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Sake note

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チャイムが鳴るその前に

「ねえ紗絵、ホンって知ってる?」 彩花にそう聞かれたとき、まだ朝の十時半なのに早弁を掻き込んでいる最中だった私はすぐには答えられなかった。二時間目、数Ⅱの坂田がポリープの手術で自習。 「ううん、んんんい…ゴホッ!」 「ちょっと〜!紗絵のしめじ砲を食らうの、今週に入ってもう三回目なんだけど!」 うちのお母さんはほぼ毎日、私の弁当にしめじを入れる。詰めるときにラクだからと限りなく石づきに近いところで切り落とされたしめじは見事に全部繋がっていて、それを一口で食べようとしては

黒島という島に行ってきた話

コロナやし、行くとこないし、うちの豪州人と海沿いをプラプラしていたら、渡船場を見つけた。 黒島行渡船場 大分県臼杵市佐志生(さしう)と黒島を結ぶ船、大人片道250円。 どうやら往復500円払えば黒島という島に行ける模様。 島のPRポイントはこちら。 ウイリアム・アダムス? 誰? 400周年ってことはウイリアムさん、江戸時代に上陸なさったんか。 もうちょっとだけ進めば九州本島やったのに、惜しかったな。 まあ、それはいいとして、 カウンター内は真っ暗。無人。 運

私の毛は黒い

序章 特記事項なし隣の芝は青く、私の毛は黒い。 東洋人の中にも色素が薄い人が存在するが、私の毛は極めて平凡な黒寄りだ。 ごく普通で、特記事項なし。 これ以上述べることもない。 第一章 黒船来航黒船来航。いや、スピリット・オブ・タスマニア来航か、はたまたジェットスター来航か。 タスマニアから、うちの豪州人の弟がメルボルンに越してくることになった。 ところがコロナ前の活気が戻ったメルボルンは今、賃貸の需要と供給が追いついていない状況。 もれなく弟も、部屋が見つからな

あの年、私は

一人で北京発モスクワ行きの飛行機に乗った時のこと。 ロシア系の航空会社で、周りは恐らくロシアの人たちばかりだった。 隣に座った人も、ロシア人とおぼしき女性。20代後半だろうか。 離陸すると彼女は私に 「お父さんとお母さんは?」 と、訊いてきた。 「一人です。」 「あら、偉いわね。」 そのような会話を交わし、私は一眠りすることに。 うとうとしていると、バサッと誰かが私に毛布をかけてくれた。 薄目を開けると隣の女性だった。 私も自分の毛布を膝にかけていたのだ

チューペット

「ケツの穴がおかしい。」 遠慮がちに私に向けられたケツの割れ目の中央にひっそりと佇む門は固く閉ざされ、その向こう側は見えなかった。 まあ、見えたところで私はケツの穴には詳しくないし、傷にはマキロンくらいの医療知識しか心得ていない。 その道の匠に所見を伺うため、うちの豪州人パートナーを連れ日本の肛門科の敷居をまたいだ。 宅飲みでぶっ飛ばしすぎて最初に潰れた人の運命を暗示しているようなこちらのイラストが、正しい受診体勢でして。 完全なる偏見やけど、このイラストに指示を仰

無益魔伝

この世には何故こうも悪が蔓延っているのか。 宋酎酎は、憤りを隠せなかった。 「黒血魔鬼…俺が必ず根絶やしにしてやる!」 超天脱解波紋功を会得してからというもの、酎酎はこれまで視えなかった江湖の常に苦悩した。 罪なき人々が流した涙が長江となったと言っても過言ではない。 武林人である前に人として、悪を許すわけにはいかないのだ。 燃え上がるような怒りは内功となり、酎酎の氣をより熱く色濃いものに変える。 そのときだった。 優雅に空を飛ぶ鷺が描いた線、西に広がる松林の風

角部屋

あれは、私が十数年ぶりに日本で部屋を借りたときのことだった。 久しぶりの日本での生活にわくわくし、日当たりの良い角部屋を借りた8月のこと。 シャワーのお湯がやたら熱く、何度か業者に来てもらったのに直らなかったことには物凄くストレスを感じていたけれど、それを除けば何もかも、順調だったように記憶している。 家具家電もやっとすべて揃ったお盆。早速愛着が湧き「末永く使っていけたら」と思っていた矢先にそれは起こった。 ジョボジョボジョボ… フリーランスの私はお盆なんて特に関係

