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丹羽優太さんインタビュー

SAKE Springの想いでもある「生産者さんの可能性を広げたい」「生産者さんと一緒にサケスプを盛り上げていきたい」を実現するべく“人”に着目した記事を更新していきます。
今回はSAKE Spring 2023 夏祭りにてオリジナルTシャツと入場者特典のサケスプグラスのデザインをしてくださった丹羽優太さんにインタビューをしました。

丹羽優太さん
現在東福寺塔頭光明院に住み込みで、来年の完成に向けて襖絵の制作をされています。墨や、岩絵具を膠という糊で混ぜたものを用いて描く日本画の伝統技法を用いて作品制作しています。オオサンショウウオやナマズといった黒くて大きい生物をモチーフにして多くの作品を生み出しています。
日本画を描き始めたのは高校を卒業し、京都芸術大学に入学してからです。高校の美術部の先生が日本画を専攻していたり、自分で様々な展示会に足を運ぶ中で日本画の世界に興味を持ち大学から学び始めたそうです。

丹羽さんは「SAKE Spring 2023 夏祭り」にて、オリジナルTシャツと入場者特典のサケスプグラスをデザインしてくださいました。今回はデザインにかけた想いや、丹羽さんの作品制作に対する想いをお聞きしました。


ー絵はずっと昔から描いていらっしゃるのですか?
ものづくりをしたり絵を描くことは物心ついた頃から好きでした。高校では美術部に所属していましたが、日本画はもちろん油絵も描いたことがなかったので、大学に入ってから日本画を描き始めてそれから描き続けています。

ー日本画を専攻しようと思ったきっかけは何でしたか?
高校生の時は美大には行きたいと思っていたのですが、何を描きたいかまでは決まっていませんでした。高校の美術の先生が日本画出身だったというのもあって高校の時に日本画の色々な展覧会には行っていました。その時漠然と絵画という枠組みで見ていたものが、日本画という世界に触れたことで、いいなと思うようになりました。
和紙は学校の習字で使う薄いものとは違い、破れにくいものを選んでいます。和紙にこだわりはあって、手漉き(機械ではなく人の手)で作られていて何百年も持つようなものを選んでいます。

ー現在のようなオオサンショウウオなどをモチーフに描くようになったきっかけは何でしたか?
最初は京都市水族館に行ったときオオサンショウウオを見て、おもしろいなと思い描いたのが始まりです。それは大学生の時でした。
それから昔からの伝承を調べたところ、岡山ではオオサンショウウオのいるところに住むと水害が起こるという言い伝えがあり、その言い伝えに基づいて絵が描かれてきました。オオサンショウウオを退治しようとする絵、水害が起こることで儲かる商売人(医者など)がオオサンショウウオを守ろうとする絵など様々でした。人間がどうすることもできないことの象徴としてその歴史が面白いと思ったので、オオサンショウウオやナマズなど身近であるが黒く大きな生き物が描かれるようになったのです。

最初は“気になる”だけだったところから、水害や災害の象徴という視点で描くようになりました。しかしほとんどの絵を災害として描いているわけではありません。あくまで象徴なので作品のテーマが水害や災害だというわけではないのです。
災害はネガティブなイメージが多いですよね?日本に住んでいれば触れない人は少ないし、良いとか悪いとかいう話でもないと思っています。災害が起こっても生きていかないといけない。ネガティブな出来事を、ユーモアを持った絵を通して乗り越えていってほしいという想いが私の作品にはあります。

ーオオサンショウウオの継承から、ナマズなど黒くて大きな生物をモチーフに作品を描かれるようになったのですね。


ここまで丹羽さんの作品制作の背景や想いについてお聞きしましたが、ここからは丹羽さん自身についてお聞きしたいと思います。

ー光明院ではどのような経緯で作品制作をされていますか?
1年半経ちますが、現在制作にあたっている襖絵を来年には完成させて、また別の作品に取り掛かります。
一時期陶器でオオサンショウウオを立体的に作っていた時があります。その時にずっと応援してくださってたコレクターの方にまた陶器での作品は作らないのですか?と聞かれることがありました。窯があればと答えると泉龍寺にある陶器を作り販売する陶器屋を紹介してくださいました。そこでまた1年陶器での作品を制作していたのですが、その陶器屋さんが光明院を好きだったそうで、そこから紹介で知り合い、遊びに通うようになるうちに住職とも親しい仲となりました。

