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37. 吸血姫美夕(OVA) 【アニメ】

やっぱり惹かれる吸血鬼もの。
1988年から1989年にかけて発売された4話完結のOVAです。

神魔を狩る吸血鬼(ヴァンパイア)である美夕と、彼女を追いかける霊媒師一三子さんを描いた物語で、テレビアニメ版もあります。

Wikipediaによると、OVAは耽美な世界観を追求しており、テレビアニメはエンターテイメント色が強いそうで、絵柄もOVA版の方が美しい。美夕もふとした仕草や表情が妖艶で、謎めいた雰囲気を醸し出します。
特に綺麗な姿は、血を吸う時に宙に浮いて、片足を少し折り曲げるポーズ。右足だけに赤いリボンが巻かれていたり、腰に巻かれた帯の大きなリボンなど、他にも素敵ポイントが幾つかあります。


映像的美しさは文句なしですが、内容には色々難ありという感じ。
全体的に説明を省きすぎていて、雰囲気はあるが分かりづらいんですよね。

一回ではなかなか分からない点も多い。二回観てみると伏線に思えないほどのかすかな伏線に気づいたり、大分理解が進みます。
ただ、4話だと色々なことを匂わせるだけに留まっていて結局想像で補わねばなりません。

この作品における吸血鬼、というのが一般にイメージされる設定と全く違うのも理解しにくくさせている要因の一つだと思います。
美夕は人間の血を吸う代わりに“何も考えず幸せに生きられる永遠の命”を与えられるけれど、自分自身は不老不死ではありません。吸血しても眷属は増えないし、十字架も聖水も太陽光もへっちゃら。
謎のしもべラヴァと共に神出鬼没に神魔を狩ります。

テレビ版の方はまだ見始めたばかりで断言はできませんが、今のところこちらより大分分かりやすいです。説明も多いし登場人物たちはよく喋るし。
(だけれどわたしの好み的にはOVA版の方に惹かれるんですよね……)

あとすごく引っかかっているのが、狂言回し的存在の一三子さんのこと。肩書き霊媒師なんですが、霊媒師ってなんなんだろう。
強い霊力を持っていると自分では言っているものの、全然神魔の気配を察知することはできないし、そもそもそういう存在をあまり信じていないらしい。
そして人の血を吸うという一点で、美夕のことを責める。視野が狭いというか意固地になっているというか。

美夕にも

可哀想な人。自分の尺度でしか世界を掴めないのね。

と言われています。


もう一つ、拙い京都弁にも違和感があります。無理に京都を舞台にする必要性があったとも思えません。なぜ標準語で作らなかったのでしょうね?


ところで全4話のうちとくに耽美なのは第2話です。
不気味な球体人形、生きながら人形に変えられた人々に囲まれて住む、日本人形のような神魔。
美少年ながら、厳しい家に育ち世を憂いている男子中学生。
この二人の悲恋が能のような舞や音に彩られて描かれています。

人間を愛してしまった神魔の葛藤が細かく描写されていて、切ない結末が胸に刺さります。
珍しく美夕の感情表現が露わなところもポイントです。
人形恐怖症の方にはちと辛いかもしれません。そうでない方は一見の価値ありかと。


全体で言うとあまり印象に残らない作品でしたが、細かい点で素敵なところが幾つかあったので、備忘録的に書きました。

吸血鬼もののアニメでこれまでで最も良かったのは2000年に公開された英語音声の「バンパイアハンターD」ですね。これも大変耽美。サンドマンタの大群のシーンはぜひ観るべきなので、いずれご紹介します。
原作小説「吸血鬼ハンターD」も天野喜孝の表紙絵を眺めるために全巻揃えたいなあと思っている。

ではまた。


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