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SS2「真夜中の焦燥」

額の汗を拭う。一体どれだけの時間をかければこの条件をクリアし、苦しい時間が終わるのだろう。壁にある時間を刻む丸い装置は今の自分には現実を突きつける凶器でしかない。
「あと…3時間?????嘘だろ…。」
こういう時の時間の早さは異常である。あっという間に刻限まで近づく。光陰矢の如し、英語でTime flies like an arrow. いや、余計な事を考えるな、集中するんだ。この条件をクリアできなかった時の最悪の現実が目に浮かぶ。その想像は自分の手を容赦なく狂わせる。
カチッ。
「あっ…。」
しまった。また同じミス。これで何度目だろうか。同じミスは繰り返される度に心に大きな負担を与える。
「…。」
一度落ち着く必要がある。椅子から立ち上がり、淀んだ空気を入れ替えるため窓を開けようとする。しかし、急に視界が暗くなった。マズい。
抵抗する力を失い柔らかな何かに包まれたような感覚を覚えつつそのまま意識を失ったーーーー

ーーーーーガバァ!
しまった、寝たのか⁈最悪だ!慌てて壁にかかった現実押し付け凶器という名の時計に目を向ける。朝の8時。
…終わった。これで何もかもお終いだ。絶望の感覚を身体中で感じつつ昨夜開きっぱなしにしてしまったPCにパスワードを打ち込む。
カチッ。
「またタイプミスしたわ、ハハ。」
もはやイライラも感じない。

さて、とりあえず教授への謝罪文と嘆願文の内容でも考えるかな…。




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