかなり旺盛になり、炭酸ガスにより、酒母の表面に泡が出てくる状態のことを言います。
酵母の発酵が最も活発になると、暖気よる加温操作を行わなくても品温が上昇していくようになると、湧き付き休みという段階になります。
この時点で8〜10日ほど経過しています。

次の工程は分けになります。
こちらは、酒母のアルコールや酸度が必要な条件を満たしたら、再び品温を下げていく段階になります。
酵母は過度なアルコールや温度で弱ってしまうため、品温を下げることにより、酵母の活動を抑えていきます。
もろみの段階へ移行するまでの期間を枯らしといい、10度以下まで冷却していきます。
この段階で酵母をアルコールに慣れさせ、味わいのバランスも整えていきます。

こちらが全体の流れになります。
この普通速醸ではもろみに移行するまでにはおよそ14日間かかります。

3.様々な速醸系酒母

では、それ以外の速醸系酒母にはどんな種類があるのでしょうか?
ここからはそれについて解説していきます。

まずは、中温速醸酒母です。
こちらは、高温短期速醸や加温廃止速醸などさまざまな呼ばれ方がありますが、仕込み後に打瀬や暖気を行わずに、素早く湧き付きまで酒母を育成していく方法になります。
品温を高めに維持するために衛生面の管理がさらに重要になりますが、使用する道具や、作業が減り、酒母期間も短縮できるため、現場での作業が効率化できます。
普通速醸との違いとしては、仕込み時点での温度が25度前後と、5度ほど高めです
また、汲みかけの作業の代わりに荒櫂と呼ばれる櫂入れを行います。
ちなみに普通速醸でも汲みかけの代わりに荒櫂を行う場合もあります。

次は、高温糖化酒母です。
こちらは、乳酸や酵母を添加する前に高温であらかじめ甘酒のような状態にしておく方法になります。
今までの2つの方法とは大きく異なっており、仕込みの際に、麹米と蒸米と水のみを55度で維持し、まず糖化のみを進めていきます
糖化終了後に、品温を下げながら乳酸を添加し、30度前後まで低下させた後に酵母を添加していきます。
その後は20度前後を維持し、湧き付き、分けまで1週間ほどで進めていきます。
仕込みの段階で高温を維持するため、雑菌を淘汰でき、純粋な酒母を作りやすく、さらに酒母期間を短縮できる方法となっています。

このように、酒母といってもさまざまな方法があり、アルコールを生み出す酵母を育てるという酒造りに大事な工程です。
今回は一般的に用いられる速醸系酒母を取り上げましたが、その中でも違いがありました。
実際にどういう速醸酒母が用いられているか、ラベルに記載されていることは少ないと思いますが、蔵の方と話す機会があれば聞いてみるもの面白いかもしれませんね。

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