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母との関係④自立

重度身障者の双子の妹が家族の真ん中にいた。
人に迷惑をかけないように、空気を読んで生きることを余儀なくされ、手のかからない子だと言われて育った。
当然身辺自立は早かった。

母はそのことが自慢だったし、もっと自立を進めようと仕向けてきた。

1人でおつかいに出したり、地域のイベントに参加させたり回覧板を持って行かせたり、近所におすそ分けを配りにいかせたり、父の会社に電話をかけさせたり。
「1人で出来てえらいね、しっかりしてるね」
そうやって褒められて喜ぶのは母。
そして褒めてくれた人たちに決まって言う。
「この子が自分からやりたいって言うから」

まるで事実と違う。
母に無理矢理やらされているのに。むしろ知らない大人と喋るのが大嫌いだから、イヤイヤやっているのに。

小学校に上がってからは、1人で電車に乗るとか、習い事の説明会に1人で参加する、郵便局で預金する、熱があるのに病院に1人で行くとか、母からの「自立煽り」はさらにエスカレートした。

みんなお母さんと一緒なのに、私は1人。心細い。周りの視線が痛い。
なんで私だけ?
やっぱり母は私のことが好きじゃないから?
思い出すとその時の感覚が蘇って、心がきゅっとする。

しかし、お陰様で高校生になった頃には、かなりのことが1人でできるようになった。
行き方を調べてどこでも行ける。
映画も1人で見られる。
渋谷とか原宿にも1人で買い物へ行ける。
大学も1人で見学してフィーリングが合うところを選べた。
口座開設、ポケベル契約、パスポート発行…必要なことが1人でさっさとすませられた。
PCの購入、設定も自分だけでした。
友達と連まなくても平気。ぼっちになったらなったで1人時間を楽しめた。

結果。
できる女風な大人に仕上がった。
かわいげのない女になった。
放っておいても大丈夫な人とされた。
都合よく雑用をやってくれる人として存在価値を上げた。
自分自身、がわばればなんだって1人でできると勘違いした。

結婚してからも同じ。
家事、育児、ワンオペでこなした。
経済的にも私の一馬力だった時期さえある。
夫に関しては後述するが、私が1人忙しくしているのが、もうずっと当たり前の家庭になってしまった。

1人でがんばっても幸せな家庭は作れなかった。
「あなたがかわいげないから、旦那さんとうまくいかない」と母は私に言ってくる。
自立とかわいげの両立は難しい。

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