【ショートショート】麦茶とティラミスとあの頃のハサミ
スーパーでやんややんやと買い込み、ぱんぱんに膨らんだエコバッグを両手に、肩で実家のドアを開ける。重い旨を何度も口にしながらキッチンへど運び、ようやくの重さからの解放に全身が歓喜した。
そして歓喜するや否や、思い出したように喉の渇き。なるほどこれは耐えられん。さっとシンクの水道で洗った手を食器棚に伸ばす。とにかく喉が渇いたと大きなガラスのコップを掴み、がばっと冷蔵庫の扉を開ける。
ひんやり冷たい薄茶色が、「俺の出番だろ?」と言った気がした。
「あーーっ、うまー!」