61. 楠本まき その1 【漫画】

耽美と言えばこの方!(とわたしが思っている)、漫画家の楠本まきさん。
作品として持っていないのは最初の作品集、少女漫画要素強め(?)な「HOT HOT HOT」、第一画集、それと今回ご紹介する「A国生活」。だったのが、先日ついに「A国生活」を買ったので、その感想をば。

楠本まきさんは、G-SCHMITTの記事でちょこっとだけ触れました。

耽美・退廃好きには避けては通れない道。
去年京都国際マンガミュージアムで展示があったり、今有楽町のバーでコラボしていたり(来月頭に行く予定!)、愛蔵版が発売されたりと最近活発に活動されていて嬉しい限りです。
初めて楠本作品に触れるなら代表作「KISSxxxx」がおすすめ。最も耽美的なのは「Kの葬列」だと思う。

で、この「A国生活」は、イギリスと日本の二カ国を行き来している作者の、主にイギリス、たまにヨーロッパ各国での生活を紹介したコミックエッセイです。

読み始めてすぐ、失敗した! と思いました。
だって、最初から最後まで鮮やかな英国の日常風景が描かれている。まだおいそれとは海外旅行に行けないのに、こんなのを読んだらイギリスに行きたくてたまらなくなってしまう!
わーん、楽しそう、イギリス行きたい、とうずうずしながら読みました。

そして読み進めるにつれ、あれ、これ読んだことがある気がするぞ……? という気持ちが頭をもたげ始めました。もしかしていつの間にか買って読んでいたのか? それとも立ち読みでぱらぱらした時の記憶かしらん。
実家に帰って本棚を漁ってみないと真相は分かりません。
でも、たとえ2度目であっても、新しい発見と楽しみに満ちた読書時間になりました。

まず何と言っても装丁が素敵です。これは楠本さんの本のすべてにおいて言えることであり、去年観に行った展覧会で目の当たりにした装丁への並並ならぬこだわりを思い返すと、感慨深いものがあります。
こだわりの一端について、デザイナーの秋田和徳さんのブログがあるので、自分用に引用しておきます。

こちらご覧になって頂ければ何となくお分かりかと思いますが、フォントから色から紙から、何から何まで細心の注意を払って作られた美しい本なのです。
カバーは外して読んでいたのですが、表紙のグレーの紙に控えめに光る銀の文字、「A国生活」の「A」の装飾性、前半ページの洒落たカラーなどなど、手にしているだけで嬉しい気持ちにさせてくれます。


そして内容も、どれか一つのエピソードを切り出して説明するのが難しいような、ちょっと気の抜ける日常話や全然知らなかったイギリス事情のオンパレード。
敢えてぱっと思いついたページを取り上げるとすれば、この二つかなあ。


・紅茶の淹れ方
紅茶の国イギリスでガバガバ紅茶を飲んだなりの、美味しい紅茶の解説が載っています。
「ティーバッグをとりだす時しずくがたれるからといってギュッとしぼったりしない。(苦みやエグ味が出る)」というコメントにドキッとしました。いつもやっちゃってる……。
あと、入れる牛乳は成分未調整のものの方が良いとのことで、普段使っているのはどっちだろうと気になりました。

・スクワッター
空き家などに不法侵入して住み着いてしまう人、スクワッター。80年代の英国の若者はスクワットするのが普通だったのが、今は減少傾向だそう。
そこで作者コメントが「大昔は、いーなー、わたしもスクワットしたい…。と思っていましたが、今は思いませんね。だって崩壊したら怖いし。ネズミ出そうだし。若いわねー…フフ…」と入っています。
わたしは空き家でこっそり生活、というのにちょっと憧れたりするので、まだまだ精神が子供なんだなあとか思いました(笑)


強いて抜粋してみましたが、肩の力を抜いて1話ずつさら〜っと読めるので、最初から最後まで読むのがおすすめです。役に立つ知識も、大して役に立たない知識も満載です。イギリス好きにもそうでない人にも。
そして他の楠本作品もぜひに。そちらはまたいずれご紹介するつもりです。

ではまた。


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