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小学校の教科横断型学習ではアプリ選びが重要だ

Twitter上で立ち上げた企画「♯Kocriで授業共創プロジェクト」。今回は、暁星国際小学校の唐鎌先生による教科横断型学習の実践例を紹介します。

暁星国際小学校の教室にはTVモニターが設置されていますが、画面が小さめで児童へ資料提示するにあたってインパクトに欠けていることが悩みでした。
また、授業の進行で黒板をメインに使っているのに、「資料提示をするTVモニター」と「書き込みを行う黒板」の役割が完全に分離しており、教室の設備を充分に生かしきれていない点・そのせいか授業に臨場感があまり感じられない点が課題としてあります。
そこで、プロジェクターから黒板に直接投影し、黒板をモニター替わりにして尚且つ映像の上から書き込みを行うことで課題解決に繋げようと、Kocriを使うことに。

Kocriの具体的な使い方については、こちらの実践例が参考になります。:
「PowerPointで作った授業を『Kocri』に置き換えるメリットとデメリット」
https://note.com/sakawajp/n/n0d1ae1e322d4

唐鎌先生の授業の課題と、ICT活用のねらい

授業の課題
●第6学年 【教科横断型学習】
国語「熟語の成り立ち」の学習から、
社会「修学旅行の目的地である長崎のキャッチコピーをつける」学習へと繋げます。

言語表現を論理的に学んだ後に、地域の歴史を汲み、その地域を言語で表現する「教科横断型学習」の試みです。
小学校学習指導要領でも言及されていますが、インプット後に即アウトプットすること(単なる知識から表現能力へと発展させること)は、児童の能力を育てる上でとても重要な位置付けになっていますね。

教科横断型授業におけるICT活用のねらい

1.提示物にインパクトを与えて、在宅・教室の場所を問わず臨場感の出る授業作りを行うこと
2.児童が地域の歴史を体感できる工夫を行うこと

この2つのねらいを達成するには、適切なアプリを探索・駆使しすることが重要となります。

使ったアプリ

● Kocri
 →使用目的:黒板をモニター代わりにして資料を大きく投影&映像の上から書き込みを行い、臨場感の出る授業を作り出すため

● ナガサキ・アーカイブAR
 →使用目的:被曝者の体験談を実際の土地と関連づけて閲覧することができるこのアプリで、本やWebサイトでの調べ学習よりも更に深い論考を得るため

● Zoom
 →使用目的:オンラインで在宅・教室の場所を問わず授業に参加する環境づくりのため。また、Zoomのホストを入れ替えながらのプレゼンの様子を録画し、他学年の学習に展開する資産とするため

それでは、唐鎌先生の実践の詳細を記します。

教科横断型授業の実践

【国語】の授業展開

①身近な広告や案内で目にした「熟語」に注目させる

②児童が注目した「熟語」を黒板に映写する(Kocri使用)

③発表する児童に「熟語」の意味や解釈、読み手に与えるであろう影響等を説明させる

④その発表を受け、他の児童が黒板に意見を書いたり資料を貼り付けたりし、議論する

⑤「熟語の成り立ち」として、長い表現を略記して簡潔に読み手へ意図を伝える働きもあることを理解させる

投影と書き込みの様子:

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熟語の成り立ちの学習を経て、
下記の「キャッチコピーをつける」学習へつなげました。

【社会】の授業展開

①児童が選んだ長崎旅行に関する資料や、授業者が得た情報を、黒板に投影しつつ長崎に関する歴史や文化の理解を深める

②「長崎の地元の方だからこそ知る、旅行者に伝えたい情報」を収集する

③児童がまとめた長崎の魅力を、児童間でプレゼンする(一部Kocri使用)

④魅力を伝えるキャッチコピーを「Zoom」で発表する

情報収集を行うにあたり、「長崎の被爆の記憶を後世に伝えるために」と開発された、「ナガサキ・アーカイブAR(NagasakiARchive)」というアプリを使用しています。
https://nagasaki.mapping.jp/p/iphone-ipad-ar-apps.html

ナガサキアーカイブアプリ紹介ページのスクショ

タブレット端末やのカメラを通して見た映像に、被曝の情報が表示されるというものです。Google Earthを用いて、被爆者の写真と体験談を、実際に被爆した場所と関連付けて閲覧。
75年前と今の風景を見比べて、当時のナガサキと、その後復興を遂げた今の長崎とを時空を越え、体感することができます。

児童にとって長崎が観光地としての華やかさを第一に考えている部分もあります。そこと対比させ、
「戦争の痛ましさを色濃く残す地域である」
という点について、最先端のアプリを上手く使って理解を深めさせるために活用しています。

Zoomを使った場面:
現地の方とZoomで映像を繋いで交流し、聞いたお話を元にキャッチコピーを吟味しました。その中で、児童自ら「キャッチコピーを変更したい」との申し出もありました。
また、全員がZoomを使用してオンライン発表を行いました。Zoomのホスト交換の機能を児童に操作させるという高度なテクニックにも挑戦。

Zoomの機能で、プレゼン時の児童の声や発表資料を簡単に録画できることを利用して、今後は教科横断のみならず 学年横断学習も行います!
録画・編集したプレゼンの場面を、第5学年に見せて感想をもらい、その感想を発表者である第6学年の児童に戻して伝えあいの場を設けるのです。

分散登校がもたらした副産物

オンライン授業、及び分散登校を経験して得られた気付きを暁星国際小学校の唐鎌先生にお聞きしたのでご紹介します。
「これから数年、断続的に分散登校が発生することを心構えし、児童が在宅で指導を受ける体制を整える必要がある」とした上で、このようにお話されていました。

録画型の配信授業、いわゆるオンデマンドの状況は、端末が確保されている状況でなかればなりません。
これは、コロナ禍の休校措置で全国的に問題となったことです。例えば、保護者のスマートフォンしか確保できず、かつ、日中は保護者が外出や勤務しているという状況の家庭にとっては、本来の学習時間帯に児童や生徒が放置されてしまう事例が少なからずありました。
本校(暁星学園小学校)のようなリアルタイム型のオンライン授業であれば、学習の遅れをなくすことに併せて、児童の生活リズムも一定に保たれます。
オンライン授業ならではの利点として、「児童の様子を一斉指導の中で個別に確認できる」ことが挙げられます。
本来、教室に居て机間指導をする手間であった部分を解消した点や発表に自信のなかった児童の声をマイクで拡張して拾うことで自信につなげられた、という点も今回の実践の副産物的な成果です。

今日はここまでになります!最後までご覧いただきありがとうございました。

2020/12/27追記:
唐鎌先生よりーー「長崎への修学旅行を実施するかどうかは、コロナ感染状況を踏まえて慎重に決定する」とご報告頂きました。

おすすめの動画

これを見ればKocriの使い方をマスターできます(Kocri for Windows)

本プロジェクト員の猪狩による、Kocri for Windowsの先生向けレクチャー動画です。「授業でどう使えばいいの?」という疑問を解消できます。また、「あの単元で使えそう」と授業の活用イメージが浮かんでくるかもしれません。

タブレットやPCをお持ちの方はKocri for Windowsをお試しいただけます。
無料でKocri for Windowsを体験したい方はこちら:
http://kocri.com/demo/

サカワのWebサイト:
https://www.sakawa.net


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