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126. アレキサンダー・マックイーン その1 【ファッション】

2010年、40歳の若さで自殺した革新的ファッションデザイナー、アレキサンダー・マックイーン。
数年前に彼のドキュメンタリー映画で存在を知り、それから何となく現行のブランドで一番好きなブランドだなあという認識を持ちながら、その実何も知らない状態でいました。

今日ようやく1冊関連書籍を読んだので、主に自分のためのメモですが簡単にまとめておきます。

<雑な略歴>
労働者階級に生まれ、職人の道からファッションの道に入ったマックイーン。その後自分のブランドを立ち上げ、お金がないながらも一歩も譲らないこだわりと高い技術力によって独自の世界観を築き上げていく。
わざとマスコミを騒がすような問題発言をしたり「人からの見られ方」をコントロールしようとする面も見受けられるが、制作に対する姿勢はとにかくアーティスト志向で頑固。ジバンシイのデザイナーに抜擢されたこともあったが、ジバンシイというブランドに求められるものと、自分の色をファッション業界の人々が納得する形で擦り合わせることに苦労する。
周りで彼を支える人々は振り回されっぱなしでふらふらになりながらも、彼の魅力に惹かれて、彼がそのアイディアをそのまま表現できるようサポートに徹している。
サポートのおかげもあって自身のブランドが軌道に乗ると、ようやく自分のやりたいことをお金の面で断念することなく表現できるようになった。
しかしこれからますます進化していくに見えたマックイーンは、友人と母の死のショックのためか、突然自ら命を絶ってしまう。
今はマックイーンブランドは当時のスタッフの一人が継いで継続している。

今回読んだ本は近しい人々や本人の言葉とコレクションの歴史で構成されているのですが、一読しただけではその関係性や時代の流れを掴むのは難しかったです。(こういう本には珍しく年表もついていない)
しかも(amazonレビューでも散々言われている通り)装丁があまりにもひどく、特にフォントの選択がダサさの極地のような本なのですが、数多く収められている写真は素晴らしいです。

特に
・1999年秋冬「The Overlook」の、雪の中で光る銀色のドレス、裾には蔦とカリグラフィ柄に切り抜いた装飾がついている
・2007年春夏「Sarabande」の、葡萄色の柔らかなドレスが、沸き立つ雲のような煙に埋もれている様子
・死の直前まで準備を進めており、死後開かれたコレクション「Angels and Demons」の、金色に塗装したあひるの羽のジャケットと金の刺繍を施したチュールスカート
なんかが、幻想的な物語が背景に見えるようで、創作意欲を掻き立てられます。
そしてやっぱり刺繍やビーズがふんだんにあしらわれたクラシカルなデザインに惹かれるのだなあ。
ファッションショーあるあるなやたら露出が激しかったり過激な服が、この本には載っていなかったのも嬉しいポイントでした。

マックイーンはいつも美を追い求めながら、コレクションごとにあるテーマを打ち出しています。(恐らく他のデザイナーも皆そうなのでしょう)
テーマは社会問題であったり歴史に関することであったり環境問題についてだったりと様々ですが、いつもその演出が大胆で魅力的だったそうです。
たとえば、こんな説明文を読んでいると、実際の様子を見たくてたまらなくなってしまいます。

静かなハープ音楽で幕を開けたショーは、黄金の雨が降り注いで幕を閉じた。
白いシフォンのプリーツをふくらませた金色に輝く皮製のコルセットや、カフスが床に届くほど長く、ウエストのラインを強調したドラマチックな白のジャケット、襟が耳まで届くほど伸びたコートなどの作品が披露された。
黄金のアイビーや、ミノタウルスの鼻輪、それに羊の角やペガサスの羽を模した彫刻のようなフィリップ・トレイシー作のヘッドピースで装飾されたコレクション

これを読むと、マックイーンが、(少なくとも初期の頃は)服を着るためではなく自己表現のインスタレーションとして作っていたように思われます。
美的感覚に溢れ、ぜひその場に居合わせたいと思うひとつの舞台としてのコレクション。
ファッションショーは一般庶民には馴染みがなく、そもそもハイブランドはとても手が出ない高額で、芸術作品を見にいく気軽さで触れられないのが残念です。
せめて動画でこの様子を追体験したいけれど、昔のコレクションの動画ってどこで見られるのかしらん?


また本を読んでいて、ファッションは様々な分野の人と協働して生み出していくものだから、自分の才能を他者に売り込む能力と技術力も必要とされることを改めて実感しました。自分だけで完結しない世界で自己を表現できるというのはすごいことだなあ。
それから、マックイーンのインスピレーションにはしばしば映画が関わっている(「シャイニング」「ひとりぼっちの青春」「バリー・リンドン」など)のが意外でした。


マックイーンの映画の内容はもはやほとんど忘れてしまったので、予備知識もなく観に行ってしまったことが悔やまれます。とりあえずパンフレットを読み直した上で、もう一度観られたらと思っています。
他、洋書で何冊かほしい本もあるので、いずれ入手できたタイミングでまたマックイーン記事を書く予定です。

ではまた。


<参考文献>
VOGUE ON アレキサンダー・マックイーン 2013年 クロエ・フォックス著 ガイアブックス
※ちなみにアレキサンダー・マックイーンについての書籍で日本語訳が出ているのはこの本のみのようです。

例のごとくヘッダー画像は全く関係ないフリー画像です。


補足的な。


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