風呂のドアが開かない

風呂というか、シャワー室のドアが開かなくなりまして、私はびっしょびしょの全裸でして。 どんなに引いてもビクともしないんですよね。 あんまりガチャガチャしすぎるとガラス戸なもんで、割れたら全身ズタボロ血みどろ男爵令嬢になるじゃあないですか。 こんなルートで貴族にはなりたくないなって思いまして、うちの豪州人(パートナー)を呼ぼうと思ったんやけれど、うちの風呂場、換気扇うるさいんですよ。 電気のスイッチ入れたら同時に作動する連動タイプの換気扇でして、全然換気いらんときも電気

天ドリルと鼻くそティッシュ

うちの豪州人は、天使とマンドリルを足して2で割ったものを天日干ししたような男だ。(天日干しする理由は顔がレーズンに似ているため。) ただの天日干ししたマンドリルなら人生の伴侶になど選んでいなかったが、彼は決定的な要素である「天使の片鱗」を持ち生まれた。 うちの豪州人は、「助けられる人」なのだ。 受動態ではなく可能の意。 ダッシュさんが「人助け」について書いたこのnoteを読んで、真っ先にうちの豪州人のレーズン顔が浮かんだ。 困っている人を見つけたらすぐに飛んでいくう

ニェンガオを知っているか

あれは、数年前の今頃。 アメリカ人の友達が、香港土産をくれた。 「これはね、チャイニーズ・ニューイヤー・プディングといって、香港でニューイヤーに食べるプリンなんだって!私、プリンって超好き! だって、柔らかくってプルプルでクリーミーでとろけそうになるんだもん! とろけるプリン最高!まるちゃんもかわいいでしょ!」 友人は早口でプリン愛を語り、彼氏とデートの約束があるのだと去って行った。 へぇ。香港のプリンか。しかも新年に食べるやつ。 私はあまり甘いものを食べないのだけ

昭和60年代生まれの蠍座の女(A型)が2021年に欲望のまま買ってよかったもの

こういう記事って、ターゲットを絞ると検索してもらい易いんですが、あんまりザックリしていると、検索結果の下の下の下に埋もれてしまうんですよね。 Google先生はいつもご丁寧に、「貴様が知りたいのはどうせこれだろ?」と、人気のオプションを表示してくださる。 買ってよかったもの 2021 シンプルでわかりやすい。だけどこれじゃライバルが多すぎて、私のnoteなんて検索結果の1万ページ目に表示されるじゃないですか。 なので、もうちょいターゲットを絞りました。 ふむふむ。お

OKIで香りの脆い炸鶏を作った話

オーストラリアの大手スーパーWoolworthsで見つけた黄色い箱。 OKI CRISPY FRIED CHICKEN COATING 原産国 マレーシア。お値段 1.9ドル。 お求めやすさが私を後押しし、カゴに滑り込ませる。 「香脆炸鶏粉」とも書かれてある。 ふむふむ…香りの脆い炸鶏を作る粉か…なるほどな。 レ点がなくても直感で解釈できたのは、日本の国語教育のおかげであろう。 漢文…孔子の教え…魯迅…炸鶏の粉…。 A POPULAR SELLING BRAN

寒い日は合法しゃぶしゃぶでキメよう

今、メルボルンは春だけど、まだまだ寒い。 火鍋が食べたいなぁと考えていると、思い出した。 うちの豪州人が連れてってくれたしゃぶしゃぶ屋のことを。 ググったら今も絶賛営業中とのことで、今日はそのしゃぶしゃぶ屋を紹介します。 たしかあれはあれがいつかと言うと、オヤジリウムが流行った頃だった。 みんな夢中になってオヤジを育ててた時期が、あったじゃないですか。 オヤジたちが恋愛し、卵を産み、家庭を築き、繁殖していくあのゲーム。 たまごっち世代なので私ももちろん育ててたん

【ちょいグロ注意】メルボルンの風呂場に出現した謎の物体に関する考察

※この記事は2021年5月8日に書いたものを他ブログから移転させたものです。 最近、えのき広報大使ですか?というくらい、えのきチヂミがいかにおいしいか発信している私。 急にふと、えのきで思い出した。 そういえば、メルボルンに住んでいたとき風呂場に謎の物体が出現したことを。 えのきとそれ、どういう繋がり? って思われた方は、是非最後までお読みください。 ということで、Who are you?から始まった私と謎の物体の15時間を振り返りました。 チェケラ★ この先