住職から作品を展示してみますか?と言っていただいたのがきっかけで、2年前に個展を開催しました。私自身個展を開くのが初めてでしたし、光明院としても初の展覧会でした。その後に襖絵をやってほしいと言われ、少し厚かましいのですが「住み込みなら挑戦してみたいです。」と自分から言ったところ快諾してくださり話が決まりました。

ーなぜ住み込みが良かったのでしょうか?
お寺の絵は未来にずっと残るものなので、その空気感(場所・人)を味わいながら描きたいし、そういう風に描くことで作品がもっとよくなっていくだろうという考えからです。
光明院はちょっと疲れたらお庭を眺めたりできてとても良い空間です。
昔の人もこんなふうに描いていたんだろうなと擬似体験をしているかのようです。昔の絵描きの生活、その延長線上になれたのがとても嬉しいです。
私自身お寺がすごく大事な場所になりました。仕事の場所ではなく、ライフスタイルの一つとして忘れられない経験となっています。

ー制作の時は他のことは忘れて没頭される感じですか?
描き始めるまでは結構遅いです。始めたらほぼノンストップで集中して描いています。
 
ーこれまでで一番大変だった、しんどかった仕事はありますか?
今の襖はとてもプレッシャーですね。大きいし残るものなので。
描き方をガラッと変えてみたり、新しい道具や紙を使うなど新しい挑戦をするときは想像通りになるかな?という不安はあります。でも新しい挑戦をする時ほど面白い作品ができたり、想像を超えて良いものができることは多いです。達成感があって新しい自分を発見することができるので、喜びも多いです。

では、ここからはSAKE Spring 2023 夏祭りのグラス/Tシャツデザインについてお伺いしたいと思います。

SAKE Spring 2023 夏祭りのサケスプグラスとオリジナルTシャツのデザイン

ー今回の絵はどのように描かれたのでしょうか?
今回は一から新しく描いたのではなく、今まで描いたいろんな作品を組み合わせて作成しました。少し描き足した部分もあります。

ーお酒を飲む人々なども普段描かれるのですね。
お酒を飲むのが好きなので、宴会をしている絵とかも描くことがあります。

ーオオサンショウウオに乗ってる女性はどのような人ですか?
これは芸妓さんです。学生の時祇園のBARで働いていました。そこは芸妓さんのいるBARでした。芸妓さんとバイトメンバーがオオサンショウウオに乗っているという身内だけがわかる絵を描いたことがあって、サケスプが京都のイベントなので芸妓さんを描くと良いなと思い使うことにしました。
今回のデザインは新しく描いた部分もあって、尻尾や酒樽などを描き足しました。全体的には飲んで楽しい雰囲気を出したかったというのが想いとしてあります。

ーグラスやTシャツの実物を見てどうでしたか?
とても良かったです!いろんな人に配ったりもしましたし、喜んでもらえて嬉しかったです。もちろん自分でも使っています!

ー今後新たに挑戦したいことはありますか?
まずは今制作中の襖絵を頑張りたいです。日本画の中ではお寺にずっと残る襖絵や天井絵は花形のような存在なので、他のお寺と引けを取らない良いものを残せるように頑張りたいです。
もう一つは、日本酒が好きなので日本酒のラベルデザインをしてみたいです!一回やったことはあるのですが限定ラベルでした。限定ではなくずっとあるような定番商品の日本酒のラベルをデザインをしてみたいです。

ー好きなものを仕事にも取り入れるのはとても良いですね
 丹羽さんはどんな日本酒がお好きですか?
すっきり辛口で、お刺身と合うような日本酒が好きです。


【編集後記】
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回インタビューに至った経緯は、Tシャツを買ってくださった方やグラスを大事に使ってくださっている方にデザインにかけた想いをお伝えしないまま終わってしまうのは少し悲しいなという気持ちがあったということもあります。
インタビューをさせていただいて、丹羽さんは周りの方との繋がりをとても大事にされている方なのだと感じました。光明院での今のお仕事もコレクターの方との交流を大事にされていたからこそ掴めたお仕事だと思いました。いろんな方ともよく飲みに行ったりすると仰っていて、ずっと籠って作品を描かれているのかと思っていたのですが、アクティブな一面もあったりと、丹羽さんの新たな一面を知ることもできました。そういう周りの方との交流を大事にするアクティブさは、作品にも出ているのではないかと感じました。

written by Junna.K

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